後日談 あんりと白の男神のナイショ話
蛇足です。
あんりが白の男神と一緒に空の狭間に隠れてどのくらい経っただろうか
昼と言えば昼、夜と言えば夜
そんな時間の流れの無い空間
神の身ならまだしも 人の身 ましてまだ少女の年
白の世界の危機を救ったあんりが 与えられるには 重すぎる罪
男神はなんなら人の身から精霊へと変えようかと悩むほど
「あんり、何を熱心に覗いているのだ」
あんりが白い空間から下界を覗いているのに気づいて男神が話しかけると、
「ああ、男神様。サルアール王国でお茶会が開かれてるのですけど、そこで主催者の子が《リーゼロッテはヘンリーをちゃんと好きなのよ(はーと)》と言ったら一同が『ええええええー』とか『まぁあぁああぁー』と参加者が仰け反った所だったんですよー!」
あんりが楽しそうにフフフと笑って言った。
「そんなことが面白いのか?」
男神にはその面白さがピントこない。
「え?わかりません?男神様ってか、男の人にはわからないかなー」
その、如何にも女心わからないんでしょうね、フフンという顔つきにムゥーッとなる男神。
「なら、少し我にその面白さを教えてたもう。」
男神が、下界のお茶会そのままに、白い空間に再現した。
「さあ、お茶を飲みながら、教えてたもう。」
先に席につくと、あんりを呼ぶ。
時間の止まっている白い空間では衣食住の必要はない。
しかしお茶会と同じお茶と茶菓子を出して、楽しそうに茶を口にした。
「まあ、さすが神様!何もしなくても魔法が使えるのね!」
あんりが目をキラキラさせて席についた。
「魔法という言葉自体、白の子らがつけた言葉じゃ。我が思うことが具現化できる、その力の欠片を子らに与えたのだからな。」
可愛い娘の称賛に気を良くした男神が、エヘンっと胸を張って答える。
「さて、あんり、リーゼロッテがなんだと言うのだ?」
男神があんりへ話を急かす。
「えっと、結論から申し上げますと、リーゼロッテって絶対ツンデレなんですよ!テンプレ通りのツンデレ!」
「・・・?ツンデレ?」
男神が聞きなれない言葉を復唱する。
「そう、ツンデレ。リーゼロッテってヘンリーのこと、大好きなのに全くそんな素振りも見せなくって、全然周りもヘンリーも気づいてないんだもん。王宮にいる時それとなくリーゼロッテの周りに匂わせしといたんですよー!それに気づいた子がいたのね!ウフフ(/▽\)♪」
早口で興奮しているあんりの話を男神は聞き取るので精一杯。
「あんり、我は神の自信を無くしそうだ。どうかわかるように教えてたもう。」
男神がシューンとしながら、あんりに詳しい説明を求めた。
「チッチッチッ、男神様、もうわからないかなー。いいですか、じゃあ説明しますね。リーゼロッテみたいな表情の変わらない冷静そうな女の子がみんな、心の中もそんなだと思います?」
あんりが、かけてもいない眼鏡を直す仕草をしながら、男神に質問した。
「そんな訳なかろう。リーゼロッテは誰よりも嘘に厳しい苛烈な性格だ。勿論、正義感と自身の矜持に従っているが、内心は激しいな。それが?」
あんりは『うんうん、よくできました』と言わんばかりに、頷いてまた、してない眼鏡をスチャと押し上げて、
「リーゼロッテのように、気持ちが顔に出ないタイプを《ツンデレ》というのです。」
真実を告げる審判の女神のように告げた。
「ツンデレのツンが、表情に出ないことと言うのだな。デレはどこに行った?」
なんか納得できないなーという表情であんりに男神が尋ねた。
「リーゼロッテはヘンリーの前ではデレじゃないですか!何だかんだ言っても絶対にヘンリーの言うことを聞いちゃうじゃん。」
「ええー?そうか?良くヘンリーは怒られてるだろ、リーゼロッテに。」
