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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
第三章 聖女の建国記

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44 聖女、教会本部に喧嘩を売ってしまう 1

18歳になった。


近々ルキシア王国の王都ルキレシアに向かうことになる。近況だが、まずお父様が正式に子爵位に陞爵した。お父様の国王陛下への謁見に合わせて私も教会本部を訪ねる形だ。


従者達にも変化があった。ゴードン、エリーナ、アズイーサが神聖魔法を身に付けた。ゴードンはその影響なのか、ジョブが「重戦士」から「聖騎士」になっていた。今までは偽装聖騎士だったのに・・・・

因みに私のジョブは「ビジネス聖女」のままだ。


彼らが神聖魔法をどのようにして身に付けたかは教えてくれなかった。エリーナは「絶対に訓練は見に来ないでください」と言っていたので、壮絶で過酷な訓練をしたのだろう。彼らの名誉のためにも知らない振りをすることにした。


戦力も揃ったし、順調に治療術士も増えた。クレメンス子爵領はもとより、ジョーンズ伯爵領、オルマン帝国のブラックローズ公爵の派閥の全領に派遣することができている。更に聖女認定の治療術士の評判は高まり、他の派閥やオルマン帝国からも治療術を学びに来る者は増えている。

当然、あのイカれた訓練は今も続いているのだが、意外にも評判がいい。オルマン帝国の出身者は武人気質の者が多く、すぐに馴染んでしまうし、他の派閥も「ウチでこんなことをすれば、信者が誰もいなくなる」と言いつつも、短期間で回復魔法を習得するのに一番効率がいいので、何も文句は言わない。


それにウサール枢機卿やアズイーサが「聖母ガイア様が与えた試練を乗り越えた者には祝福が与えられる」とか、変な教えを広めてしまっていたので、脱落するものはほとんどいなかった。


★★★


私は今、デブル枢機卿から教会本部の実態についてレクチャーを受けている。


酷い・・・それに王家まで関与しているのか。


「教皇が今の第三王女を聖女認定しました。これで、聖母教会が王家を認めたことになります。その他にも有力貴族や商会の娘なども同じような扱いにしています」


「つまり、私達が提唱している治療術士の普及政策は、王家をも否定するということですね」


「ざっくり言えば、そうなりますね。家柄や高額な寄付を納めたものではなく、純粋に治療技術のみで評価しているのですから・・・」


「下手をすると異端認定をされますね。何とかならないのですか?治療技術ではなく、聖女の役割を別に設けるとかは?」


「厳しいでしょうね。神の奇跡として回復魔法を使っているという設定ですから・・・」


「なるべくなら避けたいのですが、全面戦争となるとどうでしょうか?」


「そうですね王家直轄の国軍が5万、教皇直轄の神官騎士団が3万、王家よりの貴族の私兵が2万の10万程の相手と対峙しなければならないので、かなり厳しいですね。こちらはウサール枢機卿の神官騎士団と領兵をかき集めても3万に届きません。ジョーンズ伯爵領やオルマン帝国の領主達が協力してくれれば、もっと集まるとは思いますが、不確実ですので。

今の状況ではコウジュン殿をもってしても厳しいのではないのでしょうか?」


難しい問題だ。


「今回は、「こういう活動をしているので、良ければご協力を」みたいな感じで留め、時間を稼ぐというのはどうでしょうか?」


「根本的解決にはなりませんが、いい案だとは思います。時間を掛け、こちらの勢力を拡大していきましょう。ただ、いきなり向こうが仕掛けてくる可能性も捨てきれないので、軍備の増強は急いだほうがいいかもしれませんね」


私とデブル枢機卿が話していたところにコウジュンがやって来た。ある調査を依頼し、その報告がまとまったからだ。

コウジュンを交えて三人で会議を再開した。


★★★


「ウサール枢機卿とアズイーサに教皇直轄の神官騎士団の強化依頼が来ているというのは本当だったのね。それに教皇が抱えているシスターや治療術士達の能力強化も併せて依頼してきてるということかしら?」


