侯爵家の従属爵位
お貴族様向けのコース料理。食べたいです。
まだランドール伯爵領の開拓進んでないから、お米は無いですね。詳しくはシリーズの本編で(笑)
校舎ごとに併設されている学生食堂。その中でも寮に一番近い校舎のそれは、規模もまた一番だった。使用頻度から見て、順当なところだろう。
昼食は数種類の定食オンリーだったが、夕食は定食の他に、追加の有料メニューが選べるようになっていた。
カウンターでライナーは肉野菜炒め定食、僕は煮魚定食を選んだ。そのままライナーに席の確保を頼んで、僕は有料コーナーへ。
副菜とデザートを選んでトレーに載せて、係の人に学生証を見せて終わり。請求は家へ行くけど、詳細は知らない。
料理を受け取るカウンターの上の注意書きには、個室でコース料理を頼む場合の予約方法が書かれている。目ざとく見つけたライナーが、にっこり笑った。
「へぇ、会食マナーの講習は年三回まで無料なんだって。ただでご馳走食べられるって、俺、ここへ来れて良かったーっ」
「ライナー、講習はみっちりマナーを叩き込まれるから、食べた気しないんじゃないかな」
「そんな勿体ない。どうせ俺、本物の会食に参加できっこねぇし。成績気にしなきゃ、味わって食べても良いんじゃねぇ」
メンタル強いな、ライナー。
窓際のテーブルで食べてたら、昼に一緒だった先輩がこっちへ来るのが見えた。トレーの上には飲み物のカップだけ。
あれ、連れがいる。男子二人と女子一人。制服は二年生と新入生だ。どういう繋がりだろう。
「やあ、こんばんは。約束した説明をしに来たよ。寮の部屋でと思ったんだけど、彼女も同席したいのでね。この場で良いかな」
男子寮は女人禁制だから、それは良いんだけど。このテーブル、満席だよ。場所を移さないと。
「初めまして。わたくし、テムニー侯爵家の従属爵位、カルムタ伯爵家の長女、フィリアーナ・カルムタですわ。同席をお許しいただき、ありがとうございます」
制服のリボンは赤。僕と同じ一年生だ。
ガタガタと、相席していた生徒が食べかけのトレーを持って席を立った。
いや、席を移るべきは僕たちだろ。なに当たり前の顔してるんですか、先輩。
「言いたいことは分かるけどね。これが一番波風立たないんだよ。フィリアーナ嬢が正式に爵位を名乗った以上、この場は身分序列が適用される。そんな物騒な場所から避難させてあげるのが優しさと言うものさ。侯爵家に連なる者に席を譲らず居座ったなんて、そんな立場、誰だって御免だろう」
周囲に聞こえる声量ではっきり言われた先輩の言葉で、納得の空気が流れた。
とりあえず空いた席に座っていただく。
「初めまして。デイネルス侯爵家の従属爵位、グローダ子爵家次男、ジャン・グローダです」
「同じくデイネルス侯爵家従属爵位、ポルツ男爵家六男、イアン・ポルツです」
残りの男子二人の襟のラインは黄色。二年生だった。
「なぁマーク、従属爵位って何」
僕を見捨てず残ってくれたライナーが訊いてくる。
「ちょっと待って。皆様、初めまして。ランドール伯爵家長男、マーク・ランドールです。隣は寮で同室のライナー、平民です」
「あっと、初めまして。ライナーです」
このメンバーに臆さないって、本当にメンタル強いな、ライナー。
「では、私から説明しよう。従属爵位だったね」
引率してきた三年生、グラン・ツィフィールド子爵令息が話し出した。
国王陛下が直々に叙爵するのが直参貴族。代々世襲される爵位だ。
公爵、侯爵、それに直参の伯爵は、国王の許可を得て、従属爵位を持つことができる。自身が掛け持ちしてよし、他者に預けてよし。扱いは当主の胸三寸。
「伯爵家が持つ従属爵位は男爵と子爵。分家か親戚に与えるのが一般的だ。代替わりの時は、一旦伯爵家に返上して、改めて跡取りに叙爵してもらうことになる。ほぼ世襲だけど、当主が取り上げたままにできるから、本家へ忠誠をアピールしなきゃならない。結構大変なんだ」
周囲で頷いているのは、多分従属爵位の家の生徒だ。
「公爵、侯爵の従属爵位はちょっと性格が違う。公爵、侯爵は分家を持たないからね。従属爵位は血縁の無い家臣に与える。後継者選びは完全に実力主義だから、優秀な養子を迎えることも良くある。貴族だけど、血筋に頼れないのが私たちだ。なので、従属貴族は身分序列からは除外される。家単独では評価されない。主家の付属物扱いだね」
食堂がどよめいた。
知らない者が多数いたのだろう。先輩の口からはっきり言われて、驚きが広がっている。
「生まれた時から教育を受けるから、優位では有るんだよ。結果として世襲が多いしね。絶対という訳じゃないだけさ」
「それじゃあ、本題に入ろうか」
爽やかな笑顔で、先輩がおっしゃった。
なんとか従属爵位の説明まで来ました。次はマーク君の身分序列一位の説明です。
お星さまとブックマーク、お願いします。グラン先輩の説明が終わったら、次章に進んで粗筋の女学生登場かな。