私を思って
1日目 6月19日 日曜日
なんか小説書こう。
2日目 6月20日 月曜日
完成。
「ねえ、なんか私に言うことない?」
高校からの帰り道。
幼なじみの先風心音は僕に言う。
「え?、ないけど」
「今日もないんだ…、全く…」
そうやって飽きられても、心音には本当に何も言うことはないんだけど。
心音とは幼稚園からの同級生兼幼なじみなのだが、中学2年の時にいきなり彼女から、
「何か言うことない?」
と聞かれるようになった。1度だけかと思っていたら、その翌日も、さらに次の日も、そうやって高校生になった今まで言われ続けているのだ。
「そういう心音は、なんか僕に言って欲しいことでもあるの?」
「え!?、いや、別に…?」
「…はあ…お前って時々謎なとこあるよな?」
「何それ、バカにしてるの?」
「してない」
僕の否定に対して「じゃあ、褒めてるって事にしておくよ」と心音ははにかみながら言った。はにかむ要素がここまでどこにあったんだと突っ込みたくなる。
「いやー、君は本当に何も言うことがないんだねー、そっかー、大事な用があるのにねー」
「あのな心音、大事なら遠慮せず言っていいんだけど」
「自分で考えてみなさい!」
そう言うと心音は拗ねてそっぽを向いた。はにかんだり拗ねたり忙しいな、お前。
さておき、心音が拗ねてしまったので、僕は心音をこのままのモードにはしたくないと大事な用とやらを考え始める。八つ当たりされてジュースを奢るはめになるのは何としても避けたいのだ。金もないし。
「あ!」
「何、どうしたの?」
「大事な用事、分かったかもしれない!」
「へえ!、教えて!」
喜ぶ心音に僕は教えてあげた。
「勉強、教えて欲しいんだろ?」
「違うわ!」
思いっきり否定された。
「なんで分からないかな…、とりあえず勉強は教えてもらいたいけど」
「一応教えてもらいたいんだな」
「でも大事な用じゃないからね、次!」
そう言うと心音は再びそっぽを向いた。まだ考えろと言うのか、手強い。
とはいえ、もう1度考え直してみる。
んー。
「あ!」
「分かった?」
「遊園地だろ?、前に行きたいって言ってたけどテスト期間で行けなかった!」
「違うわ!」
また思いっきり否定された。これも違うのか…?
「なんでそんな鈍いのかな…、まあ遊園地には行きたいけど」
「一応行きたいんだな」
「当たり前でしょ!、テスト期間で親に行くなって言われた時枕が涙でぐちゃぐちゃになったんだから!」
「そんな楽しみだったのか…?」
「あ…ああ…やあ、にゃんでもない!」
僕の指摘に心音は一瞬猫語を話しながら目を背けた。そんな恥ずかしがることなのか…?
「早く!、次!」
「まだ考えないといけないの…?」
「当たり前じゃん!」
さらに考え直す。
んー。
んん?
「あ!」
「今度こそ!」
「誕生日プレゼント、渡してなかったな!」
「早く渡せええええ!」
キレられた。
「私の誕生日は1ヶ月も前だぞおおおお!、きっさまああああああああ!」
「うわ!、ごめんって!、お金がなかったんだってば!」
「どうせ他の女に貢いだんでしょ!」
「貢いだって何だよ!、つーか他の女ってどういうことだよ!、俺は心音の彼氏なんかじゃないでしょ!」
「え…まあ…そうだよね」
何故かヘコむ心音。え…、そんな落ち込むことだったか?
「悪い、分からん」
「そんな清々しく言われても、怒ってるからね私」
「怒ってるなら言えばいいじゃん…」
「だーめ、自分で考えなさい!、ほら、家着いたよ!、バイバイさようなら!」
「あ、ちょっと待っ…!」
心音は僕の制止も聞かずに走り出し、2軒隣の彼女の家に入ってしまった。
はあ…何だろうな?
