第七話「三人目のフォトアラーに出逢っちゃったんだからね!」
お久しぶりです。
アリス新作できました!
ちなみにエンディングはもう頭にあります。
二階、三階、と私達は美術品を見て回った。
時にレッドが興奮気味に私に話しかけてきたり、時にチャシャがニヤニヤしながら作品を見たりしていた(気持ち悪っ)。
そして遂に全部見終わったので、チャシャとレッドが「終わっちゃったね」と呟いた。
時間的にはあと10分といったところ。
16:00分にまた全体集合だからね……
私はさっきのあの黒髪の女の子との約束を思い出していた。
(行くしかないよね!)
「あの……二人ともごめん!私、ちょっと二階に落とし物あるから二人は待ってて!あ、時間来ちゃったら先に集合場所に行ってていいから!」
「あ、そうなんだ分かったよアリスちゃん!」
レッドが悠々と答え、チャシャは意味深な表情を浮かべていた。
四階への階段を駆け上がり、404号室を見つける。
入り口を通り抜けると白い空間にその子は後ろ手で待っていた。
「来たのね」
クルリとこちらを振り向いたのは勿論その例の子だ。
「な、何の用なの?」
私は訝しむようにそう聞いた。
髪をかき分けるような仕草の後、艶やかな表情でその子は言った。
「ま、事情聴取と言ったところかしら?突然だけど私の名前はカナコ。カナコ・アフターライブよ。貴方は?」
「私はアリス・スカーレッドよ。それより事情聴取……?ど、どういう意味よ!」
私は困惑の表情をした。
カナコは説明するわと言って話し始めた。
「あのラスト先生と貴方の絡みを私は偶然見ていたのよ。そこで違和感を感じたわ……」
「い、違和感ってどういう事よ」
「1-Bクラスの。ドンだっけ?アイツがラスト先生に思いっきり吹き飛ばされていたんだけど……どう考えても普通に飛ばされたように見えなかった」
「!?」
私はそのカナコの発言に動揺する。
当たり前だ。
あれは……私の光子の力だもの。
「ここからが重要。その時、アリス。貴方は倒れていたけれど……ドンが吹き飛ばされた後に加勢しにもう一人の男の子が来たその辺りで、貴方は起き上がり予定調和の如く逃げ出したわよね?」
「……」
「隠しても無駄よ。アリスも光子なんでしょ?」
「え?アリスも?ってことはカナコも……」
カナコは少し頷いた後に答えた。黒髪の艶やかなボブヘアーが絹の如く揺れた。
「やっぱりね……えぇ。そうよ。貴方の予想通り、私も光子よ」
「!?」
私の身体に驚きと緊張が走る。
「どんなスキルだったの?詳しく教えなさい!」
「え、ええ……」
私は動揺してしまう。
「あ、それと『カタストロフィ』に所属してもらうわよ!」
「『カタストロフィ』?何よそれ」
「簡単に言えば光子の集まりよ」
「へ、へぇ〜。入ってもいいけど……随分と厨二チックな名前ね」
私はちょっと皮肉っぽくそう言う。
カナコは「そうかしら?」と言った後。
「それよりどんなスキルだったの?気になるでしょ!」
と私に食い入るように聞いてきた。
「え〜とそれは……」
と説明しかけた時、私はふと腕時計をチラ見した。
時刻は15:58分!?
全体集合の時間は16時だしもうヤバい。
「あ、ごめんカナコ!もう時間が迫ってきてるわ!」
そう言って駆け足で私は404号室から飛び出した。
「ちょ、ちょっと!」
というカナコの必死な声はガン無視しながら。
カナコは私と違う学校っぽいし全体集合とか関係ないから何処か余裕そうでちょっとムカつく。
何とか間に合って私は1-Aクラスの集まりに溶け込んだ。
「アリスちゃん!おかえり!」
レッドは笑顔でそう私に言う。
チャシャが「何とか間に合ったな」と茶化してくる。
「ご、ごめんー」
その後、私達はまたメトロポリタソミュージアム(ここ)に来た時みたいにバスに乗る事になった。
1-Aと1-B合同の帰りのバスだ。
合同となると面倒臭い問題が出てくるのよ……
やたらうるさい車内の奥には大きな空間がありそこにテーブルと座席がL字のように並び、そしてその座席に座る三人組がいた。
そう。
「おい、ドン!同じとか最高じゃねぇか」
ドンの友達ヴァンが騒ぐ。その次にノリに乗るように口を開くのはコーン……
(……え?コーン!?)
