お世話係
祝、百話達成。これも読んで下さる皆様のお陰です。ありがとうございます。
感想、力になってます。なかなかお返事できなくて申し訳ないです。
完結目指して頑張ります。
貴族学園の伝統で、寮の自治会長は二年生の身分序列一位の者が務めることになっている。
三年になった前年の自治会長は、新入生の身分序列一位の者、つまりは翌年の会長候補を自治会にスカウトしてから引退するのが慣例だ。
入学したばかりの僕が第二王子殿下に呼び出されたのは、二年前だった。
殿下は身分序列ぶっちぎりの一位。
僕は家が子爵から伯爵に陞爵したばかりで、不本意ながらの身分序列一位。ずいぶん居心地の悪い思いをしたものだ。
で、だ。
今年は僕がスカウトする立場になったんだけど、新入生の身分序列がややこしいことになっている。
女子は義妹のミリア・ランドールで確定済み。もともと我が家は伯爵家筆頭だし、ミリアは聖女様だし。
公式の場では、国王陛下が頭を下げられるんだ。学園どころか国内で序列一位だよ。
冗談みたいだけど、これ、現実なんだよな。
男子は伯爵令息に任せる予定だったんだ。だけど、そこに留学生が加わった。
学園史上初めての留学生は、隣国トマーニケ帝国の皇子様。それも皇太子殿下。
身分序列に組み入れるなら、来年の自治会長ってことになる。
他国の者は対象外に出来なくもない。今回の決定が前例になるから慎重に対処しないといけないわけで。
へたすりゃ外交問題になりかねないんだけどな。学生の僕に任せないで欲しいんだけどな。はぁ。
とにもかくにも、本人を知っとくべきだろう。スカウトするかどうかは別にして、一度呼び出すことにした。
まあ、寮の自治会に入ってもらえるなら、僕が皇子様の案内役を務める隠れ蓑に丁度いいしね。
現在皇子殿下は、我が国の王太子殿下が使用していた寮室に入っていらっしゃる。
同室者は無し。特別扱いというより、一生徒には負担が大きすぎて気の毒だからという理由が大きい。
王太子殿下と違って、側近候補を連れて来てないからね。皇子様は。
個室として使用していて、空いたスペースに多めの荷物を持ち込んでいるけど、あの大荷物が入りきる筈がない。
離宮の使用許可が下りて、本当に良かったよ。
「隣国との親善を深め、私の見識を養う。それが表向きの理由だ。本当の所は、暗殺の恐れがあるから避難してきた」
学生食堂の奥のテーブルで夕食をつつきながら、皇子様は優雅に宣った。
「実のところ、派閥争いが激しくてね。私が居なくなれば少しは沈静化するんじゃないかと、まあ、強制的に冷却期間を設けた。ギリギリまで情報を抑えておいたから、私が出国したことは知られていない。後追いで留学してくる者が現れるのは、早くて来年になるだろう」
流石は一国の皇子というか、僕より二歳下なのに、ずいぶん大人びた話し方をする。
「マーク卿には、迷惑をかけた。あの四人は別々の派閥に属している。互いに張り合って引っ込みが付かなくなった結果があの醜態だ。弱腰と受け止められれば、他の派閥から責められると思ってのこと。バカバカしいが、本人たちは真剣だ。それだけに始末が悪い」
大変なんですねって、他人事にしておけたら良かったのにな。
「どう取り繕ったところで、トマーニケ帝国がデルスパニア王国に敗戦したのは現然たる事実。それを否定しようと必要以上に特別待遇を求めた訳だ。何が皇子に相応しい待遇だ。私の立場が悪くなるだけならば構わぬが、帝国の悪印象を撒き散らすなど到底容認できぬ」
皇子様はお怒りです。
「私は留学して来たのだ。この学園の生徒になるのが目的。聞けばデルスパニア王国では王族も男子寮を利用するとか。であれば、私が男子寮に入ることに不都合などある筈がない。それを邪魔するなど不敬の極みと、怒鳴りつけておいた。身分を笠に着る者ばかりゆえな、こちらが身分を笠に抑えつければ面白いほど従う。不満は溜まるが」
あー、さすが皇族と言いますか、そこらへんは容赦無いんですね。
「実のところ、マーク卿に世話役を頼めないかと打診するよう、皇帝陛下に頼んだのは私なのだ。デルスパニア国王陛下宛の留学依頼の親書に書き加えていただいた。叶えていただいて、嬉しく思っている。これからも世話になるが、良しなに」
へっ。何で名指し。
それって、僕が聖女様の義兄だからですか。
次話は、皇子様が何故マーク君を名指ししたかです。
皇子様の個性を出せたら良いな。
ところで名前、何にしよう。ズラズラッと長ーい名前にしようかな。これから考えますが、お冨のネーミングセンスは何とも(笑)
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