予定されていた突然の知らせ
大変お待たせしました。新章開始です。
長期休暇が明けて、学園生活が戻ってきた。
さすがに二年生後半になると、それぞれ進路に合わせたカリキュラムになって、クラスのみんなと授業で一緒になることが少なくなった。
僕の進路は、領地経営一択。選択の余地はない。
だってさ、オスカー義父さんは救国の英雄で新設された海軍の総司令官。僕が軍に入ったら、絶対に忖度やら派閥争いやら、面倒なことになるのが目に見えている。
どれだけ頑張っても親の七光りのお陰だろうとスルーされ、出来が悪ければ親の面汚しとけなされる。そんな将来、御免だ。やってられない。
文官を目指しても同じこと。
第三宰相のエザール・デイネルス侯爵は実の叔父さんだし、デイネルス女侯爵してるリアーチェ叔母様は国王陛下さえタジタジになる女傑様だ。
条件は武官になるより厳しいかも。平穏無事なモブ生活はまず無理だろう。
だったら、領地に引っ込んで地道に生活するのがマシ。引っ込む領地がランデア子爵領になるかランドール伯爵領になるかは未定だけど、どちらにしろ領地経営を学んでおいて損はない。
僕は絶対、子爵家に行くつもりだけどね。
「だからさ、別に僕に付き合わなくても良いんだよ、ライナー。自分の好きな授業取ってくれれば」
「うーん、そうなんだけど、別になりたいモノって無いし。将来は村に帰るつもりだし。奨学金出るから行って来いって言われたから来ただけだし。卒業できれば良いんだから、マークと一緒で良いんでねぇ」
ライナーがそれで良いんなら僕も助かるけどさ。自主性って言葉、知ってるかい。
昼休憩の後、クラスミーティングの教室で久しぶりに全員が顔をあわせた。話題はもちろん、修学旅行。
失敗談で笑ったり、冒険談を自慢しあったりしたんだ。そりゃあ楽しかった。
中にはこれから修学旅行に行くという奴もいて、計画変更の参考にしてた。
「おー、全員そろってるかー」
担任のジャック先生が入って来て、おしゃべりは一旦終了。さすがAクラスというか、みんな真面目だ。
「修学旅行のレポート提出は今月いっぱいだからな。遅れるなよ。それと、カリキュラムの変更がある。単位取得に影響出るから、しっかり確認しておくように」
あー、またか。
今年から年齢制限がなくなったおかげで、成人済みの平民が大勢入学している。
貴族の常識と平民の常識にはどうしてもズレがあるから、そのすり合わせのための授業が組み込まれて、その分授業の総数が増えた。
先生方も試行錯誤でカリキュラムを改良している最中だ。当然、使用教室や先生方のスケジュールに変更が出てくる。
学生寮の掲示板をちゃんとチェックしておかないと、失敗するんだよなぁ。
「それから、学食のメニューに変更が有るそうだ。夜間限定で酒場もどきを開く。ま、晩酌程度の酒とつまみだな。試験営業だから問題が起きれば閉鎖だ。まあ、大人向けだが、お前らも使用可能。だからって羽目外すなよ。お前らのせいで晩酌できなくなったら、一年生のオッサンどもから恨まれるぞ」
ああ、平民の大人が大勢入って来たから。学園生メニューだけじゃ気の毒か。
「あと、何だったか。えー」
ジャック先生が続けようとした時、ノックが響いた。
「あー、どうぞー」
「失礼します」
ドアを開けて入って来たのは、学園の事務職の制服を着た職員だった。わざわざ教室に来るなんて、どうしたんだろう。
「ここにマーク・ランドールはいますか。至急の連絡があります」
クラスのみんなの視線が僕に集まった。
「はい、僕がランドールです」
席から立って応えたら、職員さんは一つ頷いた。
「直ちにデイネルス侯爵邸へ向かうように。そのままでよろしい。着替えと持ち物は侯爵邸で用意できるでしょう」
ちょっと驚いた。
「寮に帰る時間も無いんですか」
「至急です。校門まで迎えの馬車が来ています」
教室がどよめいた。
学園がある森林公園の入り口から校門までは、馬車の進入禁止だ。そこを曲げるなんて、本物の非常事態じゃないか。
何が起きたのか。僕は慌てて教室を出た。
いやあ、難産でした。学生生活って、あまりに昔過ぎて、スラスラ出てきません。
こねくり回している内に説明臭くなりました。これがお冨の精一杯(;^_^A
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