コーカイ君の主張
うーん、ついつい薀蓄に走ってしまった。いつものお冨でございます(笑)
「エバンス商会はどこの貴族ともつながっていない貴重な存在。叔父上が皇帝として頼りに出来たのは僥倖である」
ラインハルト君の口調は皇子様仕様だ。別に偉ぶってるわけじゃない。これがラインハルト君の普通なんだ。
学園では様々な身分と立場の生徒が居る。どんな口調を使うかは個人の自由と認められている。
故意に無礼を働くのは論外だが、それが自分の普段のしゃべり方なら問題にされない。
その昔、学園に身分差別を持ち込んだ阿呆がいた。
平民の言葉使いが無礼だと、真面にしゃべれないなら口を開くな、顔を見せるなと学業の邪魔をした。
当時は、学園は貴族しか通えない場所だった。例外的に認められた平民は特待生だけ。
特待生は勉学の権利を絶対的に認められている。それを邪魔するのは国家に逆らう叛逆行為。
表沙汰になればお家取り潰しになりかねないと諭されて、いじめをしていた貴族たちは震え上がった。
ただし、問題は学園内でのこと。生徒を指導するのは学園の責務。表沙汰にしない代わりの教育的指導が行われたが、その内容が変わっていた。
『半年間、平民の口調で話すべし。話し方は平民に教えてもらうこと。また、平民に貴族の言葉使いを教えること』
渋々実行した貴族子弟たちは、その難しさに驚愕した。
いちいち頭の中で言葉を選ばなければ、平民のしゃべり方にならない。少しでも気を抜けば貴族言葉になってしまう。
思うように話せないのはじれったくて、ストレスが溜まる。頭を余計に働かせ続けた分、勉学にも影響が出る。
貴族が平民の言葉使いをするだけでこれだけ難しいのだ。平民が貴族相手に話す時はさらに礼儀作法が加わる。
自分にとって当たり前のことでも、育ちが違えばできなくて当たり前。なぜできないのかと責めるのは間違っている。
身をもって理解した生徒たちは、口調の自由を認めるという学園の方針に賛同し、やがて伝統になったという。
「ただし、その陰にデパ国があるとなっては、見過ごせぬ」
おっと、よそ事を考えている場合じゃなかった。
「そない言われましてもなぁ。エバンス商会は祖父様が一代で作った店でっせ。元々一人でデパ国に行商してたのが始まりちゅうのは、ご存じでしたやろ。戦争のあおり受けて、デパ国との交易がダメになって、トマーニケ帝国内で頑張るしかなかっただけですわ」
コーカイ、わざと惚けてるんだろうけど、ラインハルト君は僕らが従兄弟だって知ってるよ。
「帝室御用達になった段階で、そこらへんは調べてはったはずでっしゃろ。祖母様がデパ国出身やぁて、分かってて認めはったのに、今さら何ゆうてんねん」
わあ、突っぱねた。
学園内だから良いけど、相手は将来の皇帝陛下だよ。少しは忖度しないと拙くないか。
「ゆうときますけどな、バルトコル伯爵家とは、遠に縁切り済みです。相続権かて、正式に剥奪済みですわ。デパ国は仕事早いわ。まぁ、後を継がせろゆうたかて、肝心の伯爵家は断絶してまっせ。騒いだかて、後の祭りや」
どうした、コーカイ。いつになく喧嘩腰じゃないか。何かあったのか。
「ではなぜエバンス商会は、そなたの父をサウザンド商会へ婿に出したのだ。デパ国との繋がりを欲したのではないのか」
「あんなぁ、皇子様、親父がデパ国で結婚したんは、トマーニケ帝国と戦争するよりずうーっと前でっせ。まだ伯父さんが祖父様の跡を継いどらんかった頃や。それぜーんぶ分かった上で伯父さんを取り立てはったんでっしゃろ。今更、切り捨てる理由にするんなら、調査不足やった自分らが悪いと認められはるんやな」
えっと。エバンス商会が没落の危機にあるってことなのか。
ちょっと他人事じゃないんだけど。
コーカイ、それにラインハルト君、落ち着いて説明してくれないか。
喧嘩腰のコーカイ君、何か腹に据えかねているようで。ラインハルト君も思惑ありそうな。
二人とも何に拘っているのか、これから考察します。
キャラが勝手に動き出しました。とっても面白くなるはず。収拾がつきさえすれば、という条件付きですが(;^_^A。
こじつけと辻褄合わせ、頑張ります。
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