「ええ、それはアレが悪いから仕方ありません。でも、そう言うのではなくて、最後はヘンリーを許すでしょ?大好きだからね。」
「ヘンリーがリーゼロッテを好きなのだとばかり思っていたが、リーゼロッテだったとは。」
男神がうーんと唸って首を傾げた。
「もちろん、ヘンリーもリーゼロッテが大好きだよ。それが、全く嘘偽りがないってわかっているから、リーゼロッテはヘンリーのことを安心して好きで居られるんだよ。あの、余分なことを言う、考え無しで、頭と口が直結しているようなヘンリーが、リーゼロッテには二言が無い信じるに足る人だと思えるんだから、神様、良縁を与えたねって思うわ。その大好きってキモチを周りがわかった時点で、それがデレよ。」
あんりがお茶を一口飲むと、良い笑顔で男神に答えた。
「なるほどな。良縁とは実は神が結ぶのでは無いのだが。そう誉めてもらえるのなら、何よりだ。」
男神が満更では無い顔で言った。
「え?良縁って神様が結んでくれるんじゃないの?縁結びの神社とかあるじゃん、いっぱい!」
あんりが男神の呟きに食いつく。
「良縁は、奇跡と同じようなものだ。望み通りになる訳ではないが、望まなければ得られぬものなのだ。」
「なんか、難しいわ。でもこの世は神様が創られたのでしょ?」
今度はあんりが尋ねる。
「そうだが、我らはこの世を創り時間と言う軸を回したのだ。その先のことは我らが意図したことではない。所謂、運命の輪を創って回しただけ、ということだな。その後どうなるかは神のみ知るではなく、神も知らぬのだよ。時の流れの中、どうなるかは偶然によるのでな。」
男神が優しくあんりに諭す。
「そうなんだ、じゃあ困った時神様助けてって言ってもどうにもならないんだね。」
あんりがショボンと肩を落とした。
「そうだ。我が出来ることは少ないのだ。ここで、子供たちが健やかにと祈るくらいだな。」
「でも、だったら、リーゼロッテとヘンリーって良い組み合わせだったのね。私はヘンリーみたいなのは嫌だけど。」
あんりが微妙にヘンリーを下げた言葉で納得する。
「なぜそんなにあんりはヘンリーが嫌いなのだ?」
男神の問いに
「だって、ヘンリーにはリーゼロッテしか見えてないでしょ?そういう執着溺愛ってジャンル、私は苦手!好きな人もいるから、それは好みの問題じゃない?」
「ジャンル・・・」
「そうよ、溺愛激重系が好きな人もいれば、さっぱりが好きな人もいるでしょ?それってジャンルよ。ジャンルが違う者同士は難しいよね、やってくの。」
「なるほど、あんり、とても分かりやすいぞ。」
「そう言えば、男神様もヘンリー系だよね。女神様もツンデレだものね。だからそのうち許してもらえるから、頑張ってね。」
あんりに慰めてもらった男神が聞いた。
「女神がツンデレ。我がヘンリー系とな。ヘンリー系とは何というジャンルじゃ?」
「執着激重系だね!(/▽\)♪」
「我は執着激重系か。我は執着しておるかえ?」
「してるでしょ!女神様だけ好きでしょ?他に目とかいかないでしょ?言うこと聞くし。良いと思うよ、お似合いだよ。」
よしよしとあんりに慰められて、なんか良い感じでお茶会は終わった。
「と言うことが、かつてあってな。我とそなたはお似合いだそうだ。」
ニッコリと微笑んで、男神が女神に告げる。
「・・・・次にあんりが転生する時は恋愛の神にでもさせるかえ?」
呆れた顔で女神が答えた。
「それも良いけど、あんりなら小説家とかになって、恋愛の神様って青の世界でも呼ばれるかもしれんな」
「リーゼロッテはいつも怒ってる」の、最終回の後のお話でした。
本編では王妃あんりが空の狭間に隠れた後です。




