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マーク君の学園生活  義父は英雄 義妹は聖女 叔父は宰相やってます  作者: お冨
第七章 聖女ミリア

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学園改革は終わらない

 今日は四年ぶりに自治会のリクリエーションがありました。締めのビンゴ大会、五リーチ。運が良いのか悪いのか。

「なんだこれ」

 授業を終えた学生たちが、学生寮の玄関ホールに足を踏み入れた途端、目に入って来たもの。それは巨大な掲示板だった。


 試験結果を貼りだす時の仮置きのものではなくて、建物の構造物の一部になっている。

 そこに貼り出された数十枚の紙は様式が統一されていて、『新卒採用募集要項』とタイトルがついていた。


「なになに、デアモント建築土木会社、本社所在地デアモント公爵領領都、募集人員百五十名、って、百五十名!?」

 素っ頓狂(とんきょう)な大声に、何だなんだと人だかりができた。


 二階の自治会室は、掲示板のある吹き抜けのホールを見下ろす位置にある。

 悠々と下の騒ぎを眺めているのは、去年自治会長を務められた第二王子殿下。そして今年度の自治会メンバーだ。

 不本意ながら、僕もその中の一人。


「募集条件に、必須の取得単位と推奨単位を明記したからな。今年からカリキュラムの選び方ががらりと様変わりするだろうよ。貴族の教養はほどほどにして、実務系の授業を取った方が就職に有利に働く」


 殿下、顔が悪くなってますよ。


「今までは寄り親の個別の就職斡旋だったが、それでは求人に追い付かない。来年から卒業生は全員下級貴族に叙爵する。全学生に貴族向けの就職情報を開示して不都合はないさ。増えたパイをどこまで手に入れられるかは、各家の力量次第。獲得競争が激しくなれば、労働条件の向上に繋がる。善きかな善きかな」


 殿下がここまで言うってことは、王家の方針なんでしょうね。聞かされる身としては心臓に悪いんですけど。


「就職斡旋が無くなるとなると、寄り親の権益が一つ減りますね」

 涼しい顔で(きわ)どいことをいうのは、二年生の現自治会長。ヒックス公爵家のジュリアン先輩だ。


「ふふ、寄り親と寄り子の関係より、経営者と労働者の関係の方が間口は広いでしょう。規模も桁違いですよ。それぐらいしないと、経済規模の拡大に取り残されますよ」

 これまた涼しい顔で言うのは、侯爵家の先輩。第二王子殿下の側近を務める方だ。


 だから先輩方、そんな国家規模の話を一学生の僕に聞かせないで下さい。お願いしますから。




「なぜ急に必須授業が増えるのだ。それも経済学だと」

 クラスメイトのレナード・ルシアンが、この世の終わりみたいな顔をして頭を抱えた。

 レナードは武門の伯爵家の次男坊、騎士団志望で、武術に全振りしたカリキュラムを組んでいる。裏表のない性格で、清々(すがすが)しいほどの脳筋だ。


「決まったものはしょうがおまへんで。いやあ、終戦になって、これからは商人の時代でっさかい、経済のイロハ押さえとかんと、常識無し言われてしまいますで」

 王都指折りの大商会の跡取りコーカイが、我が世の春とばかりに満面の笑みで言い切った。


「認めたくはないが、コーカイの言う通りです、レナード様」


 いつもならレナードを全肯定するはずのルイ・バーンスタインまでそんなことを言うものだから、レナードは愕然としてた。


「頑張れ、分からないところがあったら、付き合ってやるからさ」

 そう言って肩を叩くしか、僕に出来る事はなかった。





 レナードが理解するまで復習に付き合ったクラスの連中は、全員が熟練の教師スキルを会得したと思う。

 それほど、レナードの脳筋ぶりは半端なかったと言っておこう。






 レナード・バーンスタイン。どなたも突っ込んでくれないので、ちょっと寂しい。彼のCD、何枚か持ってます。

 レナード・ルシアンとルイ・バーンスタインは、切っても切れない迷コンビ(笑)


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。



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― 新着の感想 ―
[一言] バーンスタインは小澤征爾と親交があった人、って覚え方ですわ
[一言] レナード・バーンスタイン、気づきませんでしたw。 ショスタコの5番(NYフィル1959年版)を流しながら読み直しましょうか。いくらか落ち着いた1979年版より4分速く、生き急いでいる感じがし…
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