私の皇子様
今年の正月特番、完結しました。タイトル上のシリーズから飛んでください。
感想、誤字報告、いつもありがとうございます。
こんにちは、ミリア・ランドールです。日本で生きた前世の記憶を持ってます。
貴族学園、正式名称デルスパニア王立中央高等学園に入学して早一か月。だいぶ慣れてきました。
校舎と校舎の間には、もれなく立派な中庭があります。と言うか、公園の中に校舎が点在してるって感じです。
元々は離宮の庭園だった森林公園の一画が、学園の敷地に充てられていると教わりました。
なるほどーって納得しちゃいました。
そんな中庭の一つで、ガゼボっていうんですか、すっごくこじゃれた東屋に来ています。
私の隣に座っているのは、トマーニケ帝国からの初の留学生で、何と皇太子殿下です。
転生者の私は成り上がり貴族でおまけに聖女様。そこに隣国の王太子殿下って、まるで乙女ゲームだと思いませんか。
もうテンション駄々下がり。どこにどんな落とし穴があるか。
貴族令嬢の澄ました言葉遣いなんてやってらんないわ、コンチクショー。
昼休憩の後に、クラスミーティングって言うのがあるの。これホームルームだって、すぐ分かっちゃった。
そこで先生からの連絡事項に、皇子様のことがあったの。
トマーニケ帝国では、皇族の名前は公然の秘密なんだって。正式に名を与えられるまでは知らない振りをしなきゃいけないの。
名前を教えてもらったら直答を許されるようになるけど、名前を口にする権利はまた別。本当に特別な権利で、それが無いのに名前呼びしたら不敬罪に当たるとか何とか。
ただし、ここは学園。王族だろうが何だろうが、身分より生徒と言う立場が優先される場所なわけで。
でもねぇ。
自国の王子様なら名前呼びでちっとも構わないけど、相手はトマーニケ帝国だよ。外交儀礼と言うか、ある程度の配慮は要るんだよねぇ。
生徒の立場だから殿下呼びは無し。対等な立場で話しかけて全然オッケー。でもそれ以上帝国の不敬罪を犯すのは避けたい。
そんな諸々を加味して、ニックネーム呼びに決まったんだって。
でも、元々の名前は非公開だから名前をもじれないでしょ。
で、誰が言い出したのか、皇子様呼びになってた。
皇太子殿下のお父君は即位前に亡くなったから、皇帝の子にはなれなかったんだって。
厳密には先帝の孫で現皇帝の甥。
皇族の子と言う意味で皇子呼びは間違いではないけれどという、ギリギリの線を狙ったんだとか。
先生は、そこら辺のことを頭の片隅に入れておけって。直接名を許されるまでは、知ってても決して口にしちゃいけないって念押ししてた。
私? 新入生の中じゃ一番初めに名を許されたんじゃないかな。だって聖女だもの。
その名もラインハルト・ゲオルグ・ウィリアム・カスパーニ・ジョゼフ・ジャン・ボナパルト・トマーニケ。
目茶苦茶長い。それに直接呼ぶのは駄目だからニックネームが必要。名を許されてるんだから皆とは別のやつにしてって言われちゃった。
もう、面倒だからハルト君呼びしてるよ。前世の知り合いにも居たからね、大翔君。
今、目の前に居るのは、去年の男子寮の自治会長。私のマーク兄様です。私も皇子様も自治会に入ったので、そのつながりでガゼボに呼び出されました。
別に学食でも良かったんですけどね。ちょっと人目を気にする話があるとかで。
ええ、ええ、私はカモフラージュなんですね。自治会って言うのも口実なんですね。
だって自治会の話なら、ライナーさんやコーカイさんが同席する必要は無いでしょう。
「初めまして、だな。エバンス商会会長の甥にして、マーク・ランドール伯爵令息の従兄弟殿」
え、ハルト君、コーカイさんに用事だったの。
予定では、皇子様とコーカイ君の丁々発止を書くはずだったんですけど、そこまで辿り着けませんでした。
うん、いつものことです(笑)
乙女ゲームのシチュエーションでテンション上がらないところがお冨流。
ミリアちゃん、前世では何歳だったんだろう(笑)
エピローグの卒業式まで後一年、頑張ります。気長にお付き合いいただければ幸いです。
お星さまとブックマーク、よろしくお願いいたします。