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マーク君の学園生活  義父は英雄 義妹は聖女 叔父は宰相やってます  作者: お冨
第五章 伯爵夫人

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ニーナ義母さんの主張

 ニーナ義母さんて、こんな人です。

 パワフルで思い切りの良さはオスカー君以上かも。

「あら、良いんじゃない。ランデア子爵は従属爵位なんだから、マークがランドール伯爵位と掛け持ちできるでしょ。ミリアやカークに従属爵位が必要になったら、国王陛下にお願いして新しい爵位を作っちゃえば良いんだし。そもそも従属爵位が一つしかないっていうのが、伯爵家としては不味いのよね。まあ、ランドールのお義父様もオスカーもまだまだ現役なんだから、先の話よね。成るように成るわよ」


 ニーナ義母さんがあっけらかんと言った。

 相変わらずのマシンガントークだけど、僕がランドール伯爵になることが前提なのは訂正して欲しい。


「だから、そういう話じゃなくて……」


「未来がどうなるかなんて、誰にも分からないわよ。良いこと、物事は成るようにしか成らないの。人間、諦めが肝心だわ。与えられた条件の中で足掻くしかないの。無い物ねだりしたって時間の無駄。地に足を付けて現実(いま)を生きなきゃ。手に入れられるもので()()りしてできる限りの幸せを目指すの。願いが全て叶うなら、今頃私はツオーネ女男爵に成ってるわよ」


 ニーナ義母さんの最後の一言は、まぎれもなく本音だろう。


 静寂が、場を支配した。

 誰もが口を開かない。いや、開けない。


「あ、あのう」

 空気を読んだのか読まないのか、ライナーが口火を切ってくれた。


「ニーナさんが女男爵に成れないのは何でですか。マークはちっちゃかったから良く分からないって言うし」


 母上がにっこり笑った。


「ライナー。平民が伯爵夫人に直接呼び掛けるのは無礼になりましてよ。この場は息子の友人という立場ですから、見逃されているだけと知りなさい。それでも、伯爵夫人と呼ぶべきですわ。名を呼ぶ許しを得たとしても、ニーナ様と呼びましょうね。ニーナさん呼びはアウトでしてよ」


 ライナーの背筋がピンと伸びた。


「ご免なさい、私が緩すぎるのよね。でも、こういうのって、普段から慣れておかないとついポロッと出ちゃうもんだから、練習と思ってね。私も頑張る」


 ニーナ義母さんが宣言して、キリっと余所行きの顔になった。その横でミリアもそっくりな表情になる。

 あんまり似てるんで笑いがこみあげて来たけれど、ここで顔に出したら、母上から大目玉だ。





「オスカーも私も、納得済みだったの。未亡人になったキャサリン義姉さんが意に沿()わない再婚を迫られて、ランドール子爵家を乗っ取られかねないってリアーチェ義姉様の意見、(もっと)もだったんだから。んん、尤もだったから」


 それで、母上とオスカー義父さんが再婚したわけか。なんだか、リアーチェ叔母様のしたり顔が浮かんできた。


 デイネルス女侯爵閣下が主導したなら、反対はまず無理。押し切られる姿しか思い浮かばない。

 それにしても凄いな。高位貴族でもないのに、第一夫人と第二夫人を(そろ)えるなんて。


「その節は、本当に申し訳なく思っていますわ。本来ならニーナ様が第一夫人でいらしたのに」


「だから、そこは納得済みですって。マークが長男、キャサリン義姉さんが第一夫人。そのままランドール家を任せておけるんですもの。あくまでオスカーはキャサリン義姉さんの虫よけで、マークが成人するまでの中継ぎ当主。私が第二夫人の方が、スムーズにツオーネ男爵家へ戻れるはず、だったんですけどねぇ」


 確かに。

 ランドール家が伯爵に陞爵した今となっては、オスカー義父さんの去就は軽々しく行えなくなってしまった。

 救国の英雄で国軍大将、聖女ミリアの父親で、デイネルス第三宰相の実弟だ。そんな義父を差し置いて、僕が伯爵になって良いわけがない。


「オスカーが男爵家に戻るのは無理だとしても、カークに後を継いでもらいたいって思うのは間違いじゃないでしょう。本人がツオーネ男爵家よりランドール伯爵家の方が良いって言うなら、それはそれで良いと思うけど、カークは次男です。従属爵位を賜って、分家になるのが筋ってもんでしょう。長男のマークを押しのけるなんて、道理が通らないわ」





 こうして話は振出しに戻るんだ。


 ルシカ先輩、どうしたらオスカー義父さんとニーナ義母さんを説得できるか、後で一緒に考えて下さい。










 オスカー君とキャサリン義姉さんの再婚については、本編で第一章を丸々使って書いてます。興味のある方はそちらをどうぞ。大人の事情もちらほらと(笑)


 リアーチェ叔母様の王家への直談判、独立した中編にすることにしました。タイトルは『デイネルス侯爵令嬢の結婚』にしようと思います。

 さて、中編で納まるかな(;^_^A


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 結局はオスカー氏の有能さが仇になってるんですよね~ お家乗っ取りを防ぐための半ば偽装結婚だったので、オスカー氏は本来の継承者であるマークに家督を返還したい。 マーク君にしたら、オスカー氏の個…
[一言] んん・・・? マーク氏はそもそも公爵家から「逃がさん・・・お前だけは・・・」って言われてますよね まだ確定事項じゃない?
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