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マーク君の学園生活  義父は英雄 義妹は聖女 叔父は宰相やってます  作者: お冨
第三章 Aクラス

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決着

 今日は原爆の日。黙祷しました。

 別室を出て、ようやく解放された。

 食堂に戻る用事も無いし、直接クラスミーティングの教室へ向かうことにする。


「マーク、大丈夫だった?」

 ライナーの顔を見て、ホッとした。本当に疲れる昼休みだった。


 僕が第二王子殿下に呼び出されたと、一般教養の授業を受けていた生徒は全員知っている。食堂での一幕も目撃者は大勢いた。


「もう、噂が噂を呼んでまっせ。今日中に学園内に知れ渡りますやろなぁ」

 コーカイの言葉に嘘は無いだろう。誤魔化すのは到底無理だ。


「醜態をさらした特待生女子を別室に連れ込んだと聞いたが、どうなったんだ」

 レナード、遠慮なく直球で来るのは君らしいけど、言い方ってものがあるだろう。

 君はデリカシーを身に着けるべきだ。でないと脳筋一直線だぞ。手遅れじゃないことを祈る。


「あー、結論から言うと、マリア嬢は転校することになった。このままじゃ単位不足で卒業できないし、救済措置だってさ」

 教室中に何とも言えない空気が流れた。


「なんであんな女を救済しなきゃいけないんだって言いたい気持ちは分かるけど、何しろ特待生の勉学の権利は絶対だからな。そこに例外作って、後々影響が出るのは不味いんだって。殿下から王家の方針だって聞かされたら、反論できなかった」


「そんなこと言ったってさ、彼女、成績目茶苦茶だったんだろ。本当に特待生だったのかよ」

「そうだよな。先輩に聞いたけど、卒業試験でズルしてたんじゃないかって」


 ガヤガヤと上がる外野の声に、そこだけは訂正しておかなきゃいけない。


「間違いなく、マリア嬢は十二歳の卒業試験で全問正解してた。彼女、転生者だったんだ。前世の記憶で試験をクリアできたらしい。元々覚えていただけで、新しいことを勉強する学力は無かったって」


「ええーっ」

「本当に居たんだ、転生者」

「転生者って、みんな、あんな変人なのかよ。エキセントリックって言うんだろ、あれ」

「前世の記憶って、それ、やっぱりズルじゃないか」


 教室の(ざわ)めきは、担任のジャック先生が来るまで治まることはなかった。








「君の今の成績では、卒業は不可能だ。残り一年でどう頑張っても、必要単位を揃えられない。分かるね」

 目の前の王子殿下がおっしゃいます。


 分かっています。いえ、分かってしまいました。

 ここは物語の世界じゃありません。現実の世界です。コウリャクタイショウ者も居ないし、私が攻略することもできません。イベントは始まる前に終わってしまいました。

 わたくし、何をしに学園に来たのでしょう。


「特待生が学業不振で退学と言う前例は、非常に不名誉で不都合だ。これも分かるね」


 はいと(うなず)くしかありません。ご迷惑をおかけしました。


「君だって、学費と生活費の返済が待っている。何しろ貴族学園だからね、手に職の無い女性が働いて返せる額ではない」


 具体的に金額を聞いても、絶望しかないでしょう。私の人生は終わりました。


「そこでだ。君、音楽家になる気はあるかな」


 音楽家、ですか。聞いた事のない言葉です。それは何でしょう。


「先日、聖女様を通じて、神器を賜った。素晴らしい音色を奏でる楽器の数々だ。だが、誰も見た事のない新しい楽器でね。今のところ、演奏できる者が一人も居ない」


 誰も演奏できないのに、素晴らしい音色ですか。どうやって確かめられたのでしょうか。


「今、神器を元に複製品を作っている。手探り状態だが、見本はあるのだ。細工師や木工職人が中心になって、楽器職人を育成中だ。普及品の製作はまだ先だが、専門の演奏家も育てなければならない。音楽全般を産業として成立させ、音楽家という職業を作る。そのための専門学校を創立するのだが、その一期生になって欲しい」


 殿下が力説してくださいました。とても大切なことでしょうが、ちょっと、良く分かりません。


「学校の新設を理由に、特例として君を転校させる。君は新しい学校の新入生として一年からやり直すことになる。卒業まで特待生待遇を継続すると約束しよう。王立中央高等学園については、入学にさかのぼって白紙とする。学園の成績も学費も、全てなかったことに出来る。どうかな」


「それは……とても有り難いことですが、何故、わたくしに」


「全く新しい事業だからだ。楽器の演奏方法を確立しても、職業として成立する技量を得られるかは未知数。はっきり言って、海のものとも山のものとも分からないものに人生をかけてもらうことになる。君はテストケースと言う訳だ。安定とは程遠いし、将来の保証は出来かねる。そのデメリットを飲み込むだけのメリットが、君ならあるだろう」


 確かに。わたくしには、後がありません。

 女は度胸です。そのお話、受けさせていただきます。






 プロの演奏家の草分けと言われ長年音楽専門学校の学長を務めた女性は、音楽の道を志したきっかけを聞かれるたびに、微笑んだまま黙して語らなかったと言う。


 





 えー、聖女様の神器については、本編第六章 披露パーティーを参照してください。


 ミリアちゃん、気軽に楽器をプレゼントしたけど、受け取った王家にしたら一大事。第二王子殿下が責任者に成って、プロジェクト始動です(笑)

 時系列、ちゃんと合ってるよね(;^_^A



 お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。


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