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エバンス商会の危機

 またやってしまった。

 保存し忘れていて、書き上げた話が全部消えてしまいました。前は一部だけだったのに、丸々一話はダメージがデカかったです( ノД`)シクシク…

「ならば良い、と言いたいところだが。実は、エバンス商会に対して、足を掬おうと画策する動きがあるのだ。叔父上(皇帝)としても苦慮される事態でな」

「ほう、なるほど。これはお話を聞かなあきまへんな」


 字面(じづら)だけだと、老練な大人同士みたいだけど、十五歳の少年と友人のコーカイじゃ、芝居の稽古にしか見えないんだけど。

 もしかしてエバンス商会の危機なの。




 全ての切っ掛けは、トマーニケ帝国とデルスパニア王国の戦争だった。


 非公式ながらバルトコル伯爵家の庇護下にあったエバンス商会は、両国の交易停止により壊滅的な打撃を受けた。

 借金して揃えた交易用の大型幌馬車は無用の長物となり、負債だけが残った。

 もともと行商人上がり、交易が無ければただの弱小商会だ、満足な伝手がほとんどない。

 幌馬車を売り払って返済の足しにしようにも、買い手を見つけられなかった。

 

 倒産の危機を救ったのは。跡取り息子のカールが仕掛けたダメ元の飛び込み営業だった。

 相手は、帝国の第三皇子、ターレン・エル・ファング・トマーニケ。

 貴族の紐が付いていない使える商会を探していた第三皇子と、商売相手を探していたエバンス商会。

 需要と供給の見事な一致だった。


 第三皇子は、側室腹の末子(まっし)。歳の離れた二人の兄とは違い、ろくな後ろ盾がなかった。

 帝室の権力争いと一線を引くと言えば聞こえは良いが、実際の所は、全く相手にされなかっただけのこと。

 贔屓にする商会は無く、貴族の取り巻きもいない。

 なのに戦場へ送り出されてしまった。


 戦況は劣勢、既に敗戦は必至で、指揮官は責任を取らされる未来しかない。

 皇族の義務だとか、経歴の箔付けだとか言われたが、要は権力争いの余波で貧乏くじを引かされたと言う事だ。 


 敗戦と内乱一歩手前の権力闘争、いや、皇太子の未亡人と第二皇子が亡くなっているのだから立派な内乱だろう。

 その二つのドサクサの中で、エバンス商会はガッチリと帝国中枢に食い込んだ。第三皇子が皇帝に即位するころには、押しも押されもしない政商に成り上がっていた。




「神の恩寵の運河で交易が始まるのは、知っていよう」

 ああ、海峡の正式名称か。使う人、久しぶりに見たな。


「そりゃもう、(ウチ)の家業でっさかい」

 うんうん。コーカイの家は商会だし、デルスパニアの玄関口になる港はランドール伯爵領だし、そもそも神の恩寵を(たまわ)ったのは聖女ミリア・ランドールだからね。

 僕ら、どっぶり当事者だね。


「エバンス商会は山越えの街道でバルトコル伯爵領との交易を盛んに行っていた。此度(こたび)は海路。エバンス商会が乗りだせば独占されてしまうと、危惧する声が大きい」


「えーと、聞いて良いですか」

 隣に座ってたライナーが手を挙げた。ラインハルト君が目を合わせて頷いた。


「なんでエバンス商会が独占するって話になるんですか。他にもいっぱい商会あるんじゃないですか」


 ラインハルト君が息をついた。


「我が国は内乱の後、国内勢力図が一変した。多くの有力貴族が没落し、それらが囲っていた商人もまた没落した。今現在、エバンス商会が一強状態なのだ。先日、商会長がランドール伯爵に目通りし、交易の便宜を約束されたと噂が出回った」


 あ。あの面会か。


「そして、デパ国から正式に通達が来た。商会の前会長夫人の相続権剥奪の通告だ。バルトコル伯爵家との意外なつながりは物議を(かも)したが、ランドール伯爵家と親族となれば、独占契約が現実味を帯びてくる。どちらにしても、エバンス商会の一強状態は帝国として看過できぬ。国家経済の安定に関わる故な」




 あの。これって学園のガゼボで話す内容なのかな。

 僕らは学生だよ。帝国経済の安定なんて、大人に任せとく訳には行かないのかな。


 はははは、はぁ。








 コーカイ君の話だと思っていたら、マーク君を直撃してきました。

 しかも、全部事実だから質が悪い。

 沈黙を守るミリアちゃん、その静かさが怖いです。何しろ王様を顎で使う国家最高権力少女ですから。


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。


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― 新着の感想 ―
貴族と組んで無い商家で真っ当なのが無いのが痛いわな 一強になるほど他にまともな商家が無いって事だし 没落したとはいえ廃業まで行って無いのを 国主導で貿易出来る程度に立て直し&助力とか出来んかったん?
べつに独占したいわけじゃないだろうが たぶん伝手のあるなしにかかわらず 同等の仕事を任せられる商会が無いのがいけないのでは
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