僕はそれから1日中、『大事な用事』を考えるのだった。
「おはよ!、じゃあ行こっか」
「…うん」
「どうしたの?、寝不足?」
「あ…うん、ちょっと考え事しててさ」
あの後、大事な用事が何か寝ずに考えてたなんて言えない…。
そんな僕を他所に心音は「次移動教室でしょ?、早く移動しよ?」なんて言ってくる。
眠たさを我慢して、僕は心音の後についていくと、心音がわざわざ僕の隣に来た。
「なんで隣に来るんだよ」
「歩きたかったから、悪い?」
「別に…」
「あ、そう言えばさ、今週の日曜日って、母の日じゃん?」
「そうだっけ?」
「母の日くらいちゃんと覚えときなさいよ、ほら」
心音に見せられた手帳のカレンダーには、確かに今週の日曜日は母の日と書かれていた。
「暇でしょ?、私、プレゼント選ぶからアンタにも付き合って欲しいんだよね」
「え?、なんで僕が行かなくちゃ…?」
「もう決定事項だから!」
そう言って心音は昨日のように拗ねるのだった。まだ機嫌悪いんだ…。
結局。
『大事な用事』が分からないまま、日曜日を迎えてしまった。
心音が僕の家に迎えに行くそうなので、僕は準備を済ませてスマホをいじっていると、
『ピンポーン』
と、インターホンが鳴った。その主はもちろん。
「おはよ、じゃあ、行こっか」
心音である。というか、青いワンピースなんて持ってたっけお前。
「最近買った、どう?」
「どうって言われても…まあ、似合ってるよ」
「っ、ありがと…」
僕の言葉に少々顔を赤くする心音。恥ずかしいなら聞かなくてもいい気がするのだが…。
「プレゼントは何買う予定?」
「無難な花かなって思ってるけど」
「花ならカーネーションだな、僕、この買い物に必要ない気がするんだけど」
「あーら、女の子を1人っきりで買い物させる気なの?」
「しませんって、冗談です」
そんなことを話しながら歩いていると、花屋さんが見えてくる。
「さっさとカーネーションを買って帰るぞ、暑いし」
「ええ?、カーネーションじゃ無難すぎない?」
花の時点で凄く無難なんだよ。
「じゃあ花選びでもするのか?」
「うーん、面倒だからカーネーションで」
知ってたよ。
僕はカーネーションを取ると、心音に渡した。彼女は自分のカバンを漁っていたが、急に「あれ?」と首をかしげた。
「財布がない」
「はあ?」
「家に置いちゃったのかな?」
「家に取りに行くか?」
「…お金貸してくれればいいだけじゃん」
「僕はATM役で呼ばれたのかよ!」
とはいえ、仕方ない。彼女に1000円札を渡す。
「ありがと…」
「返せよちゃんと」
「はいはい、分かったから」
お金が帰ってくるとは思わないが、彼女を助けられただけで満足だ。1分ほどして心音は会計を終えた。
「って、なんでカーネーション以外にも花買ってるんだ?」
「はい、これお礼」
「え?、僕に?」
「お金、貸してくれたし」
ならそんな僕のプレゼントなんて買わずにお金を渡して欲しいんだけど、という言葉をすんでのところで止め、僕はその花を受け取る。
「ありがとう、大事にするよ」
「枯らさないでよね、毎日見にくるから」
「はいはい…、ところで、この花ってなんて名前?」
「パンジー、名前くらいは聞いた事あるでしょ?」
「あるけど、なんでパンジーなんだ?、送るならもっと綺麗な奴でもいいんじゃないのか?」
「パンジー、綺麗じゃないの?」
「いや、そんなことはないけどさ…、なんか、贈り物にしてはシンプルな感じがするんだよね」
心音から送られたパンジーは白色の花びらをつけた質素なものである。贈り物だったらもっと派手な花でもいい気がする。
「私が良いと思ったらそれでいいの!、じゃあね!、今日は付き合ってくれてありがと!」
「おい、家まで一緒だろ?、送っていくけど」
「今日は走って帰りたい気分なの!」
「後さ、私の気持ち、気づいてよね!」
心音は走って去っていった。
それから僕は家に歩いて帰る。もちろんパンジーを持って。家に着いた頃には太陽が西に傾いていた。
母から花瓶を貰ってパンジーを飾る。その時、母からこんなことを聞かれた。
「パンジーなんていつ買ったの?」
「あ、これ?、心音から貰った」
「へえ、そうなんだ?、心音ちゃんも成長したわね」
「はい?」
「パンジーの花言葉について検索してみたら分かるわよ」
僕は部屋に戻るとスマホを開き、『パンジー 花言葉』で検索を掛けてみた。
なんて書いてあったと思う?
面白かったですか…?
面白くなかった?、じゃあ星をたくさんつけてくれると嬉しいです。
面白かった?、じゃあ星をたくさんつけてくれると嬉しいです。
結論、星つけて、今すぐ。




