お呼び出し
聞いてて眠くなる講義。あるあるですよね。
はるか昔の学生生活思い出しながら書いてます。今の学校って、どんな感じなんだろう。
授業選択はある意味セオリー通りに進んだ。
武門の家の次男で騎士団志望のレナード・ルシアン伯爵令息は、見事に武芸に偏ったカリキュラムを組んでいた。
どうしても複数の武術を上級まで極めたいので、単位稼ぎのための授業を受けるより基礎鍛錬に時間を割きたいとのこと。合理的と言えば合理的だ。
最終チェックを入れた担任のジャック先生は、卒業までに二つくらいは貴族の教養科目を中級まで取っとけと条件を付けて、承認していた。
商会の跡取りコーカイ君は、経済関係全般と一般教養を幅広く。
「どんなお客様とも話題に困らないのが、接客の基本でっせ。貴族様の教養を身に着けとかんと、王都で商売は出来ませんなぁ」
これにはクラスの伯爵組が苦笑していた。
一代限りの下位貴族の子弟は、成人したら平民になると確定している。卒業までAクラスを維持できれば王城の官吏の道が拓けるし、将来は明るい。
なので潰しの利く初級を手当たり次第。自分に合わないと思ったら初級で止めれば良いだけだし、単位を稼いでおいて損はない。成績維持のために無難なカリキュラムを選ぶから、みんな似たり寄ったりになるんだとか。
まだ将来を決めていない大半も、初級を取れるだけ取っている。
お家の事情は様々だから一年後期からはばらけていくだろうけど、当分、この顔ぶれの授業が続きそうだ。
初級の一般教養は、大講義室での一斉授業だった。
チラホラ上級生が居るのは、単位の数合わせ。受けさえすれば、まず落とすことのない科目なんだとか。
「学園に入学できたなら、取れて当たり前の単位ですからなぁ。ま、顔つなぎにはもってこいの授業ですわ」
そう言ってコーカイ君は、他のクラスの生徒の席へ突撃して行った。商会のお得意さんに挨拶がてら、将来の顧客開拓に全力を注ぐそうな。呆れるほどのバイタリティだ。
レナード卿はパスしているけれど、意外なことにルイ卿がこの授業を取っていた。
「私はレナード卿の補佐を志望している。卿が苦手としておられることをフォローするのが務めだ」
「えー、レナード卿について行けないだけじゃねぇの」
ライナーの失言に反応したのは、本人では無くて僕の隣に座ってきた上級生だった。あ、ルシカ先輩だ。
「ライナー君、それを言ったらお終いだよ。分かっていても口にしてはいけない。そもそもルシアン伯爵家のご次男は、体力お化けだ。彼について行けなくても恥にはならない。ルイ卿、安心したまえ」
それって、慰めているやら追い打ち掛けているやら。
ルイ卿は顔を真っ赤にしてたけど、三年生を示す青いライン入り制服の先輩には反論しにくいみたいだ。
「おはよう。授業がかぶるのは身分序列とは無関係だから、同席お願いして良いかな」
隣に座ってて今さら感は有るけど、きちんと許可取った方が良いんだろうな。貴族的に。
「もちろん、良いですよ、おはようございます」
「はは、ありがとう。この科目取得済みの連中から羨ましがられたよ。堂々と君に近付けるからね」
そういうことですか。側近候補に成ったのは極秘だけど、機会を見て接触してくるんですね。
朝から貴族のやり取りにげっそりしていると、教師が入室してきて、授業が始まった。
だんだん眠くなってくる講義を聞いて、ひたすら前を向いている内に昼休憩になった。
午前中いっぱい座りっぱなしって、長すぎると思うんだ。簡単に単位が取れる割にイマイチ評判の悪い理由が分かった気がする。
軽く伸びをして、さてクラスの連中と食堂に行こうかと声を挙げようとしたら、出鼻を挫かれた。
「マーク・ランドール伯爵子息。第二王子殿下から昼食のお誘いに参りました。今日これから、ご都合はいかがでしょうか」
ご都合いかがでしょうかって、断れないお誘いじゃないですか。やだー。
お呼び出しが来ました。単なる顔合わせか、それとも例の女子生徒絡みか。どっちにしようかな(笑)
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