パーティーしましょ
ミリアちゃんがいると、何故か斜め上に(笑)
僕らの訪問をあくまで非公式にしておきたい。しかしながら、ある程度の社交はこなしてもらいたい。
「虫の良い頼みだと分かっているが、最も穏便に済ませられそうなのでな」
トマーニケ帝国皇帝ターレン陛下に真摯に頭を下げられては、断り辛いことこの上ないじゃないですか。
「あの馬無し馬車の爆走が無ければ、秘匿できたのだが。さすがにデパ国からの来訪者があったことは隠しきれぬ」
ソウデスネ。
身から出た錆かぁ。
それから色々話して、本城ではなく王太子宮の庭先でガーデンパーティーを開くことになった。
あくまでも非公式、正式な招待状は無し。帝城に居合わせた者が、通りすがりに参加するという建前だ。
たまたま居合わせる理由作りのために、態々貴族会議を開催するという手の込みよう。面倒くさいったらないよね。
そこで変に張り切っちゃったのがミリア。
「バーベキューもいいけど、食べ放題のビュッフェがいいな。いろんな料理を用意して、休憩コーナーにはテーブルと椅子、ベンチかな。そうだ、調理実演コーナー並べて屋台村作ろうよ。ラーメンと焼き鳥、お好み焼きに唐揚げ屋さん。予算は帝国持ちなんだし」
学生なんだから学園祭のノリでいいよねって言われても、ガクエンサイって何。時々暴走する癖、ここで出さないで欲しいんだけど。
帝国だよ、ここ。
ちなみにミリアが口にした料理の数々は、公爵家の一つが張り切って全国展開しているファミレスとやらで提供されている。
レシピは天津神の神託という形で王家へ伝えられたものだ。
そもそも聖女様の本業は神託を受けることだったっけ。忘れがちだけど。
それから四日。帝城の料理人と工兵部隊を巻き込んで、ミリアの言う屋台村が完成した。
ラインハルト君もノリノリで参加してたけど、わざわざ里帰りしたのに良かったのかな。皇子様の用事とかなかったの。
「元々帰省の予定はなかったし、下手に離宮から離れると面倒なことになる。それに、ミリア嬢のアイデアはとても面白い。無償で知識を伝授いただいて、有難い限りだ」
ラインハルト君が良いなら良いけどさ。
かくして、格式とか様式美なんて言葉とは無縁の、非公式ガーデンパーティーが開催されることになった。
「これはこれは、ご尊顔を拝し、光栄にございます」
また一人、キンキラした格好の貴族が近づいてきた。
今日は公式行事じゃないから皇太子殿下呼びは禁止だそうで、当主だろうオジサンたちは、皇族相手にしてはかなりフランクに挨拶してくる。
僕はガン無視されてる。下手に僕らに関わりたくないんだろう。半分はこのパターンだな。
後の半分は僕らに興味を示すけど、直接話し掛けてはこない。ラインハルト君かそのお付きの人たち相手に、僕らを話題にしてる。
まあ、僕とミリアは学園の制服姿だからね。
見た目はちょっと裕福な平民の服装に見える。シンプルですっきりしていると言うか、宝石やレースが使われてないからキラキラしてないんだ。
平民が背伸びしてこの場に居ると思ってるんだろう。わざとそう誤認させているわけだけど。トマーニケ帝国でなら絶対平民扱いされる格好だと、ラインハルト君のお墨付きだ。
デパ国内なら王立中央高等学園は貴族学園として知られている。そこの制服を着ていれば、たとえ平民であっても貴族の子弟として扱われるのが不文律だ。
それを知識として知っている貴族が居るかどうか。今日の僕たちは使える臣下を篩にかける試金石なんだ。
「今日はデパ国の面白い食事を用意してある。気楽に楽しむが良い」
ラインハルト君、ずっと同じ台詞くり返してるけど、側近候補募集するんじゃなかったっけ。お眼鏡にかなう貴族家は無いのかな。
王太子宮の入り口がひときわ賑やかになった。目を向けたら、僕らと同年代の若者が固まってる。
女の子はヒラヒラのドレス姿だ。どの顔も緊張と意気込みを浮かべてた。
「いよいよ本番か」
ラインハルト君がボソリとつぶやいた。
庶民のB級グルメが祭りの縁日みたいに並びました。帝国に受け入れられるかな。
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