実力テストと初めての学食
おおっと。蘊蓄好きの虫が騒いでおります。ここはストーリーのテンポ優先しとかないと(笑)
翌日、クラス決めのための実力テストが始まった。
上級生のクラス替えのテストが同時に行われていて、どの教室も、緊張感がすごい。学園でモノを言う学力序列がこれで決まるんだから、無理ないね。
テスト用紙は十枚組。どれから解いても構わない。時間内に終わらせるのは物理的に無理で、問題の取捨選択も評価の対象だそうだ。
五枚目までは基礎的な計算や知識を問う穴埋め問題。六枚目からは応用問題だった。
『領地の奥にある開拓村から救助要請ががあった。火事で村が全焼、けが人多数。即座に送る救援隊の編成と必要物資、予算を答えよ』
これは行政官向けの問題だな。
『領主から新しい作物の苗と種が届いた。試験栽培のために必要な物資と手順を答えよ』
これは農村出身者向け。
『新しい都市に支店を開くことになった。必要な手続きと手順、予算を答えよ』
商会向けか。
軍人向けの問題は僕には無理。商会も管轄外だ。
「つっかれたぁ。なぁなぁ、マーク、できた?」
午前中の筆記試験を終えて、ライナーと学食に来ている。カウンターで定食の乗ったトレーを受け取って、空いたテーブルを探す。
「五枚目までは全部埋めといた。応用問題はなぁ。採点基準次第かな」
「だよな。俺、全然だった。五枚目の途中で時間になっちゃったよ」
「すごいな、二人とも」
後ろから声を掛けられて、二人して振り向いた。
「新入生で五枚目まで解けるのはすごいよ。量が量だから、二枚目か三枚目までが普通かな」
襟の青線。三年生の先輩だ。あれ、この人。
「昨日はありがとうございました。通路で女子生徒にぶつかられて、困ってたんです」
「ああ、昨日の。あー、君、気を付けた方が良いよ。彼女、君に目を付けたようだ。去年までは先輩に付きまとってたんだけど、卒業されたからね。まったく、有名な問題児だよ」
うわっ。嬉しくない。
ライナーと横並び、先輩は正面に座った。トレーの上は同じ定食だ。
「昼からすげぇご馳走だけど、もっと安いの無いかな。節約したいんだけど」
「ああ、君、この定食は学費に含まれてるから、実質無料だよ。食べなくても節約にならないから、しっかり食べて体を作るように。昔は有料だったんだけどね、生徒が栄養失調で中退する事件が起きて、変更になったんだ」
先輩が爽やかにおっしゃった。
「改めて自己紹介を。僕はグラン・ツィフィールド。テムニー侯爵家の従属爵位のツィフィールド子爵家の三男だ。テムニー侯爵家の付属扱いだから、身分序列の対象外」
ライナーが何それって顔で、口をぽかんと開けた。
「ご丁寧にありがとうございます。僕はマーク・ランドール。ランドール伯爵家の長男です。こっちは同室のライナー。奨学生です」
「あ、はい。ライナーです。えと、平民です」
「はは、そんなにかしこまらなくて良いよ。そうか、君がマーク・ランドールか。来年の自治会長候補とお近付きになれて、僕の方が幸運だね」
ん? なんか不穏なことを言われたような。
「僕はそんな候補になった覚えはありませんが」
「自治会長は、身分序列で自動的に決まるから。マーク君、新入生の身分序列一位だから、よほどのことがない限り変更なしだよ」
いや、それはおかしい。
「我が家は、半年前まで子爵でしたよ。成り上がりの伯爵が序列一位なんて、おかしいでしょう」
「いや、おかしくないんだけど。あー、説明させてもらいたいけど、時間がないな。とにかく食べようか。午後の実技試験が始まってしまう」
なんだか誤魔化されたような気がしたけど、確かに時間がない。
改めて説明してもらう約束を交わして、先輩と別れた。
「あのさ、マーク、従属爵位って何だ」
「あー、後で説明する。とりあえず午後のテスト受けようか」
問題児の女子生徒。これからどんなウザ絡みしてくるか。
実力テスト、実は全学年、問題共通です。マーク君、うっかり上級生向けの応用問題まで解いてます。
テストの後回しになっているあれこれ、忙しくなりそうです。
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