青い鉱脈
青い山脈って言って、今の若い人は思い当たるかな。
お冨の親世代のヒット曲のタイトルです。
国から派遣されたダンジョン調査隊の内訳は、王城の国土保全省から派遣された文官が数名、カロテタリア騎士団から二個中隊、連絡係としてランドール伯爵家から数名。
そして、何故か調査隊のトップを務めていたテイラムさん。
テイラムさんは、オスカー義父さんが王都守備隊に居た時の同僚で、親友と言うか悪友と言うか、公私ともに義父さんの相棒を務めてる人だ。
家族ぐるみの付き合いで、僕たち兄弟も可愛がってもらってる。小さい頃は、良く頭を撫でてもらったものだ。
今は国軍で義父さんの副官を務めてる筈なんだけど。
タムルク王国と戦争の最中なのに、何でここに居るんですか。戦地で戦ってる上官をほっといて、副官が別任務なんて有り得るんですか。
「大きくなったねぇ、マーク。いやもう、伯爵令息になったからマーク様って呼ばなきゃいけないかなー」
いつもの緩ーいしゃべり方で、僕の頭をポンポンと叩いてきたテイラムさんだった。
「いや、今回は色々と特殊でさー。地下に人工物が埋まってたなんて他に聞いた事無いし、王領をランドール伯爵家へ下賜する手続き終わってるのに、まだ事前調査してるわけでしょー。オスカーの片腕の本官が責任者になることで、国の調査だけどランドール伯爵領に目いっぱい配慮してますよーって示してんのよ」
テイラムさんのぶっちゃけ具合はなかなかのモノだった。そこへグレーン卿の補足が入った。
「私が近衛騎士の身分のままでしたら、国王代理として調査隊のトップを務めたのですが。既に伯爵家の家臣として代官の地位にありますので、不適格なのです。その点、テイラム殿は国軍の軍人ですので」
「そうなんだよねー。戦争中じゃ無かったら、オスカー本人に軍の任務として自分で調査させられたんだけどさ、ま、本官はランドール大将閣下の代理ってことで」
はあ。オスカー義父さんに軍人と領主の立場を同時行使させるつもりだったってことか。
そんな使い分けできるほど、義父さん、器用じゃないと思う。絶対、胃を痛めちゃうよ。
今回、僕をわざわざ引っ張って来たのは、代官のグレーン卿だけでは権限が足りない事態が起きたからだそうだ。
デパ地下ダンジョン内で未知の物質の鉱脈が発見されたため、採掘許可が無いと調査を進められないんだとか。
「新しい鉱脈はランドール伯爵領の財産だからね。勝手に採掘できないの。調査隊の目的は地下の地図作りと原住民がいないか確認することだから、調査項目の追加も必要になっちゃってねー。未知の物質って、何なのよ」
既に調査済みのエリアを案内されながら説明を受けて、たどり着いた場所は見上げるような壁だった。
地下とは思えない巨大な空洞。ここまでの壁面は明らかに人工物だったのに、目の前にあるのはむき出しの地層。そこに青い縞模様が見えている。
「これって。塩の村で見た岩塩の鉱脈にそっくりだ」
あそこも崖に露出していて、露天掘りしてた。塩の層だけ薄い茶色で。
「この地下施設が造られた理由の一つが、この鉱脈と推定されます。いつの時代のものか不明ですが、ここまでの設備投資に見合う価値があるのは明らか。あの青い鉱脈の正体を調査する許可をいただきたいのです」
グレーン卿が冷静に言ってきた。
「我がランドール伯爵家で調査するのが理想ですが、正直申しまして、伝手がありません。調査結果は国に報告を上げることになりますし、このまま調査隊に任せるべきでしょう。マーク様の許可をいただければ、後は私が取り計らいますので」
つまり僕は、形式を整えるのが仕事なわけだ。
地上の仮設宿舎に戻って必要な書類にサインすると、僕の仕事は終わり。急いで学園へ戻らなきゃ、授業に遅れてしまう。
謎の青い鉱脈については機密なので、口外できない。せめてクラスの皆には、お土産持って帰ろう。
ツオーネ村特産のチーズとソーセージで良いかな。美味しいんだ。
えー、本編のダンジョン関係の表向きの建前がこれです。
いやね、タムルク王国との戦争でテイラム出し忘れてて、慌てて不在の理由をこじつけたんですけどね。
こじつけをもっともらしくするために設定盛ってたらああなったと。
ダンジョンの実態は、国家機密。マーク君には開示されません。
そのあたりの裏話は、本編でどうぞ(笑)
お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。
明日はリアーチェ侯爵令嬢の話を書きたいな。




