ホームレス
久々の更新となりました。体調不良と年度末の繁忙期と地区の行事が続きました。お待たせしてごめんなさい。
今回から新章開始です。
前期のテストが終わって、受けてた上級の講座、全部合格点取れました。
良かった~。これで卒業に必要な単位そろった。後は消化試合、気楽だ~。
そう、気楽なんだ。学業に限ってだけど。
後期の授業が始まるまで、学園は長期休暇に入る。期間は二か月。七週と一日で、びったり五十日だ。
その期間、学生寮は閉鎖になる。
デルスパニア王立中央高等学園は、貴族学園と言う通称通り、貴族専用の場所だった。
伯爵以上の高位貴族は王都に屋敷がある。王都近辺の中位貴族や下位貴族は実家に帰れる。遠方の者は、寄り親の高位貴族を頼れば良かった。
平民が入学できるようになってからも、不都合はなかった。奨学金を出してくれるパトロンが面倒を見てくれたからだ。
それが変わったのは、去年から始まった学園改革の影響だ。
授業料の後払いが認められたおかげで、奨学金の無い平民でも入学できるようになった。
学生寮に入っていれば、食事は無料、洗濯も任せっきりだし、大浴場が使い放題。着たきり雀で良ければ、学園の制服だけで過ごすことも可能。
入学当初のライナーみたいに、生活費ゼロでもなんとかなるんだ。
その頼みの綱の学生寮が閉まってしまったら。
ちゃんと対策してた人は良いけど、ホームレスが大量に出てしまったのは学園としても誤算だった。
去年、男子寮の自治会長してた僕は、対策に奔走する羽目になった。
義妹のミリアが、インターンシップという神代古語を持ち出してくれなかったらどうなっていたことか。
住み込みの見習い仕事を王城や騎士団で斡旋してもらえたのは、聖女様のネームバリューあってこそだった。本当に助かったよ。
今年度は、予めインターンシップ先を募集しておいた。高位貴族からも応募があって、選り取り見取りだ。あぶれる者は出ないだろう。
そう安心してたんだけどね。
「なんで皇子様がホームレスになるんですか。ちゃんと入学要綱に説明文、載ってましたよね」
「そう言われても。急に決まったことで慌ただしかったし、全てがお膳立てされていて私は直接かかわらなかったし」
あああ、そうだね。皇子様なら、ぜぇーんぶ部下任せになるよね。自分で荷造りなんてしたら、その方が変だよね。
ラインハルト君はトマーニケ帝国の皇太子だ。一生徒扱いするのは、あくまで学園内でだけ。
下手なところへ出して住み込みで働かせるわけには行かない。
荷物置き場になってる離宮へ行ってもらうか。それとも王宮に賓客として招いてもらうか。
どちらにしても、僕の手には余る。学園長に対策してもらわなきゃだけど、とりあえず今夜の宿を何とかしないと。
家に泊めるか。でも、一伯爵家が帝国皇太子と特別な関係もつのは、外交的にどうなんだ。今更かもだけどさ。
そこまで考えて、ピンと閃いた。
格好の相談相手が居るじゃないか。
聖女の護衛している近衛騎士。正真正銘、国王陛下の側近の皆様だ。ラインハルト君を丸投げできる!
「あら、だったら、ハルト君も里帰りすれば良いじゃない」
義妹のミリアがあっけらかんと言った。いやいやいや、そうじゃないよ。
「休暇は二月なんだよ。片道だけでそれ以上かかるんだから、どう考えたって無理だよ」
僕の主張は常識に沿っている。ごく当たり前で、現実的で、合理的な意見だ。そうだよね。
それを蹴飛ばすのが聖女様の非常識なんだけどさ。
「キャンピングカーモドキ使えば往復できるでしょ。バルトコル伯爵領まで三日で行けたんだし。マイヅルから船に乗ってけばもっと時短できると思うし。カーフェリーみたいにキャンピングカーモドキごと乗り込んじゃえば良いんじゃない。スマホモドキ………軍の連絡手段使えば、船、用意して待っててもらえるよ」
また知らない神代古語を。カーフェリ何とかって何さ。スマホなんとかも軍の機密じゃないのか。勝手に使ったら怒られるだろ。
キャンピングカーモドキ、確かにあれは桁違いに速かったけど、あれ、国外に出して良いものなのか。
こんな時、ストッパーになって下さいますよね、近衛騎士の皆様。国王陛下の側近は伊達じゃないですよね。
「早速、手筈を整えます。聖女様の御心のままに」
駄目だ、こりゃ。
近衛騎士、聖女様には盲目的に従います。理由は本編を読んでいただければ(笑)
最後の決め台詞、年配の方なら懐かしいと思っていただけるでしょう。昭和は遠くなりました。
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