「その通りです。しかもこの依頼の嫌らしいところは、私達が断れば、私達が提唱している治療術士の増員案を否定することになりますし、教皇に対して反抗的な印象を与えかねません。そうなると、こちらを「治療術士を使って一儲けしようと企んでいる」と糾弾してくるでしょうね」


難しいところだ。


「教皇派が得をしようと、優秀な治療術士が増えることに変わりありません。私は、なるべく穏便な形で改革ができたらと思っているのです。だから、私は派遣を認めようと思います」


デブル枢機卿が言う。


「そうせざるを得んでしょうな。今回アズイーサ様がウサール枢機卿とともに指導にあたることで、ブラックローズ公爵に対してもアピールになります。上手くいけば廃嫡処分を取り消してくれるかもしれませんしね」


「そうですね。それにウサール枢機卿は教皇や教会本部に認められたと大喜びでしたからね。ウサール枢機卿の気持ちを考えても、今回は受けたほうがいいと思います」



それから一ヶ月が経過した。

驚きの報告が飛び込んできた。


「教皇直轄の神官騎士団の3割が退団!!第三王女をはじめ、聖母教会が認めていた聖女が軒並み引退ですって!?」


なぜそのようなことに?


デブル枢機卿が言葉を詰まらせながら答える。


「そ、その・・・ウサール殿とアズイーサ様が忖度せずに・・・あの地獄の訓練を・・・」


「えっ!!あの新隊訓練をあのままやったってことですか?」


「どうやらそのようでして・・・それで苦情というか、その教会本部から調査員がやってくるそうです。これからコウジュン殿や他の従者達を集めて対策を練ってはいかがでしょうか?」


「分かりました。状況が分かる報告書か何かはありますか?」


「はい、すぐにお持ちします」



★★★


報告書に書かれている内容が事実だとすれば、まさに地獄絵図だ。

ウサール枢機卿が神官騎士団の指導、アズイーサが認定された聖女やシスター達の指導を行っていた。最初の二週間は基礎訓練だった。流石に神官騎士なのでウサール枢機卿の訓練で脱落する者はいなかった。しかし、アズイーサの訓練では50人中30人が脱落してしまった。

報告書を見て唖然とする。


まず、ビキニアーマーに着替えさせてランニングからスタートし、それが終わったら体力づくり、その後、お互いで殴り合わせ、怪我をしたら回復魔法を掛けさせるといったものだ。参加者のほとんどが、回復魔法を碌に使えない状況なので、初日で20人が脱落したそうだ。

幸いというか、不幸というか、第三王女や高位の貴族達は基礎訓練に参加していなかったので、アズイーサの暴挙が明るみに出ることはなかった。


問題はここからだ。

基礎訓練が終わり、恐怖の合同訓練が始まった。

王女だろうが高位の貴族だろうが関係なく、ビキニブリーフとビキニアーマーを着用させて、あの魔物討伐訓練を始めたそうだ。

そして、決定的なことが起こる。訓練を逃げ出そうとした第三王女をアズイーサが殴ってしまった。


「この腰抜けが!!お前が聖女を名乗るな!!」


そこで訓練は中止になった。止めに来た近衛騎士とアズイーサは大喧嘩となった。

何とかウサール枢機卿達がアズイーサを落ち着かせた。普通であれば死罪になってもおかしくないところだが、アズイーサはオルマン帝国四大公爵家のブラックローズ公爵の孫であるため、訓練中の事故ということで有耶無耶に処理されたそうだ。


そして、第三王女と高位貴族の令嬢たちは軒並み引退、神官騎士も3割は退団を申し出たそうだ。更に驚くべきことにアズイーサの訓練に初日から耐えていたシスター達20名はなんと、アズイーサに着いて、クレメンス子爵領にやってくるとのことだった。


彼女達は、やむにやまれぬ事情を抱える者が多かったそうだ。貧乏貴族で何とか資金を貯めてシスターの位を買った者や孤児院出身で自分が辞めれば孤児院が立ち行かなくなる者などがいたらしい。それに厳しい訓練に耐えただけのことはあって、中級回復魔法が使えるようになった者もいて、指導法が正しかったと言う者もいたそうだ。


私は深くため息をついた。


「私はどうすればいいの?」

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