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<最終章>結婚詐欺師、異世界で聖女に~私が聖女?女神様!!多分人違いだと思うのですが・・・  作者: 楊楊
第二章 聖女、ビジネスに励む

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28 聖女、カレーを布教する 1

その後の話をする。

捕縛された過激派はポールさんが面倒をみることになったが、ひょろっとしたリーダー格の男は何と、高位の貴族の三男だったらしい。これに目を付けたのはデブル枢機卿だ。この息子を使って一儲けを企んでるそうで、ここからは私達と別行動するみたいだった。

デブル枢機卿とポールさんの会話が聞こえてくる。


「枢機卿、お主もなかなかの悪よのう」

「いえいえ、ポール様には及びませんよ」


まるで時代劇を見ているようだった。流石は「権謀術」と「謀略」のスキル持ちだけはある。


デブル枢機卿の奥さんのスガクールさんは今回の襲撃事件をモデルにした脚本を書くので、しばらくここに滞在するようだ。インスピレーションを刺激されたみたいだった。


ジョーンズ伯爵領を出発する前日、ポールさんから話があった。


「過激派については大体こんな対応をしてますね。100%正しいとは言い切れませんが、早めに不安要素を摘み取り、テティス様の要望に応えるにはこれがベターかなと思いましてね。今後ともご協力をいただければと思います」


この場合どうすればいいのだろうか?

人を騙しているということでは私も変わらない。悩んだ末にこう答えた。


「すべては聖母ガイア様の御心のままに」




まあ、こう言っておけば何とかなると最近思っている。



★★★


「美味しいよ!!カレン」


「本当ね。なんだか懐かしいわ」


私は今、お父様とお母様にアンジェリカさんに習ったカレーを振舞っている。ジョーンズ伯爵領から帰還してすぐ、1週間工房に籠りっきりで遂に完成させたのだ。アンジェリカさんのレシピをそのまま使っても良かったのだが、更に改良を加えた。カレー粉から日本で市販されている固形ルウに進化させたのだ。

早速、ジョーンズ伯爵領から連れて来た元過激派のロクサーヌが役に立った。

ロクサーヌは、「ブレンダー」のジョブ持ちで、「調合」のスキルを持っている。そのスキルを如何なく発揮した。


カレーの固形ルウを作ろうと思ったのには訳がある。炊き出しで使うのにカレー粉だと私が味見をしたり、味を調えたりしなければならない。なので、分量に合わせて放り込めば完成する固形ルウの開発は必要だった。これなら、分量を間違えない限り失敗することはないしね。


お父様とお母様の評判も上々だったので、開発した固形ルウをジョーンズ伯爵領のアンジェリカさんに手紙とともに送ってみた。反応はよく、すぐに返信の手紙と3種類の固形ルウが送られて来た。



カレンちゃんへ


流石聖女様ね。料理が得意な私だと、カレー粉を作った時点でもっと美味しくしようとそっちばかりに意識が向いて、領民が食べやすく、作りやすいというところに考えが回らなかったわ。これはうちの領でも参考にさせてもらうわ。

お礼と言ってはなんだけど、カレンちゃんのレシピに改良を加えてみたの。是非試してみてね。

冬に入る前にはそちらの領に遊びに行こうと思ってるから、楽しみにしててね。


アンジェリカより



手紙は正式な文書ではなく、あくまで友達としてということにしている。


アンジェリカさんから送られて来た三種類の固形ルウを試食する。試食会に参加したのは、ゴードン、エリーナ、コウジュン、ドロシー、ゲディラの従者に加えて、ヤサク司祭、デブル枢機卿夫妻だった。


「俺はこの甘口がいいですね」

「私はこの中辛という奴がいい感じです」

「やっぱりこのピリッとスパイシーな辛口がベストですよ」


好みが分かれているが評判はいい。

アンジェリカさんが送ってき固形ルウは辛口、中辛、甘口の三種類だった。私の「みんなに食べてもらいたい」という願いを組んでくれたみたいで、子供から大人まで楽しめるように工夫されていた。

イサク司祭は言う。


「これは貧民達への炊き出しに最適です。コストも低く、美味しい。野菜や肉も入っていて、健康にも良さそうだ」


流石は良識ある正統派の司祭だ。こういう人が増えれば聖母教会はもっと・・・


「あなた!!これよ、これを使いましょう!!」

「そうだ、これなら大儲けだ!!」


もう金儲けのことを考えているのはデブル枢機卿夫妻だった。私は一応注意しておく。


「これは、裕福でない人でも美味しく、たくさん食べられるように開発したもので、絶対にあくどいことはくれぐれも・・・」


「聖女様!!分かっておりますとも。これは聖母様もお気に入りになる料理ですよね?」


「それは、そうですが・・・」


「聖母様のご加護を受けた料理ということで、調整させてもらいます。なあに、悪いようにはしませんから!!」


悪い予感しかしない。

従者たちはやっぱり一心不乱に食べているので、このやり取りは聞こえてないだろう。



1ヶ月後、地方の村に訪問に行ったときに私の悪い予感が当たったことが分かった。

デブル枢機卿め!!嵌めやがったな!!


慰問はいつも通りのプログラムで進む。掴みはエリーナと龍騎士団による大道芸で場を盛り上げて、私の説法、最後に炊き出しなどを行う。

しかし、今日は大道芸の後に演劇が差し込まれることになった。演目は「身代わり聖女」というものだった。


司会者が言う。


「これは実際に起こった事件を忠実に再現したものです。どうぞお楽しみください」


しばらくして、演劇が始まると絶句してしまう。


何が実際の事件を忠実に再現だ!!そんなことあるか!!


事件自体はジョーンズ伯爵領で実際に起きた、孤児院での過激派の襲撃事件だったが、脚色が酷すぎる。


過激派が襲撃してくるところはそのままだが、魔族の少女の身代わりとして私が人質になる。本当は、人質になる前に制圧したのだが。

そして、エリーナの投げナイフとゴードンの華麗な剣技で過激派を打ち倒す。

私が人質になったり、ゴードンが人目を引く剣技なのは許せる範囲だが、ここからが酷かった。


なぜか、聖母ガイアが降臨し、カレーを振舞うのだ。獣人や魔族の子供達は感激し、更にカレーを食べた過激派のメンバーも改心するという流れだった。


演劇後の炊き出しはもちろんカレーで、その横で固形のルウを販売している。大変好評で、この場で、事実を訂正できる雰囲気ではなかった。

周りを見るとデブル枢機卿とジョーンズ伯爵領には同行しなかったヤサク司祭が話をしている。


ヤサク司祭、ちょっと叱ってやって!!


と思ったが、そうはならなかった。


「デブル枢機卿、本当に感動しました。私もジョーンズ伯爵領に同行すればよかったです」


「だからこそです。この感動を広めるためにこの演劇をプロデュースしたのです」


違うだろ!!一儲けするためだろ!!


「演劇を通じてカレーも広められる。孤児院の子供達にもキチンとカレーが、聖母ガイア様からの贈り物だと伝えていきます」


ああ!!騙されないで!!



それからしばらくして、隣国のオルマン帝国でもこの演劇は好評のようで、隣接するドーン子爵から「是非我が領でも、公演を」との熱い要望があった。


これがきっかけで、私のカレー布教活動は隣国まで及ぶこととなるのであった。

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