プロローグ
ノリで書いた
「はぁ、学校だぁ~」
月曜日。それは全人類が最も憂鬱になる日。
子供は学校、大人は仕事が始まりである。
8時間近く拘束され半強制的に勉強をさせられる。
みんな、それが嫌で仕方がない。
どうせなら、異世界に行ってスローなライフを過ごしたい。
生活を会社と学校に支配されているからスローライフものが流行るのかな。
そんなことを考えていると何かが自分に向かって凄まじい速さで突進してきている気配を感じる。
ここは横断歩道。
つまり、トラックが突っ込んできているということ。
うん、もう間に合わないね。
逃げ場はどこにもない。
僕は迫りくる衝撃に備え目を瞑った。
―――ドゴォンッ!!!!
衝突音と共に体に強烈な痛みを感じるはずだった。
ーーーーーー
…………あれ?痛くない? 確かにぶつかったはずなのに…………なんともないし。
「お気づきのようですね」
声がした。
若い女性の声。
透き通るような綺麗な声だった。
目を開けるとそこには美しい女性が立っていた。
背中まで伸びた銀色に輝く髪に金色の瞳。整った顔立ちをしており、肌も白くてキメ細かい。身長は高くモデルのような体型をしている。
周囲に目をやると西洋の城の中にいるような感じの部屋にいた。
壁には高そうな絵がかけられており天井からはシャンデリアがある。床には赤い絨毯が敷かれていた。
もしかして、ここって異世界?
そんな疑問はこの言葉で解決する。
「やっと成功しましたわ。
わたくしの勇者召喚!」
彼女は嬉しさのあまり飛び跳ねながら言った。
異世界ね~。えっ?マジ。
僕が今立っている場所は間違いなく地球ではないようだ。
だって明らかにおかしいもん!こんな場所知らないよ!?
だったら、この娘王女だったりする?
「勇者様!
どうか魔王を倒してくださいまし!!」
はいきたー!テンプレきたこれ! でもさ、いきなり言われても困るんだけど。
それに何より一番気になることがあるんだよね。
「あのぉ~、あなた誰ですか?
それにここは?」
そう尋ねると彼女は
「そうでしたわ。まだ名乗っておりませんでしたね。申し訳ございません。私の名前はアイシア・アルテミアですわ。気軽に『姫』とお呼びになって下さいませ」
丁寧に自己紹介してくれた。
アイシアさんは姫ということから王族か貴族の娘だと思う。
すごいな~。(語彙力ない)
「ここはどこですか?」
一応聞いてみよう。
「ここはアルテミア王国にある王城の私の部屋ですわ。そして、私が貴方をここに呼んだのですわ」
やっぱりね。予想通りだよ。
「なぜ、僕を呼んだんですか?」
これは聞いとかないとね。僕に拒否権はないとおもうけど。
「それはもう言いましたわ。
魔王を倒して欲しいからですわ」
あぁ、そうだよね。わかっていたよ。
「ちなみに断った場合はどうなりますかね?」
「もちろん処刑しますわ♪」
満面の笑みで言われた。
ほほを上げ、目を糸のように細める。
口元を手で隠しクスリと笑う姿はとても可愛らしいのだが、言っていることは恐ろしかった。
ですよねぇ~。知っていましたよ。
ここで断れば殺されるだろうし、そもそも地球に戻れるかもわからない。
だったら選択肢なんて一つしかないじゃないか。
僕は覚悟を決め彼女の方へ向き直り言う。
「わかりました。その話受けましょう」
「本当ですか!ありがとうございます!」
彼女はとても喜んでいる様子だ。
まぁ、当然といえば当然なのだが……。
これからどんな生活が始まるのか想像できないけれど、なんとかなると信じたいところである。
こうして僕の新しい人生が始まったのであった。
――――――
と、いうことでダンジョンに送られてきたわけなのだが……
「おらぁ!」
声を荒げ叫びながら勢いのある薙ぎを放った男はアラン。
アルテミア王国の五本指に入るほどの戦士だ。
金属の鎧を身にまとい大剣を構えている。
「魔導書、グリムの日記一章5節、炎の精霊が与えたのは火の玉だった」
詠唱を終えた少女が魔法を放つ。
手から放たれた火の玉が魔物へと直撃する。
当たった瞬間に爆発を起こし、魔物の体はバラバラに吹き飛んだ。
少女の名はルア。年齢は15歳で、腰まで伸ばした白銀の髪に蒼い瞳が特徴の少女。
背は低く135cm辺りで服装は、白いローブを着ている
彼女はいわゆる天才らしく、知識も技術も世界で上位に入るとのこと。
「天よ、裁きの雷を落とし、我が敵を打ち滅ぼしてください」
女性が呪文を唱え終えると、空から大量の雷撃が落ちてきた。
地面に当たった衝撃により、周囲にいた魔物が一斉に消し炭となった。
彼女はシスター・ソフィア。白い修道服に身を包む女性で、雰囲気は優しい。
年齢は不明だが20代前半くらいに見え金髪のロングヘアーにブラウン色の目をしている。
白い修道服は神に選ばれた修道士や修道女しか着用を許されていないと言われている。
「これで終わりですね」
「うん、お疲れ様」
3人は互いに労う。
ええっと、これって僕いるのかな?
