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デイネルス侯爵邸に着きました

 にぎやかな馬車の旅も終点です。ライナー君にとっては、充分旅気分(笑)

 伯爵邸が並ぶ高級住宅街や平民街は、きちんと区画整理されている。遠くまで見通せる真っ直ぐな道が多い。

 対して、侯爵邸から先は不規則に並んだ屋敷に合わせて道が出来ている。隣の屋敷の塀に突き当たるのが基本だ。

 高い塀に沿って右へ左へ。あるいは斜めに。


「何か、迷路みたいなんだけど。道、分かってるよな」

「もちろん。分からなくても、馭者に任せておけば大丈夫だよ。警備兵だって巡回してるし。最終手段は屋敷の周りをひたすら歩けば門が有るから、門番に尋ねれば良い」

「門番!」


 ライナーの目がキラキラしている。

 そっか。そこに反応するのか。

 面白くて仕方がない。ついついライナーに構ってしまう。


「ここは、防衛のためにわざと迷路にしてあるんだ。城壁が無くてまだ平民街が畑だったころ、この辺は王城を護る砦を兼ねて造られたんだよ。そこらへんは歴史の授業で習う筈だから」

「へぇー」

「今でも有事の際の砦なんだ。建前上はね」

「建前上って」


 王都の中心部で広大な敷地を占有しているのも、高い塀で中を覗かせないのも。決して富と権力を誇示しているわけではないのだ。建前上は。


「いざとなったら、王都の住民の避難場所ってことになっている。そりゃ旧市街だけが王都だった頃の人口なら全員収容出来ただろうけどさ。当時の人口の何倍になってると思う。下手したら百倍行くんじゃないかな」

「そっかー。んでも、あれだけでっかい城壁が有るんだから大丈夫じゃねぇ。それに最後の砦って言うじゃん。在るだけで安心の元なら、役に立ってると思うぞ」


 ライナーはどこまでもポジティブだった。




 デイネルス侯爵邸の正門は、縦に延びた鉄棒の間から奥の庭園が(うかが)える造りだ。細かい装飾が施されていて、見ていて飽きない。

 デイネルス家の紋章を付けた馬車は、馭者が形式的な誰何(すいか)に応えただけで、すぐに門内へと通された。

 ライナーの視線は、門番のデイネルス領兵の制服に釘付けだ。


「一応言っておくよ。普通の馬車では、まず門前払いになる。しっかり門番に顔を向けて、僕の名前を出すこと。おどおどしないのがポイントだから。ライナーならそこは大丈夫だけどね」


「うんうん」

「ほら、ちゃんと聞いて。マーク・ランドール伯爵子息の紹介です。ほらほら、言ってみて」

「うん、え、」

「私はマーク・ランドール伯爵子息の紹介です。ほら、繰り返す」


 僕たちのやり取りに、先輩がクスクス笑っていた。

「学園の制服を着ていれば、話だけは聞いてもらえますよ。そこでマーク卿のお名前を出せば万全です。下手な貴族より確実に取り次いでもらえるでしょう」


 続いた先輩の言葉に、ライナーが硬直した。


「その代わり、何かあったら、全部マーク卿の責任になりますけどね。貴族社会はコネクションがモノを言います。学園の身分序列は将来的に影響しますから、考えて使うことをお勧めします」

 最後の一言は僕に向けてのものだった。


「もちろん、承知の上です。ライナーは悪用しないと信用している。それでも何か問題になるなら、友達として力になりたいと思ってます。多分、僕の方が迷惑かけることになると思うから、ここで逃がしたくないんですよ」

 僕はただの笑顔なのに、何で怯えた顔するんだ、ライナー。失礼な。


「やっぱり俺、友達選び間違えた、かも……」


 ライナーの声は、すぐに元の大きさに戻った。むしろ五月蠅(うるさ)いくらいだ。


「なぁなぁなぁ、あれが侯爵邸か。すっげぇ。あれ、王城じゃねぇの。すっげ、でっけぇ」






 ライナーの大はしゃぎは、馬車が正面玄関に乗り付けるまで続いた。


 確かに小国の王宮よりはでかいらしいけどな。

 公爵邸や王城はこの上行くから。ライナーの驚く顔が楽しみだ。







 

 ようやっとデイネルス邸に着きました。


 自家の馬車でなかったら、門で乗客の身元確認が行われます。今回はほぼ顔パス状態。

 ライナー君、メンタル強し。めげない元気印です。


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。

 明日はデイネルス侯爵夫妻に会えるかな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 「一見(いちげん)さんお断り」と同じですかね。 なんか問題を起こしたら紹介者にケツを持たせる。
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