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4 聖女の領地改革 1

誕生日から3日経った。

「この領を豊かな領にしてみせる」と大見得を切ったものの、大したことはしていない。従者や使用人達に回復魔法を掛けたり、「癒し」のスキルでマッサージをしてあげるくらいだった。これでも有難がられるので、悪い気はしない。

しかし、もっと劇的に改革をしなければ。


そう思っていたら、思いついた。私は元銀行員でもあり、数字に強く、帳簿も読めるのだ。早速、お父様に言って、帳簿を見せてもらった。

想像以上に財政状況は悪い。憂鬱な気持ちになる。もし私が銀行の融資担当なら、絶対に追加融資なんかはしないだろう。考えるのはいかにして、回収するかだ。


そんな表情を浮かべているとお父様が言う。


「カレンが帳簿を読めるなんて驚きだよ。これも聖女の力なのかな?でも、少し休憩したらどうだ?いくら聖女様でもすぐに解決できないよ」


父の勧めで、休憩に入った。領主館の庭を歩きながら物思いにふける。どうやったら領地を立て直すことができるだろうか?

そんなときに庭仕事をしていた従者にぶつかってしまった。同い年の男の子のゴードンだ。


「も、申し訳ありません。お嬢様。俺が良く見てなくてお怪我は・・・」


「大丈夫よ。周りを見ていなかったのは私も同じだから気にしないで」


ゴードンという少年は、体が大きく力も強いが恥ずかしがり屋で、口下手だ。以前鑑定してみたところ、ジョブは専門職の「重戦士」で「剛力」のスキルもこの年齢で持っており、将来有望だ。ゴードンの父親ボンベイは兵士長をしていて、ゴードンと同じく「重戦士」のジョブを持つ。ジョブも遺伝するのだろうか?


「お、お嬢様は何かお悩みですか?困ったことがあれば、たとえドラゴン相手でも討ち取ってみせます!!」


ゴードンは優しい。少女の悩みがドラゴン退治なわけないのに・・・少し笑ってしまう。

こんなところは前世で最後に騙した農家の田中さんに少し似ている。彼もこんな少しズレたことをよく言ってたな。


「ゴードン、ドラゴンが出没したわけじゃないのよ。領地の財政状況がね・・・・」


ゴードンに分かるわけがないのに、なぜか愚痴ってしまった。


「お、お嬢様!!せ、僭越ながら進言させていただきます。我々家臣はもとより、領民のほとんどがお嬢様のため、領主様のために命を捧げる覚悟はできております。ただ、何をどうやっていいか分からないだけなのです。

お嬢様が命じるならワイバーンの10体や20体、血祭りにあげてみせます!!私もお嬢様のためならこの身を楯にして・・・・」


「ちょっとゴードン!!落ち着いてよ。命を捧げる必要もないし、ドラゴンもワイバーンも出てこないからね・・・」


「こ、これは失礼いたしました」



この何気ない会話が、領地の運命を大きく変えることになる。

お父様もお母様も従者や領民には、かなり慕われている。これは目に見えないが大きな財産だ。そこにゴードンが言う「何をどうしていいのか分からない」という言葉が合わさった。


そうだ!!「鑑定」スキルを使って、忠誠心のある領民を発掘しよう!!



★★★


それから私は、お父様の許可をもらい、領地の視察をするようになる。とりあえず「聖母様のお導きです」と言っておけば、大抵のことは納得してもらえる。本当に便利だ。

ただ、私が偽の聖女と分かったときはどんな仕打ちを受けるか、考えただけでもゾッとする。


クレメンス領の人口は約5000人で、その半分が領都エルサラに集中している。領都以外は小さな村が点在する程度で、遠方の村だと徒歩で3日以上かかるところもある。なので、とりあえず、領都周辺を視察することにした。

特に貧民街を中心に行った。理由としては、定職に就けずに燻っている人間にこそ、隠れた才能が埋もれていると思ったからだった。


これには思いもよらない別の効果があった。

護衛の従者と、この視察に志願して着いてきたゴードンは涙を浮かべて言う。


「貧民にまで慈悲を掛けるなんて・・・本当に神の御使い様なのですね。このゴードン、命に懸けてお嬢様をお守り致します」


ちょっと、そんな大袈裟なことじゃないって!!

