なんか、想定外で
すみません。ちょっと不定期更新になりそうです。なるべく週末更新できるように頑張ります。お見捨てなきよう(笑)
そこからはディックさんの案内で、一般の見習い探索者見学コースをたどった。
「探索者の主な仕事は二つ。青い鉱石を掘り出すこと。未踏破地帯を調査して、ダンジョンのマップ完成を目指すこと。効率よく作業できる環境を試行錯誤で作っている段階です。では、実地で見てみましょう」
まずは大規模な採掘場跡。前に来た時は青い筋が露出しているだけの崖だった。
今は足場が組まれて、蟻の様に人がたかっている。
いや本当、蟻に見えたんだ。
「間違っても落盤が起きないように、計画的にビートバンを掘り出しています。ギルドの受付で期間と採掘場所を指定して、その範囲で採れるだけ掘ってもらってます。掘り易いように開発した専用の工具の貸し出しだってしてますよ。出来高払いの歩合制ですから、みんな真面目に頑張ってます」
「ビートバン、ですか」
ルイが首をかしげた。
「はい、そうです。正式名称はウォーターリニアと言います。ビートバンは愛称ですね」
ウォーターリニアとビートバン。一文字もかぶってないんだが、なんでそれで愛称になるんだろ。絶対に略称じゃないし。
「どちらも神代古語から採ったそうですよ。聖女様の命名ですから、どこからも反対は出ませんでしたよ」
ミリア、お前か。
僕にとってミリアは義妹で、みんなにとっては学友の家族だ。
だけど公式には唯一無二の聖女様。恐ろしいことに、国王陛下さえ聖女様には頭を垂れる。
神代古語を持ち出されたら、そりゃすんなり採用されるだろうよ。
実際に崖の足場に登って、直に青い鉱脈を触らせてもらった。
地質学的に頁岩と呼ばれるものに近いそうで、衝撃を与えると平たい板みたいに割れる性質の石だ。
「すべすべしてて平らだけど、何につかうんだ、これ。石焼料理とかか」
手に取った石の欠片を矯めつ眇めつして、ライナーが不思議そうに言った。
ディックさんが苦笑いしてる。
「こうやって見る分には、青くて綺麗なただの石ですけどね。水の上に浮かぶんですよ。これ」
「へぇ。木みたいに浮かぶんか。それにしては重いけど」
「いえ、浮かぶのは浮かぶんですけどね。水面の上空に浮遊するんですよ」
「へっ?」
意味不明な説明を受けた。
ボクラハ コンラン シタ。
論より証拠。崖から離れた休憩場所で、水をはった盥に青い石の欠片を放り込んでみた。そしたら、こぶし一つ分くらい浮き上がった。
斜めになったり、裏返しになったり、不安定に動いてる。風に舞う葉っぱのように重さを感じない。
「ほら、こうすると」
言いながら、ディックさんが欠片を指で弾いた。欠片は横に飛んで盥の外に。
カラララン。
今まで浮いていたのが嘘のように、床に落ちた。
「どういう仕組みか分かりませんが、水面に反発して浮き上がります。水がなければただの石。まあ、綺麗な色ですし厚みもほぼ一定ですから、壁材とか天井板に使えそうですけどね。これを船底に貼り付けた高速船の建造が実用段階まで来ています。他にも色々使い道を研究中ですよ。何しろ重さを無視できるんですから。夢の鉱石ですよ」
えーと。それって国家機密にしなくて良いんですか。とんでもない情報だけど。
「構いません。実用化すればすぐに知れ渡るでしょう。むしろ大々的に普及させて、戦略物資に育て上げた方が国益になります。今のところビートバンを産出するのは、ここデパ地下ダンジョンだけですから。探索者ギルドを抱えたランドール伯爵家の将来は安泰でしょう。少なくとも経済的にはね」
あのー、ディックさん。国益がどうのこうのって、話が大きすぎませんか。
僕らは学園にレポート提出しなくちゃいけないんですけど。一応修学旅行なもので。
「ビートバンの性質については初心者講習の一部ですよ。むしろランドール伯爵家令息のマーク様に発表していただいた方が好都合です。信憑性が増しますしね」
ディックさんの笑顔が、なんだか家令のリカルド・オーエンさんに似ているような。
元国王陛下侍従長のリカルドさん、ものっすごーく意味ありげな笑顔なんだよなぁ。
ちょっと現実逃避しそうになったけど、僕は悪くないと思うんだ。
頁岩。太古の海底に積もった泥が化石を含んで層状に石化した物が知られてます。
衝撃を与えると割れた平面から化石が出てくるという。
福井県立恐竜博物館の化石発掘体験コーナーで実物を見れすよ。
ちょっと宣伝でした(笑)
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