レナード卿の時間割
あれあれあれ。取り巻き君、あっさり消えるかと思ったけど、準レギュラー入りしそうな……。
いつものことです。お冨の話は行き当たりばったりが基本ですから(笑)
今日はこれから会社の研修会に行ってきます。明日の更新はできるかどうか。
出来なかったらごめんなさい。
「私は国軍志望なのだ。出来れば騎士団に入団したいと思っている」
レナード卿のルシアン伯爵家は、武門の家なのだそうだ。当主の伯爵ご本人は副騎士団長としてタムルク王国へ出征中。
「領地経営は叔父上が代官として担っておられるのだが、私は事務仕事がとんと苦手で。本を読んでも眠くなるし、叔父上の補佐は無理だと自分で見切りを付けた。軍人になれば行政官に成らずに済む。あまり褒められた動機ではないと分かっているが、体を動かす方が性に合っている」
いきなりディープな話を淡々としてきたレナード卿に、何と返していいか一瞬戸惑った。
そこで空気を読まないのがライナーなんだよな。
「へえぇ。お貴族様も色々だって聞いたけど、ご当主様が領地経営しない家もあるんか、じゃなくて、あるんですね」
「我が家は武門故な。一般的な領地貴族は当主が行政を担い、あぶれた子弟を軍に入れることが多い。ランドール伯爵閣下も、元は子爵家三男で軍に入ったと聞いている。救国の英雄と呼ばれるまで立身出世できると、ランドール大将閣下は身をもって示された。彼の方に憧れて、国軍を目指す者が増えているそうだ」
オスカー義父さんを引き合いに出されて、ちょっと面映い。
「志願者が増えれば、狭き門になるは道理。なので、学園で優秀な成績を修めたい。適切なカリキュラムを組むのは立派な戦術だ」
そう言って、レナード卿は授業選択の資料をパンと押さえた。
「軍人になるには、必須の単位が有る。武術は上級まで、それも剣術、槍術、体術が最低条件。その上にいくつ上積みできるかが肝になる。領地軍や国軍でも治安維持を主任務にする隊ならばそれで良い。しかし、騎士団となればそれ以上、知識や教養が必須となる」
「流石です、レナード様」
取り巻き一号君が合いの手を入れて来た。なんだかな。
「この程度のこと、父上や兄上からの受け売りに過ぎない。どこが流石なのだ」
レナード卿が、心底不思議そうに聞き返した。
あれ、この二人、いつも一緒にいたってわけじゃないのかな。微妙に呼吸が合って無いというか。
「お二人、どういう関係なんです。君、名前は」
本来なら、レナード卿に紹介を頼むのが礼儀だが、ここは学園だからな。クラスメイト対応で問題ないはずだ。
「私はバーンスタイン男爵家長男、ルイ・バーンスタイン。ルシアン伯爵家の寄り子をさせていただいている。此度、レナード卿と同級生になる栄誉を賜り、我が父からくれぐれもお世話申し上げるようにと言いつかったのだ」
ああ、親からコネクション作って来いと言われたわけだ。それでやる気が空回っていると。
武門の家って聞いたけど、上も下も脳筋なのかね。
「私はお世話されるような齢ではない。卿の目にはそれほど頼りなく見えるのだろうか」
「い、いえ、とんでもございません。口が過ぎました。お傍に侍らせていただきたい一心でございます」
うわあ。大声。クラス中がこっち見てるよ。
「私に侍るなど不要」
取り巻き君の顔が曇った。
「クラスメイトとして、仲間になるのでは不足か。私は卿に友人になってもらいたい」
取り巻き君の顔がパァァァッと明るくなった。
レナード卿、貴族らしい人心掌握術だけど、意識してやってるわけじゃないんだろうなぁ。
ルイ・バーンスタイン、君はもうちょっと表情を隠そうか。そんなに素直だと、貴族社会じゃやってけないぞ。
脳筋という単語、世界観からずれていそうで、出すか出さないか迷ったんですけど、あまりにぴったりはまるので。
ちなみに一発変換できなくて、単語登録しました(笑)
取り巻き一号から取り巻き君、ルイ・バーンスタインと名前呼びに代わっていくのは、マーク君の心の距離が近付く過程を表しています。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。