「そうだなヴァン。あ、そういえばポテチあるけど食べる?」
コーンはそうニヤニヤしていた。
(あれ?確かコーンはワンダーランドに居るはずじゃなかったっけ?)
私は混乱する頭を抱える。
その私に何か思ったのかドン達三人組は笑いながら私に向かって言い放つ。
「おいそこのパチモン!何か芸でもしやがれ!」
ワハハと笑いながらドンが私に芸を要求してきた。
釣られてヴァンとコーンも「アリスちゃんのちょっと良いところ見てみたい!」とかほざく始末。
「だ、だから私はパチモンアリスなんかじゃないわよ!」
「別にアリスとは言ってねぇぞ?アレ?そういう自覚あるのかなぁ?」
皮肉っぽく笑うドン達に私は透視予測でぶっ倒してやろうかと思ってしまうくらいイラついた。
その時後ろから聞き馴染みのある女の子の可愛い声が轟いた。
「あれぇ?またやられたいの?ドン君♡」
レッドは艶やかでブラックな笑みを浮かべていた。
「ゲッ!レッドじゃねぇか。そ、そうだった!合同だしお前も居ること忘れてた……!」
ガタガタと震え出し、ドンはそこから学校までの帰り道の間大人しくなった。
(レッドのお陰で助かったわ……)
ヴァンとコーンもドンの「レッドには逆らうな」って警告に従ってるみたいで静かだった。
それにしてもコーン……なぜあんたがここに?
私は違和感を拭えずそのままウェストドリーム高校行きのバスの中で窓の外を眺めていた。
次の日が来た。
今日は校外学習でも修学旅行でもない。
ただのいつもの日常だ。
いや違うわね……
いつもと違う部分があるわ。
「やぁアリス」
ウェストドリーム高等学校の中庭で私たちは出会した。
中庭は、噴水が目立つ綺麗な場所。
コーンは噴水の前でニヤニヤとしていた。
私は少し睨みつけるような視線を送っている。
「そんなに睨まないでよ怖いなぁ。やっぱり不思議に思ったんだろ?」
「えぇ。何であんたがここにいるのよ。ワンダーランドの王様でしょ?」
コーンは図星をついてきて私は動揺しながらそう言った。
コーンはそのまま悠長に語る。
「昨日君が見た僕は、ワンダーランドのことを全く知らないパラレルワールドの僕みたいな物だと思ってくれて良いよ」
「なにそれ……意味分かんない。もっと詳しく説明しなさいよ!」
「僕にも言いたくないことはあるんだ。君が友達に自身が光子であることを告げないようにね……」
どうやらコーンは私の行動を観察しているらしい。
確かに私はレッドに光子であることを悟られないようにしていた。
私はコーンに気持ち悪がりながら言い放つ。
「あっそ!人間観察なんて楽しいのかしらっ」
コーンは私の予想とは違い『不快になるような素振り』は見せずちょっとシリアスな面持ちで口を開いた。
「それより……アリス。そろそろマフィアが動き出すんだが準備しとけよ?」
「ま、マフィア?」
そう言えばラビーの奴もマフィアとかほざいてたけど……
まさかそんなこと。あ、あるわけないわよね……!
「信じてなさそうだな……実はあのラスト先生もマフィアの仲間なんだ」
「う、嘘!いやでもちょっと信じられるかも……」
私はラスト先生の普段の素行の悪さは知っていた。
マフィアが動き始めている事を少し信じ始めている自分がいる事に私は気づく。
そして気になったことをコーンに聞いてみる。
「どうしてそんなこと分かるのよ!あんた、予言者か何かなの?」