テスト終わって日が暮れて
学生寮、こんなだったら良いなを詰め込んでみました。
貴族学園ですからね。高級路線でもおかしくないですよね。
午後のテストは、体力測定だった。
畑仕事をしてきた農村出身者。幼いころから訓練を受けてきた貴族の子息。ほとんど体を動かしたことのない大商会の坊ちゃん。それはもう、体格も体力もバラバラ。
半年間はクラスを分けて、それぞれ違うトレーニングメニューで効率的に基礎体力を養うそうだ。本格的な授業はその後。
「全項目の測定が終わったら、今日は解散だ。上級生のテストを見学してどの授業を受けるか参考にすると良い。受講するには授業ごとの身体能力基準に達している必要がある。半年後の判定で不可でも、追加で個別にトレーニングできる。ただし、受講開始が遅れればそれだけ不利になるからな。まあ、頑張れ」
上級生は武器を使ったトーナメント試合をしたり、格闘技や乗馬、その他授業の内容に沿ったテストだ。ちなみに騎士団志望の生徒は剣と乗馬が必須だそうな。
「女子は基礎体力だけで良いのに、男子は戦闘力がなきゃダメって、不公平でねぇの」
持久走で乱れた息を整えながら、ライナーが愚痴ってきた。
「別に武術系の授業は必須じゃないぞ。ただ、代わりに取れる授業が社交会話とか刺繍とか家政監督とか、女性向けが多いってだけで。僕の母は刺繍の課題で特大のタペストリーを制作したって言ってたけど、ライナー、やりたいかい」
分かりやすく顔を顰めたライナーに、笑ってしまった。
農村出身というだけあって、ライナーはそこそこ体力がある。持久力は僕より上だろう。ただ、経験に乏しい。農耕馬の世話をしたことはあっても、乗馬はしたことないそうだ。
僕は一通り貴族教育を受けて来たから、今ならライナーに勝てると思う。卒業時にどうなっているかは、ライナーの頑張り次第だけどね。
体育館に併設されているシャワーブースは大混雑してたので、男子寮に戻って一階の大浴場に入った。プールと見紛う浴槽は半分しか屋根に覆われていなくて、ライナーが露天風呂だと大はしゃぎしてた。
汗に濡れた肌着とトレーニングウエアは、部屋番号が書かれた洗濯物専用ロッカーに突っ込んでおく。洗い上がったら部屋まで配送されるシステムだ。
「すげぇな。タオルとバスタオル、備え付けかよ。使い放題で使用済み籠に入れときゃ良いって、贅沢すぎねぇ。ホントすっげえフカフカなんですけど」
いちいち感動してくれるライナーが楽しくて、僕も笑顔になる。
「貴族が利用する高級宿に準拠してるみたいだ。高位貴族の館はもっとすごいよ。風呂あがり専用の休憩室があって、飲み物が何種類も用意してあったりするから」
たとえば、叔父さんの侯爵邸のように。
「へぇー、そうなんだ」
素直に感心しているライナーは制服。僕は私服のルームウェア。
「ライナー、本当に私服は持ってないのか。王都までの旅は何着てたんだ」
「ああ、あれ。家で一番ぼろいやつ着て来たんだけど、さすがに寿命でさぁ。擦り切れてたところが穴になっちゃって、王都に着いたら捨てたよ。村で受け取った制服はもったいないから着なかった」
奨学生は、衣食住を提供されてしかるべき。なのにライナーの待遇は酷すぎる。
「ライナー、今度の週末、付き合ってくれないか。王都の叔父さん家に来て欲しいんだけど。ついでに服の買い出ししよう」
「そりゃいいけど、俺、金持ってないぞ」
「そこはアルバイト先紹介するから。制服じゃアルバイトできないし、一時立て替えってことで納得してくれないかな」
いくらでも資金援助は出来るけど、ライナーは友達だからな。一方的な施しは違うと思う。
「お、助かる。ありがとな、マーク」
にっこり笑ったライナーと一緒に、夕食をとりに学食へ向かうことにした。
そこで先輩方に囲まれたのは、想定外だと言っておく。
今回は学食で先輩方に囲まれる話の予定だったですけど、前振りが長くなって、次話に持ち越しです。
相変わらず予定は未定で決定に非ず(;^_^A
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。明日も頑張ります。