19 聖女、問い詰める 2
私はいつものあの神殿に転移していた。
今回馬鹿女神は、前回の失敗を反省したのか、身なりを整えていた。
「聖女よ!!期待以上の働きです。本当に嬉しく思いま・・・・」
私は馬鹿女神の言葉を遮って言った。話を聞かない奴にはこっちも話を聞かない作戦だ。
「聖母ガイア様!!私は聖女ではありません。本当は私と一緒に転生したエリーナこそが、聖女になるべき者だったのです」
「えっ!!そんなわけないじゃない。聖女じゃなければここまで上手くいくわけがないわ!!ということで話を進めます。前世で悪行を働いた女にも慈悲の心で接し・・・」
この馬鹿女神は、話を聞く気がないのか?
これで諦めてはいけない。今回も話を遮る。
「信じる信じないの前に、とりあえず過去の資料でも見て確認してください!!」
「一方的に喋らないで!!聖女だからって調子に乗るんじゃないわよ!!」
一方的に喋るのはお前だろ!!
そう言いながらも馬鹿女神は何やら確認を始めた。しばらくして、驚愕の表情を浮かべてこう言った。
「ま、まさか・・・そんな・・・あなた、騙したのね!!」
何をどうしたらそういう結論にたどり着くんだ!!私を面談したのは、エリナちゃんをエリーナとして転生させた後だろうが!!
私は怒りを押し殺して、冷静に説明した。
「それもそうね。こんなミス、普通はしないのに・・・」
「ということで、私は前世の行いを反省しながら生きていきますので、エリナちゃんを、今はエリーナですが、聖女にしてあげてください」
馬鹿女神は考え込む。
「それはもう無理ね。これから聖女交代なんてことをしたら、大変な事態が起こり、場合によっては戦争とかになって何百万という人が死ぬわよ」
「だったらどうするんですか?私は得したほうだからいいですけど、エリーナはどうなるんですか?可哀そうすぎでしょ?せめて、打ち消し合ってるスキルを何とかしてください」
「努力はしてみるけど、ここまで成長してしまっている以上、慎重にやらないと取り返しのつかないことになってしまうわ。消せたとしても1つか2つね・・・」
馬鹿女神は忙しそうに作業をする。
「消せるスキルは「魔物パージ」だけね。このスキルを消したところで、テイムできる魔物が少し増える程度だけど・・・やってみる?」
少しでもエリーナの症状が改善するならばと思い私は、この提案を了承した。
「ふぅー。これで「魔物パージ」のスキルは消したわ。副作用はないと思うけど、とんでもない悪い結果が起こる可能性もゼロではないから気を付けてね」
というか、そんな大事なことならもっと早く言えよ!!
★★★
「ところで、なんでこんな初歩的な間違いをしたんですか?原因を究明して、キチンと反省してください。だいたいあなたは人の話を聞かないし!!最初の時点で、エリナちゃんからしっかり話を聞いていれば今回の事故も防げたんじゃないんですか?
そもそもあなたは神様としての自覚はあるんですか?人間社会でこんなことをしたら、処刑されても文句言えませんよ。それに娘がグレたのだってあなたが原因では・・・・」
気が付いたら私は馬鹿女神を説教していた。積年の恨みを晴らしている。
馬鹿女神はというと泣き崩れていた。
「ひ、ひどいわ!!私だって頑張ってるのに!!一生懸命やってるのに・・・でも何をやっても上手くいかなくて、夫は帰ってこないし、娘はグレるし・・・・もう聖母なんて辞めてやる!!世界も滅亡させてやるんだから!!」
それは困る。
私は馬鹿女神を慰める。落ち着いたところで、馬鹿女神は話始めた。
「色々な事情があったのは分かりました。今後気を付けてくれればそれで構いませんからね。それに娘さんのことでしたら、多少は力になれると思いますので」
「本当に?じゃあお願いしようかしら・・・娘がグレ始めたのはね・・・・」
馬鹿女神の話によると、私とエリーナが転生した世界は元々は彼女の夫が作った世界らしく、夫が、私達が前世で住んでいた地球の担当に変更になったのをきっかけに、彼女が今私達がいる世界を引き継いだみたいだ。夫は「地球が滅亡の危機だ」とか言ってほとんど家に帰らなくなり、よく分からないまま任された世界を良くしようと頑張っていたが、なかなか上手くいかなかったそうだ。
そして、忙しい両親に構ってもらえなくなった娘がグレたという典型的なパターンだった。
転生も見様見真似でやったので、よく分からず、更に日頃のストレスから信じられないミスをしたのだという。
少し同情した私は馬鹿女神に声を掛ける。
「ガイア様が苦労されていることは、よく分かりました。心中お察しします。私がいる世界は聖女として責任を持って、平和な世界にしていきますから安心してください。娘さんのことですけど・・・・」
私は娘のテティスに転生させられたポールさんの話をした。私がテティスのことを気に掛けるのもポールさんから頼まれたからだとも伝えた。
「やっぱりテティスちゃんは私の娘で、転生だなんて同じことを考えるし、おっちょこちょいなところもそっくり・・・。分かったわ、テティスちゃんとはしっかり話し合ってみるから」
「とりあえず、テティス様の様子を見たいですね。それとガイア様は頭ごなしに娘さんを否定しないであげてください。例え間違っていても何かを一生懸命やっている姿勢だけは褒めてあげてくださいね」
二人でテティス様の自室を訪ねる。外までテティス様の声が聞こえてきた。
「妾は漆黒にして悪辣な闇の帝王テティス!!・・・違うわね、しっくりこないわ。
妾は美しく可憐な妖精テティス!!・・・これは、うーん・・・妾は愛と平和を愛しながら恐怖と絶望を振りまく・・・・・」
多分、ポールさんに合った時のための練習をしている。最後の方はキャラがブレブレだけど・・・・。
「よし!!それじゃあ行ってくるわ。しっかり話を聞くからね」
「ちょっとガイア様!!今部屋に入ったら一生口を聞いてもらえなくなりますよ」
私だってこんなところを親に見られたら、恥ずかしくて死んでしまう。
「分かったわ、後でしっかり話してみるから」
★★★
時間となったので、再び自室に転送された。
あの後に馬鹿女神と、成人の儀での私の計画について話したところ、同意してもらった。何とか上手くいってよかった。
私は思う、成人の儀では、世界はアッと驚くことになるだろう。
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