初めまして
コロナのワクチン接種してきました。自治体による高齢者無料接種にギリギリで引っかかりました(笑)
次からは有料なんだろうなぁ。
「本日はお目通りが叶い、ありがとう存じます。わたくし、トマーニケ帝国にてエバンス商会を営んでおりますカールと申します。こちらは弟のキース、デルスパニア王国のサウザンド商会に婿入りしております。その息子のコーカイは王国中央高等学園にて、マーク・ランドール様と机を並べております。その縁を頼って同席させていただきました」
ちょっと意外。コーカイの父親と伯父なんだから、コーカイみたいな喋り方をするかと思ってたんだけど。
エバンス商会は、先代が起業して一代で伸し上がった中堅どころだったそうだ。
元々が行商人上がりだとかで、主にトマーニケの帝都とバルトコル伯爵領を中心とした交易に強みを持っていた。
トマーニケ帝国とデパ国との戦役の折には、交易がストップした。当然、大打撃を受けて倒産の危機だったんだけど、今目の前に居るカール会頭が二代目に就任して何とかしたらしい。
ピンチをチャンスに変えて方針転換、帝国で五指に入る大商会に発展させたんだとか。
この辺は家令のリカルド・オーエンさんから駆け足で説明を受けた。
こういう会見では相手の情報を押さえていて当然。交渉の基本のキだそうだ。
「うむ、遠路はるばるご苦労である。歓迎しよう。この後、海運業に参画したいとのこと、嬉しく思う。初めてのことばかりで一筋縄ではいかぬと思うが、合力を頼みたい」
オスカー義父さんの顔が引きつってる。頑張って偉そうにしてるけど、ちょっと無理が。
ほら、カールさんが呆れているよ。
「さすがは救国の英雄でいらっしゃる。即断即決でございますな。しかし、よろしいのでしょうか。まだ、条件など提示しておりませんが、参画をお認め頂けるのでしょうか」
そりゃあ、前置きも何もなしにいきなり許可したら、何か裏があるだろうって疑心暗鬼になってもしょうがないよね。
未成年の僕でも分かるんだから、ほら、義父さん、頑張って。
「勿論、誰にでもという訳ではない。その方が持参したバルトコル伯爵家からの紹介状、これが決め手だ。ちなみに、内容については承知しているだろうか」
「はい。ランドール伯爵夫人、キャサリン・ランドール様はバルトコル伯爵家のご出身。その縁で出していただくことが出来ました。我が商会としては望外の幸運でございます」
「それだけか」
「それだけ、とは」
カールさんが戸惑っている。僕も義父さんが何を言いたいのか分からない。
そもそも義父さんは成り行きで伯爵になった人だ。もったいぶった貴族のやり取りなんて苦手で、商人との正式な会談なんて今回が初めての筈だし。
これ、代官のグレーン卿に来てもらった方が絶対良くないか。
オスカー義父さんが大きく息をついた。
「カール殿、貴方のご両親から何も聞いてはいませんか」
「は、伯爵閣下?」
いきなり義父さんがカールさんを殿呼びして、敬語を使いだした。そりゃ驚くだろう。
「どうやら聞いてないようですね。きちんと秘密を守っていらっしゃると確信しました。それをもって信頼の証とします。既に王家から開示許可を得ています」
ここまで聞けば、僕にも分かった。
キャサリン母上とバルトコル伯爵家との因縁。あの騒動がここに繋がってるのか。
「キャサリン義姉さんの母上は、バルトコル伯爵家第三夫人でした。義姉さんが幼いころに離縁し、トマーニケ帝国へ移られた。そこで再婚した相手が先代のエバンス商会の会頭です。お二人はキャサリン義姉さんの実の弟、コーカイ君はマークの従弟ということになりますね」
「は、はあぁぁぁぁあ」
驚愕の声が響き渡った。
平然としているのは、あの騒動に関わった僕の家族と、家令のリカルド・オーエンさんだけ。リカルドさんは王家経由で聞かされてたんだろう。
ルシカ先輩、ライナー、それにコーカイ。後でしっかり説明するから。
コーカイが従兄弟だったって僕も知らなかったよ。そこは信じてくれよな。
あの騒動再び。
バルトコル伯爵やオスカー君は、秘密は秘密のままでもと思ってたようですが、王家が出張ってきました。トマーニケ帝国の大商会をしっかり取り込めと。
バルトコル伯爵家の代わりに、ランドール伯爵家と縁を結んでおけって意図です。
丁度運河を使った水運開発があるので、エバンス商会がランドール伯爵家に急接近しても不自然ではありません。
詳しくは本編で~(笑)
お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。




