「悪役令嬢を救う会」による緊急記者会見
「皆さんは国家が決めた政治の指針さえも下半身と直結した脳によって安易に反故にするような王子や、袖にされたら必ず現れるどこの馬の骨ともわからない隣国の皇太子によって矢継ぎ早に求婚される悪役令嬢のことを考えたことがあるでしょうか。
彼女たちがどれだけ不本意な結婚を強いられているか。挙げ句に女性としての立場や役割を強要されるこの野蛮なる現状に苦しめられているか。
ひっきりなしにやってくる、名乗りを上げる地位ある王子たち。婚姻はこりごりだと思っているのにそうさせてくれない彼女達の不幸。破滅したくても破滅させられない悪役令嬢。
どうか皆さんの力で彼女を救ってあげてください。これ以上彼女たちを苦しめないでください。そっとしてあげるべきなのです。
天下にも身勝手な男たちに瑕疵をつけられ、独善的な慈悲によって救済されてしまう不運は、当事者でなければ到底理解できないでしょう。
どうか、彼女達のためにお願いします。これ以上彼女達のために良縁を持ち込まないであげてください。
彼女達の真の自立と成功のために重ね重ね申し上げます。
同時にまた、悪役令嬢としての役割を全うする彼女達の誇りを、上から目線の無粋な、見た目だけの救済によって傷つけることのないよう、思いやりをもってこそ真の多様性社会が実現されるであろうことを、肝に銘じていただきたいのです。
また近頃はざまぁという因果応報を実現させているような風潮がございますが、そのようなネガティブな感情によってスカッとする現況にももの申したく考えております。
私どもの統計を取るに、そもそもざまぁが成立するのはたった70パーセントの悪役令嬢のみであり、実数はもっと少ないと思われます。
ざまぁではなく、愛。ラブによってこそ世界が救われるのだと、平和によってこそ人々は結ばれるのだと、私たちは信じております。どうか持続可能な悪役令嬢たちの悲劇を実現すべく、再生可能な没落を再演するために、皆様の支援をよろしくお願いいたします」