閑話 代官グレーン・スミス
ちょっと代官のスミス氏の心情を書きたくなりまして、閑話になりました。短くて済みません。
誤字報告、いつもありがとうございます。
ランドール伯爵家の若様が、無事にマイヅルから出立したと連絡が来た。
学園の修学旅行、つまりレポート提出前提の学生旅行だ。目的地はダンジョンということで、建設中の領都はスルーしてくれた。
正直、助かった。今の状態の領都をお見せするわけにはいかないからな。
いや、若様だけなら問題ない。いずれ説明することになる。早いか遅いかの違いだけだ。
だが、学生とは言え部外者に見せるわけには行かない。誰もが閲覧可能な学園のレポートに記載されるなど、以ての外だ。
領都の建設は、 聖女様の神託を元にした神の御業が振るわれている。只人には衝撃が大きすぎて受け入れられないだろう。
完成してしまえば、こういうものだと受け入れられるだろう。建設技術がどれほど異常か、専門家でなければ判断できまい。
ダンジョンは騎士団の調査が終了して、ランドール伯爵家へ正式に下賜されている。騎士団が引き揚げた後は、民間組織の管理に移行した。
その名は探索者ギルド。聖女様の命名だ。
探索者もギルドも耳慣れない単語だが、さぞかし由緒ある名称なのだろう。
組織の長の名称はギルドマスター。これも聖女様の命名だ。
前例がない? 珍妙な名称? 威厳が足りない?
そんな益体も無い不満など、蹴散らしてくれるわ。聖女様に対し奉り、不敬である。
そもそも、聖女様は国王陛下が膝を折られる方。臣下一同、首を垂れてしかるべし。
いっそ聖女様にご即位願いたいところだが、ご意向を無視して押し付けるわけにはいかぬ。ましてや、婚姻により王家に取り込むなど不遜の極み。
ランドール子爵家を聖女様を輩出した功績で伯爵に陞爵したが、それでもまだまだ足りぬ。
行く行くは侯爵、いや、せめて公爵にまで引き上げねば。伯爵領の発展は急務だ。
完璧な都市計画の領都、国際貿易港、そしてデパ地下ダンジョン。
広大な農地の開拓に王都までの街道整備。
ふふふ、辺境の無人地帯に一から造るのだ。空前絶後の大仕事よ。
早々に代官の職を得たのは僥倖だった。聖女様のため、この身を捧げましょうぞ。
本編では、オスカー君を振り回していたグレーン卿。ランドール領発展の立役者ですが、本人の本音は書いたことが無かったなーと思い至りまして(笑)
常識人では有るんですが、ミリアちゃんのことになると聖女様命で過激になります。どんどん口調が硬くなるというか、韻文調になるというか、爺むさくなるというか。
公爵家嫡男から伯爵家の家臣になったわけですから、一般的には没落というか凋落です。
が、しかし。
本人としては、王家より高位の聖女様の側近くに仕える方が栄誉。後悔は微塵もありません。
ちなみに、他の侯爵家や公爵家からは、あいつ抜け駆けしやがってと恨まれてます(笑)
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




