商会の跡取り
原稿書きながらテレビを流し見してたら、NHKの番組で紅海のロケをしてました。赤潮の発生が地名の由来だとか。見事なコバルトブルーの海でした。
お冨のネーミングセンスはこんなもんです(笑)
レナード卿とルイ卿の主従未満のやりとりが、なんだか良い感じでまとまって。まあ、仲良くやって欲しい。
心なしか、教室の雰囲気が弛緩したみたいで、様子見していた伯爵家出身の生徒が、三々五々挨拶に来た。
さすが高位貴族というか、食堂の一幕は全員が承知していて、僕を身分序列一位として扱ってくる。
中位貴族の子爵家と男爵家の者は、したり顔と困惑顔が半々くらいか。慌てて情報共有している姿が目に付く。そして……。
「わし、コーカイ言いますねんな。ウチは商会やってま。よろしゅう頼んまっせ」
ニカッと笑いかけて来た家名を持たない生徒は、僕を無視してライナーにだけ話し掛けた。
「今年の特待生はわしだけや思とったんやけど、まだおったんやなぁ。平民同士、仲良うしましょうや」
これはまた、癖の強そうな。
「あ、俺、奨学生。特待生じゃねぇから。俺ライナーって言うんだ。よろしく」
ライナーが返事した途端、教室から音が消えた。
僕の正面で話していたご令息が、顔に驚愕を貼り付けてライナーを見ている。彼だけじゃない。教室全員だ。
「どしたん。俺、何か変な事言ったか」
ライナーが首をひねった。
僕に聞かれても、困るんだけど。誰か説明お願いします。
「えらい驚きましたわ。Aクラスに入るだけの学力があって事前情報の無いぽっと出の平民ゆうたら、そりゃ特待生間違いない思いますわ。それが奨学生やなんて、あんさん、天才ちゃいますか」
コーカイ君の言葉に、身分関係なく全員が首を縦に振った。
「我ら伯爵家の者は、意地でもAクラスにならねば、家名に泥を塗ることになる。幼少期より教育を受けてきたのだ。優秀で当然であろう」
レナード卿が、真面目な脳筋男っていうイメージそのままに言い切った。
「それはそれでプレッシャーとか大変じゃねぇの。じゃなくて、大変ですね」
良いぞライナー。貴族相手の時は特に丁寧な言葉遣いを心掛けような。
「そない仰いますけど、わしかてプレッシャーもんでしたで。なにしろ家は商売人でっさかい、特待生になれんかったら、掛かった学費働いて返さなあきません」
「コーカイ殿はたしか王都デルーア指折りの大商会の跡取りですよね」
不思議そうな声が掛かった。確かに学費に困るような家ではないだろう。
「だからこそですわ。お金にはシビアでっせ。タダで勉強させてもろうて当たり前、Aクラスで将来のお得意様に顔つなぎしてこいって言われてますねん」
ずいぶん明け透けな物言いだけど、嫌味が無いのはさすがかな。
「それより、ライナーさん、特待生でないのにAクラスやなんて、どれだけ勉強してきたんでっか。生半可な事ではないですやろ」
デルスパニア王国民の義務である十二歳で受ける卒業試験。その成績で特待生になるか奨学生になるかが決まる。学園入学までの三年間は、入学準備期間だ。
「貴族でもない、特待生でもない、それでこのクラスに入ったのでしょう。驚くなと言う方が無理です。特待生でも、Aクラスにはそうそうなれるものではありませんわ」
まだ挨拶してない女子生徒の言葉に、またまた周囲が頷いた。
丁度そこで昼休憩を告げるチャイムが鳴った。そのまま今いる校舎の食堂に全員で移動して、なんだかんだと自己紹介を兼ねた話が続いた。
僕らのクラスは、いきなりの静寂の説明をすると言う共同作業のお陰で、かなり打ち解けることが出来た。
普通は貴族と平民が馴染むまで時間が掛かるものらしいけど、怪我の功名と言うか何と言うか。
「いやいやいや、マーク卿とライナーのコンビのお陰ですやん。目の前で貴族の若様と平民が仲ようしてんの見せられたら、影響受けますよって」
そうかなぁ。
僕の特待生の知識は、伯爵に陞爵して説明受けただけの付け焼刃だって自覚できたことだし、まだまだ他にも有るんだろう。しっかり勉強しないとね。
本編に修正入れました。
テイラム君、毎日学園と王宮を馬車で往復してたって、時間的に無理ですよね。なので、学園近くに離宮を用意しました。これで辻褄合う筈です。
へんてこな関西弁もどき登場。商売人なら関西ってイメージ有りませんか。それと口調に特徴持たせると、キャラの書き分けが楽なんですよね(笑)
お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。そろそろ例の女子生徒を登場させようかな。




