小話 昔話と民宿物見遊山 予約方法
小話です。食事のシーンはありません。
この世界での予約はどうやってとるのか?
それは小さな木製の小鳥がお手紙を咥えて来るのだ。
この王国では《読み書き計算》は教会が平民に無料で行っている。
だから識字率をほぼ100%である。
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むかしむかし
王国に渡り人が落ちてきて、その渡り人は王様にいいました
小鳥の囀りのように、王国の人のお話を覗き見できるものがあるといいわ
王様は魔法使いに言いました
小鳥の囀りのように国民の声が聞こえるようなものを作れ、と
渡り人は言いました
内緒話や聞かれたくない話は直接お互いにやり取りできた方がいいわ
王様は言いました
仲間同士が直接やり取りできるようなものを作れ、と
魔法使いは 高い高い塔を建て その上から国民一人一人に魔法の糸を括り付けました
そしてその糸に木で作った魔法の小鳥を乗せて 王国中の人のつぶやきを小鳥が拾って塔に集めました
小鳥同士を持つ者はお互いにお手紙をやり取りできるようにしました
それが今から百五十年も前のこと
今でもその小鳥は国民のつぶやきを魔法の塔に届け
小鳥同士が手紙をやり取りする 郵便として国民は使っています
めでたしめでたし
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「あ、ピヨちゃんだわ」
プペッ(咥えていた丸めた手紙を吐き捨てる)
ー これって、あれだな、バツに名称変更する前の140文字までのアレ、初期のヤツだ ー
百五十年前に落ちてきた渡り人も良子の時代に近い人だったのだろう。
良子は友達が居なかったからSNSはもちろんしていなかったが、存在は知っていた。
その発想が、科学ではなく魔力を使ってであるが、この王国の基幹通信網として使われてるのだからなんとも。その魔法網も時代の流れで大陸中に広がり、今は各国を跨いで利用できる。
国民は各国の戸籍に登録されると赤ん坊の時に付与され、死ぬと返還する。
冒険者はギルド登録すると小鳥を与えられる。
良子や冒険者を辞めた者も戸籍を作った時点でその国の小鳥を付与されるのだ。
《来週の火曜日に一泊で四名二部屋 宿泊希望 メグ》
《了解です。ありがとうございます。》
カレンダーになっている予約表に書き込む。
こうして良子は予約を取ることに利用し、各国はそれぞれの国民の動向を気にしたり、国からの大切なお知らせに使ったりしている。
メグの冒険者パーティがやって来るのはまた別のお話。