デイネルス侯爵邸の貴賓室
リアーチェ叔母様による王家への直談判。これじゃない感が凄くて、何度も書き直してます。
女侯爵の女傑っぷりを描写しきる筆力が欲しいです。切実に。
新章の最後に、閑話として挟む予定。なんとかそれまでに書き上げたいな。
学園改革が通達されて、学園全体がざわついていた。
在校生にとっては、卒業時の爵位授与以外変更なし。むしろ得しかない。慌てることは無いのだが。
「家庭教師が引っ張りだこになってるらしい。今までは貴族の義務だったからね。無試験で自動的に学園へ入学できてたのに、来年からは入学試験をクリアしなきゃならない。合格水準が不明だから、どれだけ勉強すれば良いか分からなくて、必死に勉強させてるそうだ」
そう教えてくれたのは、三年生のグラン・ツィフィールド先輩。
先輩のツィフィールド子爵家はテムニー侯爵家の従属爵位で、先輩自身も、実質的に侯爵家の家臣だ。
僕はテムニー侯爵夫人の甥っ子で次期侯爵の従弟、先輩にとって主筋にあたる。
テムニー侯爵家とデイネルス侯爵家の従属爵位の家の生徒は他にも居て、最年長のグラン先輩が代表を務めている。
家同士の力関係とか役割分担とか、色々ややこしくて、情報共有前提で先輩に一本化したらしい。あくまで非公式だけど、僕のお世話係だ。
そんな関係、学園生活に持ち込むなと言いたい。だけど先輩たちが防波堤になってくれないと、僕は両侯爵家の寄り子にもみくちゃにされてしまうんだとか。
先輩、お手数かけて済みません。
「来年の受験者がどれだけ増えるか手探りだし、不安は大きいだろうな。ま、制限年齢が無くなるんだから、合格するまで何度でも挑戦すれば良いさ。それが嫌なら、爵位を諦めて潔く平民になれば良い」
先輩、軽く言ってますけど、貴族の矜持とか有るでしょう。絶対平民になるわけにいかない高位貴族は……入学試験くらい余裕の家庭教育受けてるか。焦ってるのは、中位貴族かな。
「それはそれとして、マーク卿、先週末、侯爵家に顔を出さなかったんだって」
「ええ、そうですけど。何か不都合ありましたか」
実家にだって顔出ししてないのに、叔父さん家に毎週行く必要は無いと思うけど。
「デイネルス女侯爵閣下から、次の休みには必ず顔を出すようにとの伝言だよ。同室のお友達も一緒にどうぞとのお誘いだ」
それ、実質命令じゃありませんか。
「ちなみに無視すると、侯爵家の紋章入りの正式な召喚状が届くと思うから。僕の口頭で済ませている内に足を運んだ方が無難だよ」
侯爵家の紋章入りって、そんな公文書、見たくないです。
リアーチェ叔母様ならやりかねないのが怖いよ。
そして週末。僕とライナーは、侯爵家からまわされた紋章付き高級馬車で王都に向かった。さすがに二度目とあって、ライナーも落ち着いていた。
僕の側近候補に成ったことは極秘なので、ルシカ先輩は別行動だ。乗合馬車を使って、王都内の待ち合わせ場所に先回りしてもらった。
無事、先輩を拾って、いつかと同じメンバーでデイネルス侯爵邸の正門を潜った。
そのまま案内されたのは、三階の貴賓室。案内の高級使用人の女性がそう言っていたから間違いない。僕も初めての場所だ。
「すげぇな、マーク。すっげー高そうな家具って俺にも解るけど、全然キンキラしてねーの。なんか落ち着く」
ルシカ先輩と目を合わせた。無言で確認する。
これは言っておいた方が良いかな。知らない方が精神衛生に良いような気もするけど。
「良く分かったね、ライナー。この部屋の家具、アンティークが並んでいるんだ。一番新しい物でも、三百年は経ってるよ。材質はそれほど高価じゃないけど、希少価値が目茶苦茶高い。同じ重さの金塊より、一桁、いや、二桁は高価だよ」
侯爵家の貴賓室、そこに地味目の家具が並んでるってのは、そういうことだ。それ以外あり得ない。
ライナーが硬直した。
気の毒だけど、知らずに何かあった方がもっと気の毒なことになりかねないからな。
「言っといてなんだけど、それほど気にしなくて良いよ。宝物庫にしまってないってことは、普段使い用だから。常識的な破損程度なら、咎められたりしないよ」
その程度で騒いだら、侯爵家の沽券にかかわるからな。
「いらっしゃい、マークちゃん。待っていたわ」
こんにちは、リアーチェ叔母様。わざわざ呼び出すって、何の御用ですか。
侯爵家の財力を実感してもらえるよう、家具のエピソードを入れてみました。伝わったかな。
騎士爵と準男爵。名誉だけで実質的に平民扱いです。法的特権は何もありませんが、それでもブランドになる肩書です。
現代の感覚で言うと、有名大学卒かな。それだけで周囲から一目置かれます。
リアーチェ叔母様の御用事、ライナー君の奨学金問題です。解決まで何話かかるだろうか(笑)
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