不確実な未来
うわあ。会話文ばっかり。読みにくくて申し訳ございません。
王様の命令の詳細は、本編の第二章をお読みください。
今日、一乗谷朝倉氏遺跡博物館に行ってきました。去年開館したばかりで奇麗だし、充実した展示内容でした。
せっかく大河ドラマの麒麟が来るやブラタモリで取り上げられたのに、コロナ騒動で観光客誘致が不発に終わった無念を晴らせそう。
「僕はランドール伯爵家から離れます」
念を押すように言葉を重ねて、正面の先輩の目を見た。
「それは、どういう意味でしょうか。私はデイネルス女侯爵閣下より、マーク卿の側近の任を承りました。ランドール伯爵家への紹介ではございません」
背筋を伸ばした先輩は、初対面の時の貴族然とした微笑を浮かべている。
「あのさ、二人とも何にらみ合ってんの。先輩が卒業するまで後一年あるし、マークと俺は入学したばっかだし。慌てることは無いじゃん」
のほほんとしたライナーの横槍で、真面目な空気は霧散してしまった。
「とりあえずマークさ、どういうことか説明してくれねぇ。なぜ、どうするつもり、どうやってすんのか。でないと、先輩の判断材料にならないっしょ」
鋭いな、ライナー。さすがは奨学生か。
「ライナー君の言う通りです。いきなり失業の危機にしないでください」
うん、それは申し訳ないです。
「知っての通り、僕は養子なんだ。僕の実父は子爵家の後継者だった。父が亡くなった時点で、後継者は僕になった。ただ、僕は当時四歳。学園卒業まで、祖父が現役の子爵家当主として頑張る筈だったんだ」
そんな話になっているって、僕本人は分かっていなかったけどね。
「へぇー、でも、叔父さんが子爵になったんだよな。じゃ、マークのじーちゃんが亡くなったのか」
「いや、お爺様はまだまだお元気だよ」
「それって……」
「ライナー君が何を考えたか分かりますけれど、お家乗っ取りと言うわけではありませんよ。王命だったのです。救国の英雄の出世譚として有名な話です」
先輩の言葉に、ライナーがへにょりとした。
「俺、全然知らないけど。そんなに有名なんか」
「訂正させて頂きます。貴族と軍人、あとは王都で有名です」
先輩、フォローしてくれて有り難うございます。
「子爵家当主が軍人になると、自動的に佐官に任官する。少佐、中佐、大佐っていう、軍の階級だよ。佐官はとても高い階級で、隊長として軍事作戦の指揮が執れるんだ。オスカー義父さんは当時大尉だったから、国王陛下の命令を遂行するために少佐に昇進する必要があって、それでランドール子爵になったんだ」
「???」
「普通はね。子爵になると、少佐に昇進して隊長になれる。オスカー義父さんは、王様の命令で隊長にならなきゃならなくて、隊長になるには少佐にならなきゃいけない。少佐に昇進するために子爵になったんだ」
「あー、結果から逆算したってわけか。計算問題の答え合わせみたいなもんか」
ライナーが頷いてくれた。オスカー義父さんのせいじゃないって分かってもらえて一安心だ。
「その後、オスカー義父さんはどんどん出世して中将になった。佐官なら中位貴族だけど、将官は伯爵以上の高位貴族の階級だ。階級に爵位が釣り合わないから、ものすごく座りが悪い。伯爵に陞爵したのは、完全にオスカー義父さん個人の功績なんだ。僕はあくまで子爵家の後継者。伯爵家はオスカー義父さんの子供が継ぐべきだ」
伯爵に陞爵して伯爵領を賜った時、元々のランドール子爵領は飛び地として子爵位ごと安堵された。ランドール伯爵家の従属爵位ランデア子爵領と名を変え、隠居した元子爵の祖父がそのまま管理している。
「どう考えても僕がランデア子爵になるのが順当だし、そう言ってるんだけど、オスカー義父さんもニーナ義母さんも、僕がランドール家の跡取りだって、その一点張り」
なんであの二人、ああも頑固なんだろう。
「無理だよね、僕は高位貴族の教育なんて受けてないし、学園卒業したばかりの若造に伯爵位押し付けようなんて、何考えてるんだって怒るよね。僕は怒って良いよね」
よそでぶちまけるわけには行かないけど、この二人が相手なら構わないよな。
「僕は、絶対、伯爵家に残らない。二代目伯爵にはならないからな」
普通は家乗っ取りの危機なんですが。まあランドール家ですから(笑)
マーク君、ちょっとばかし切れました。ライナー君にぶちまける相手になって欲しいとリクエストしてた中身がこれ。
マーク君、明日はどっちだ。
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