入寮しました
二日連続投稿です。まだまだ序盤。
学生寮、貴族も平民も同じ規格です。なんとなくホテルのような(笑) 四畳半、風呂トイレ共用の昭和の木造アパートは流石にないだろうな。
誤字報告ありがとうございました。
貴族学園の敷地は余裕がたっぷりある。建物と建物の間は全て中庭仕様で、通路も広々。いっそ公園の中に施設が点在していると言った方が正しいかも。
学生寮はその中心に位置していて、どの施設へも行き易くなっている。逆に言うと、寮を経由しなければ遠回りになる建物が多い。そのため、寮周りの通路はいつでも人通りがある。
だけどね、女子寮と男子寮の間は芝生の広場になっていて、かなり離れているんだ。通路も共有していない。
女子生徒が男子寮への通路にいるって、偶然通りかかる可能性はゼロ、わざわざやって来たことになる。
「いったぁい」
僕にぶつかった女子生徒が、尻もちついてる。制服のリボンは三年生を表す青色だった。
僕は全然押されてない。そんな勢いはなかった。それでどうして倒れられるんだ。と言うか、何故すぐに立ち上がらないんだ。
不思議に思って見下ろしていると、周囲の足が止まって、ちょっとした渋滞が起きた。
「どうしたんだ」
声をかけてきたのは、後からきて足止めされた先輩方だった。全員襟に青のラインが入っている。
「また君か。今度はどんな用事が有って、男子寮に近付いたんだ」
「そんな言い方、酷いです。転んじゃったのに、助け起こしてくれないんですか」
それだけ元気な声が出せるなら、自分で起き上がれるだろうに。
先輩の一人がやれやれと頭を振って、僕らに声をかけてくれた。
「この場は私が預かろう。通行の邪魔になっている。入寮で忙しいだろう。ああ、それと。入学おめでとう。歓迎するよ」
これがミリアの言っていたイケメンなんだろうな。爽やかでスマート。頼りがいがありそう。
「ありがとうございます」
「これからよろしくお願いします」
「ありがとうございました」
周りの声に合わせて僕もお礼を言って、寮へと歩き始めた。
「ちょっと、待ちなさいよ、お話が……」
後ろでまだ騒いでいたけど、興味ない。
受付でもらった寮の部屋割り表によると、玄関を入ってすぐのホールから放射線状に棟が四つ突き出した造りになっている。
どの棟も規格は同じで、一階が共用部分、二階から上が二人部屋。四階建てで、とにかく横に長い。
部屋は学年ごとに色分けされていて、不規則に並んだモザイクタイルみたいだ。青と黄色の部屋は無地だけど、赤の部屋には番号が振ってあった。
部屋割り表の上に振ってある僕の番号はC-3-21。C棟の三階の二十一号室だ。両隣は青と赤。三年生と新入生ってことだろう。
「各自、自室へ入って。荷物がちゃんと届いているか確認して。足を止めないで。ドアの内側に注意事項が貼ってあるから。はいはい、そのまま進んで」
声を張り上げている先輩の襟のラインは黄色。二年生だ。言われるままにC棟に入って、階段を三階まで登る。廊下の両側にずらりと等間隔で並ぶドアは、部屋の広さを感じさせた。
「あ、おかえり。待ってたよ」
部屋に入ると、ライナーがいた。どうも部屋割りは受け付け順だったらしい。
広々としたワンルームで、可動式の仕切り壁付き。奥にベッドと机、チェストがセットで二組並んでいる。右側のチェストの前に、僕の荷物が積んであった。
「すっげぇなぁ、広いし綺麗だし、ベッドはフカフカで足はみ出さないし、自分だけの机と椅子あるし」
つまり、ライナーの家は狭くてベッドは足がはみ出してたんだな。机と椅子は共用だったと。
「もう、荷物は片付けたのか」
「ああ、下着だけだかんな。一分で終了。楽なもんよ」
ちょっと、それ、少なすぎないか。
「すげえよな。寮の一階の軽食コーナー、いつでも食べ放題。学食は校舎ごとにあって、朝五時から夜十時まで開いてるんだと。購買もあるって。それにほら、今日は歓迎会があるってさ」
ドアの内側の張り紙を指差して大はしゃぎするのは良いけど、食べること以外もちゃんと見ろよ。風呂とか、外出手続きとか、必要な事が書いてあるだろう。
こいつといると、退屈だけは無さそうだ。
これから始まる学園生活。ワクワクしてます。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。