はっきり言って、三人だけで魔王を倒せそうな気がする。
(思い切って聞いてみるか?)
その疑問が頭の中に浮かんだ。
「あのぉ~、ちょっといいですか?」
「ん?なんだ?」
アランさんが返事をする。
「いえ、少し気になったことがあったもので……」
「だから、なんだよ?」
「僕って必要ありますかね?」
すると3人は息を合わせてこう答えた。
「いらん」
「いらない」
「いりませんね」
即答された。
「そ、そうですよね~」
はぁ、やっぱり僕には魔王討伐なんて無理なのか……。
「でも、お前、異世界から来たんだろ?
だったら、何かしらの『異能』を持っているだろ」
『異能』……?
「異能ってなんですか」
僕はその単語を聞いてことがない。
そもそも、この世界が何なのかについても聞いていない。
まったく知識がないのだ。
姫に召喚され、拒否権を奪われ、何も知らぬままこの人たちとパーティを組まれ、ダンジョンに放り出された。
そんな感じだったし。
「異能というのは、異世界から来た人間が持つ特別な能力の事です。
世界の法則に反した能力や、この世界に存在しないはずの力などですね」
要するにチートみたいなもんか。
「そんなのも、知らないでお前よく俺らとパーティを組もうとしたな。
普通、召喚されてすぐに聞くぞ」
呆れ顔で言うアランさん。
「すみません、召喚されてからすぐここに連れてこられたんで……」
「はぁ!?。姫の奴何も言わなかったのか?」
「はい」
「マジかよ………」
アランは頭を抱えながら言った。
「仕方ない。姫は頭悪い」
ルアが話に割って入ってきた。
「姫は馬鹿」
「おい、ルア!言葉が過ぎるだろ」
「本当のこと」
「確かにそうだけどな」
アランさんとルアさんが言い争っている。
「あのぉ~、姫とはどういう関係ですか?」
気になったことを尋ねた。
「俺はアイシア姫とはあまり関係がないな。
前に何度か会ったが、ほとんど会話をしたことはない」
「わたしも同じ」
2人ともあまり接点はないようだ。
「私はアイシアと幼馴染でした。
アイシアは後先考えないけど行動力はある子なので、昔から振り回されることが多かったですね」
ソフィアさんはとても苦労していたらしい。
「あいつは、いつも俺たちを振り回すからな。
今回の勇者の件だってそうだろ」
「姫はめいわく。魔王を倒すのはやりたくない」
「言っていることは共感できますけど、魔王は人類にとって脅威です。
放置しておくわけにもいきませんよ」
「それはわかるが、わざわざ異世界から呼ぶ必要はないだろ」
「それは私も同感です」
まるで愚痴を聞かされているようだ。
いや、愚痴だね。
その後も三人の話は続いた。
話の内容は主に姫についてだ。
ふーんと思いながら聞いていると突然
「そう言えば、ユウはこれからどうするのでしょうか」
と自分に話が降ってきた。
「ええと……」
あわふたしていると、
「ああ、すまない。突然、振って悪かったな。それで、これからどうするんだ?
魔王を倒す旅ついてこれそうか?」
アランに聞かれた。
この旅に付いて行くのは無理そうだ。
まだ、能力も分かっていない。せめて能力が分かれば判断材料になりそうなのだが。
「無理そうですね」
「そうか。
本当は言いたくなかったが……」
アランは一拍おいてから言う。
「ユウ、お前を追放する。
異論はあるか」
「なくはないですが、その方がいいかもしれませんね」
「はっ?」
立て続けにルアも言ってくる。
「さんせー。都合的にはいい」
ええと、追放ね。
いつものパターンね。
話を出したのは僕だから反論できないけど早くね。
「安心しろ。
処刑はされないようにしておく。
念のために言っておくがこれはお前のためだ。
仮にお前が付いてきたとする。
能力が分かっていない状態だと技術も知識もない状態なら死ぬだろう。
更に俺らの足を引っ張るかもしれない。
だから、お前をここで切り離す必要がある。
納得のいかないところがあるかもしれないが分かってくれ。
すまない」
確かに言っていることは分かる。それに、僕がいても邪魔になるだけだ。
だが、納得はできない。
能力は知りたかったがそれは後程、わかるだろう。
「分かりました。
大人しく追放されましょう」
「本当にすまないがよろしく頼む。
これは一か月暮らせるほどの金とこの世界について記した本だ。
あと、もし今後会うことがあったらその時は助けてやるよ」
言い終わるとアランさんは僕にお金の入った袋と本を渡してきた。
「ありがとうございます」
「じゃあ、元気でな」
「ばいばい」
「さようなら」
3人は僕に背を向けて歩き始めた。
こうして僕はパーティから追放された。