良子の結婚
まだ食事のシーンはでません
白いを通り越して青白い肌に大きな目、整った顔立ち
長い黒髪、その髪を無造作に一纏めにして
控えめで大人しく無口
小さい背、細い体
勉強はできる方、いつも十番以内に入っている、いつも勉強しているし
仲の良い友達はいない
小林さんは男子には陰で人気があった。
そんな彼女があの日以降、家で母親に虐待されていることがわかり、転校していった。
自分の不用意な発言が彼女を傷つけ、それによって彼女は目の前から消えてしまった。
初恋に気づいたのは胸の痛みを覚えた時と同じ時だった。
その彼女と偶然の再開、かなり強引に過去の懺悔をしたのは、彼女があの日に囚われているのがわかったから。本当はあの日の言葉は、君を傷つけるつもりじゃなくて助けたかったんだ、って伝えられたらそれでいいと思っていた。
でも、彼女が俺の自己満足に付き合ってくれて、俺の懺悔に一生懸命微笑もうとしてくれてたのをみたら、あの幼い淡い思いと苦い思いがぶり返してきて、《俺の初恋》なんて告げてしまった。
連絡先を交換して、日々彼女のことを思う。
彼女は何しているかな 彼女と会いたいな
付き合っている人はいるのかな
好きな人はいるのかな
俺のことどう思ってるのかな
淡い思い出の恋心がまたボーボーと燃え上がってしまったのもしょうがないと思う。
彼女に告白をして、付き合うことになって。
すぐに俺は結婚しようと思った。
だから、始めてうちに彼女が泊まりに来た日
「結婚してください。」
って、プロポーズした。
付き合ってまだ一ヶ月かそこらだったと思う。
だけど、俺は彼女の全ての不幸から守るヒーローになるんだから、俺に守らせてくれって思ったら結婚したいって気持ちになったんだから、それもしょうがない。
再発した恋心がボーボーと暴走している
すっかり有頂天だったのだろう。
「結婚はまだ考えられないな。私、結婚とか子育てとか考えると・・・」
「怖い?」
「・・・それに早くない?」
「俺には熟成された良子への十二年間の思いがあるから。」
呆れた顔をされたけど、それもしょうがない。
「嘘ってさ、嘘をつく人は得だから嘘つくんだ。反対に嘘をつかれた人は一生懸命嘘だということを立証しても良くて現状復帰、ちょっとでも嘘が払拭されてなければ何回もその誰かの得のための嘘に翻弄されるだろ?
だから、嘘をつくのって罪深いことだと思うんだよ。」
「うん」
「だから、俺は誰にも嘘をつかないって決めている。まして良子に嘘をつくことは絶対無いって誓うよ。全身全霊をかけて、良子を全ての不幸から俺が守るから。守らせて。俺を信じて。」
「・・・正直にいうとね、私まだ夜寝てられないの。母に無理やり起こされ暴言吐かれたことを夢でみて飛び起きることもしばしばで。職場とか社会との距離感っていうのはわかったんだけれどね」
「うん、良子が気を使ってくれて居心地良く気遣ってくれているの、わかってる。」
「ううん、そうだけど、そうじゃないの。」
「どうしたの?」
「周りに、渡辺君に、気に入ってもらえるにはって打算があるんだよ。渡辺君が思っている私より私は打算的だし、よっぽど世間ズレしてると思うよ。それがみえたら、ガッカリすると思う。ぜんぜん私は良い子じゃないのよ」
彼女の目の奥に暗いドロリとした色がみえた気がした。
「良い子じゃなくたっていいじゃん。打算的な人ってダメなの?そういうなら俺だって打算的だろ?無理矢理謝罪して、受け入れてもらった所に漬け込んで告白した。誰にも渡したくないから俺の腕の中に囲おうとして、こんなに一生懸命弁明してる。」
「え?」
「俺は嘘は絶対つかない。でも綺麗事をいう。不幸から良子を守りたいって言うのも本心だし、他の誰かに取られたくないって執着心を持って結婚したいって言っているズルい気持ちもある。人ってそんなもんだろう?」
「え?」
グイっと手を引き小さい細い体を抱き締める。
「夜、怖い夢をみるなら俺が横で抱き締めてトントンしてやる。寝れないなら眠くなるまで、話をしよう。困ったことがあったら、一緒に考えて乗り越えよう。俺と同じ時間を過ごしてくれ。」
「・・・それもズルい打算?」
「そうだよ。俺はズルい男で良い子じゃないだろ?でも良子を愛してる。熟成された十二年の愛がある。」
「もう、バカ。」
「男なんてバカなもんだよ、好きな女抱き締めたらよりバカになる。一緒にいよう、結婚しよう良子」
「早いよ。もう。」
結局、俺の押しに良子が折れて、半年後には入籍した。
結婚式は良子の親族がいないので、やらないことにして二人で海辺の町でのんびり過ごした。
当初の懸念どおり、良子は長い間のクセで睡眠時間が本当に少ない。
基本夜中に寝ても、明け方には起きてしまう。
青白い肌色は、慢性的な寝不足から来ているんだと知った。
一緒に起きる俺を気にして、寝室を分けたがったけどそれじゃ約束が守れないだろう?っていって大きなベッドに一緒に寝た。
寝てて起きてしまった時、抱き締めて背中をトントンして二度寝できたらラッキーで、もう寝れないようなら早く起きてベランダで明けていく空を見ながらコーヒーを飲んだ。
二人で見る朝焼けはとても綺麗で、この景色を一緒に見れたことを幸せだなんて思った。
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そんな日々がずっと続くと思っていた
結婚して三年目のあの日まで
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