表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/124

デイネルス女侯爵は女傑様

 今話は、テンポを優先しました。女侯爵とのやり取りはまだ続きます。

 伯爵に陞爵した半年前まで、ランドール家はありふれた子爵家だった。

 侯爵家と姻戚であるとか、軍人の当主が高位貴族以上のスピードで出世街道驀進中だとか、イレギュラーを抱えてはいたけど、家自体は普通の子爵だったんだ。


 当然、王都に屋敷なんて持っていない。用事がある時は王都の中位貴族向け(平民でも奮発すれば利用可能なクラス)のホテルを使用していたんだけど。


 ずっと絶縁していた母上の実家が接触してきたとか、王家を巻き込んだ義妹の騒動とか。

 まあ色々あって、貴族街に用意されたランドール伯爵邸へ引っ越すまで、しばらくデイネルス侯爵邸に居候していた。


「なので、ここは勝手知ったる他人の家みたいなもん。まあ、叔父さん()だから、他人じゃなくて親戚だけどね。とにかく規模が大きすぎて全部は無理だけど、西棟の来客用エリアなら迷子にならない程度に馴染んでいるんだ」

 高い天井と磨かれた床、幅の広い廊下は音が響きそうで、小声でこそこそと話す。


 案内のメイドさんに先導されて、僕の同伴者のライナーと、元々訪問予定だった先輩のルシカ・マクレーン子爵令息も一緒だ。


「えっと、ここは西棟、なんですか」

 ライナーも小声で返してきた。喋りにくいだろうけど、言葉遣い、頑張ってくれよ。


「いや、ここは本館。侯爵家の公務エリア。来客対応や仕事をする場所だよ。二階の奥には事務室とか執務室なんかが並んでるよ。多分、マクレーン子爵の待ってる応接室は一階だと思う」

 応接室は用途と相手の格に応じて複数あるからな。寄り子の子爵家でありふれた陳情なら、通常業務の範囲のはず。

 そう思ったんだけど、先導のメイドさんは並ぶドアを無視してどんどん奥へ進んで行く。


 階段を登ると、廊下が狭くなった。と言っても充分広い。床は絨毯になるし、素人目にも壁紙のグレードが上がったって解る。


「マーク卿、もしかして」

 先輩が言葉にしなくても、解答は目の前にあった。

 ドーンと重厚で装飾過多な扉。その両脇に控えた従僕。

 デイネルス女侯爵の執務室だった。


「楽にしてちょうだい。マイダーリンは今王宮なの。わたくしが代わりにお聞きするわ」

 相変わらずゴージャスで年齢不詳の美女ですね、リアーチェ叔母様。 




 叔母様の指示で、ライナーは別室へ案内された。奨学金について詳しい事務官が聞き取りをするためだ。


 これがデイネルス侯爵領内で起きた問題なら、叔母様の一存でどうとでもなる。そうではないから、いろいろと折衝が必要になる。

 ライナーの処遇が正式な物だったら、他領のやり方に文句を言うこっちが悪いことになるけど、誰が見てもそうは思えないお粗末さだ。


「まず間違いなく横領事件だけれど、誰がどの段階で横領したかが問題になるでしょうね。奨学金を出している当人に知らせて、処分を任せるのが順当ですけど」

 叔母様が迫力ある笑顔を見せた。


「場所が王立中央学園というのは見過ごせませんわね。どんな不祥事であろうと、王宮の管轄に出来ましてよ。せっかくマークちゃんが初めて頼って来たのですもの。お任せなさいな」

 叔母様、『マークちゃん』は勘弁してください。






 自分で持ち込んでおいてなんだけど、名前も知らない横領犯に同情してしまいそうだ。

 叔母様、少しは手加減してあげて下さいね。










 

 とりあえず、ライナー君の問題から。マクレーン先輩の話とあの女の話は、次回以降に持ち越しです。

 女侯爵、攻撃力が高すぎて、使いどころが難しいアイテムのような(笑) ちゃちな小悪党など、消し飛ぶ威力です。


 お星さまとブックマーク、お願いします。

 寒暖の差が激しい今日この頃、ご自愛くださいませ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] マークちゃんで良かったね「マ・ー・君」(笑)。
[一言] 中抜き横領して送り出した平民奨学生が侯爵の叔父さんを持つクラスメートと友人になって官憲を送ってくるなんて…
[良い点] マークちゃん(笑 [一言] やっておしまい。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