ミリアちゃんは聖女様
予定通り、ミリアちやんの聖女あつかいについて書けました。話がそれなかったのは何時ぶりなんでしょう(笑)
「マーク兄様、お帰りなさい」
部屋に真っ直ぐ入って来たミリアが、僕に飛びついて来た。
いつものことだし、立ち上がって受け止める。でないとソファの上で押し倒されてしまうから。
「ただいまミリア。少しは慎みを持とうか。もうすぐ十三歳なんだから淑女にならないと。伯爵令嬢になったんだろ」
「えー、良いじゃない。ここは我が家なんだし、マーク兄様相手なんだし。堅っ苦しいのは王子様相手の時で充分よ」
「僕の友達の前なんだけど、考慮してもらえないかな」
抱き着いていたミリアがパッと離れた。
ギ、ギ、ギと音がしそうな動きで首を回して、向かいのソファに座っていたライナーとルシカ卿に目を合わせた。
しょっぱなから元気印なお子様バージョンを見せてしまったので、ミリアは取り繕う努力を完全に放棄したらしい。
「兄様の友達と側近候補の先輩なんでしょ。これから長い付き合いになるだろうし、いちいち気を使ってられないわ」
「親しき仲にも礼儀ありって言葉、知ってるか。すまん、ライナー、先輩。これが義妹のミリアです」
ミリアがにっこりと笑った。さっきまでとは違い、余所行きの笑顔だ。
「改めまして。ランドール伯爵家長女、ミリア・ランドールですわ。これからよろしくお願いいたします」
おお、決まった。やればできるじゃないか。
「マーク兄様の義理の妹で、血縁上の従妹になりますの。王家から聖女に認定されたために、色々有りまして。驚かないでいただけると助かりますわ」
そう、色々。我が家の上級使用人がみんな伯爵家出身だったり、ミリアのために王宮から近衛騎士が派遣されていたり。
「ミリアは準王族扱いなんだ。と言うか、国王陛下がミリアに敬語を使う関係なんだよ。あくまでミリア限定で、我が伯爵家は王家に忠誠を誓っている一家臣なんだけど」
バルトコル伯爵家やデイネルス侯爵家と姻戚でも、我がランドール家は普通の子爵家でいられた。
そこでオスカー義父さんが救国の英雄になって風向きが変わってきて、とどめがミリアで。
「元々子爵だったランドール家は、人手不足なんだ。伯爵家の体裁を大急ぎで整えているんだけど、公爵家と侯爵家の援助の申し出が凄いことになっていて。身代に見合わないのは重々承知の上で、受け入れるしかないのが現状なんだ」
それでも国王陛下の侍従長が我が家の家令に来るって聞いたときは、まさかと思ったよ。
「それぐらいの格が無いと、他の家を抑えられないからって。陛下直々の裁定だったんだ。断るわけには行かないだろ」
一事が万事、その調子。
戦場に出るオスカー父さんに代わって、ランドール伯爵領を取り仕切っている代官は元近衛騎士の公爵令息。それもご長男で、その気になればいつでも公爵家当主になれるときたもんだ。
伯爵家の代官を務めるような人じゃないだろ。今更だけどさ。
「マーク兄様、少し自重なさって。お二人、顔色がちょっと」
「良いよ、もう。ライナーはぶちまけ要員だし、ルシカ先輩は僕の側近候補だからいつか話すことになるだろうし。早めに心の準備が出来た方が良いと思う。何なら、今なら断ってもらっても次の就職先を探せる時間があるし」
言いつつ横目で見たら、二人が首をブンブンと横に振っていた。どういう意味、それ。
「ごめんなさい。兄様、ちよっと投げやりになってるだけだから。無体を働く人じゃないから、大丈夫。多分……」
ふうっと、一息ついた。
「仕切り直して、お茶にしようか。ミリアの分も頼もう。ミリア、アシスタント欲しいって言ってたろ。ライナーなら条件合うと思うんだ。どうかな」
ライナーがギョッとした。そんな顔しても逃がさないからな。
「ほんと!? 兄様、大好き」
だから、抱き着くんじゃない。慎みを持てって。
ミリアちゃんの聖女騒動に関しては、本編を参照してください。王家から見た裏話が色々と。
この話ではマーク君が知らないので、宇宙船は出てこない予定です。
うん。予定。予定通りに行くかどうかはお冨にも不明です。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。
次話は、ライナー君のアシスタント案件。そこまで終わらせたら学園へ戻れます。
まだ入学してから一週間経ってないんだぜ(;^_^A