今回も私はこう言った。


「すべては聖母様の思し召してす」



活動内容としては、慰問という形を取っていた。食料を配布し、病人には「癒しのスキル」を使う。根本的な解決にはならないが、一定期間痛みが治まるので、かなり感謝される。また、根気強く何度も回復魔法を使ったおかげで、回復魔法のスキルも「回復魔法極小」から「回復魔法小」に進化していた。

これで、ある程度深い傷でも治せる。


「鑑定」スキルも進化して、体調までは分かるようになった。貧民達を鑑定してみるとほとんどが栄養失調だった。早いうちに何とかしてあげたい。「癒し」スキルみたいな気休めでじゃなくて・・・。


何とか根気強く鑑定を繰り返したところ、1週間後に有望な13歳と12歳の兄妹を孤児院で見付けた。兄コウジュンはヒョロっとした細身の男の子で上級職の「軍師」のジョブを持っていた。「軍師」は知力に優れ、軍略だけでなく内政面でも活躍できるみたいだった。

妹のドロシーは「魔導士」のジョブで、既に「土魔法」の適性を持っていた。「魔導士」は専門職で、総合的に見れば上級職に劣るが、一つのことを極めれば上級職を超える場合もある。「土魔法」のジョブがあるので、土木工事などを任せてもいいかもしれない。


迷わず、「従者に召し抱える」と伝えたが、驚いたことに断ってきた。聞いてみると、この兄妹は両親が亡くなった後に親戚をたらい回しにされた挙句、奴隷商人に売られたそうだ。そして何とかそこから逃げ出して、この孤児院に流れ着いたらしい。だから私の提案もそんな旨い話はないと思っているし、私を人攫いか何かだと誤解しているようだった。


これにはゴードンが憤慨した。


「貴様ら兄妹は舐めているのか!!こんなに美しく、そして気高く、優しくて・・・・えっとそれから・・・まあいい。そんなお嬢様の申し出を断るなんてふざけるのもいい加減にしろ!!」


ゴードンやめてよ!!本当に人攫いみたいじゃないの。


まあ普通にやっても駄目なら、いつものアレをやろう。

「幻惑魔法」で聖母ガイアの幻影を出現させた。兄妹だけでなく、孤児院の関係者や従者やゴードンまで驚愕していた。

私は出現させた聖母ガイアの幻影に跪き、祈りを捧げるような恰好する。


「これは親愛なる聖母ガイア様!!えっ・・・・何々・・・そうですか・・・なるほど・・・」


まだ、幻影を動かしたり、声を出したりできないので、最近はこんな感じで、演技でカバーするようにしている。傍から見れば聖母ガイアから啓示を受けているように見えるだろう。


「あなた達兄妹に聖母ガイア様のお告げを伝えます。

『両親が亡くなり、苦しい中でもよく頑張りましたね。もう心配はいりませんよ。あなた達には無限の才能があるのです。その才能を世のため人のために生かしてください。こちらの聖女に着いて行けば、すべて上手くいきます。あなた達に幸あらんことを』

以上が聖母様からの啓示になります。聖女である私に着いてきてはもらえないでしょうか?」


兄妹は泣き崩れている。


「聖母様・・・ありがとうございます」

「聖女様に着いて行きます」


チョロいもんだ。




兄妹とともに帰宅した私は、お父様にも事情を説明し、了承してもらえた。私は優秀な人材を確保できたことに大喜びして、眠りに就こうとした。


あれ?ちょっと待てよ。神を騙り、幼気な兄妹を騙して従者にする。これって、人攫いよりもひどくないか?


枕元の聖母ガイア像を見ると腰の辺まで黄金色になっていた。

これはこれでOKということなのだろう。

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