表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスオーバー  作者: ねむりねずみ
4/4

第一話その3

 校長室を出たあと、わたしたちは迷った末、いつも行く学校の裏の丘へ向かった。

 木々に遮られた勾配のある道を五分程歩くと、少し開けた場所に出る。周りが森のようになっているせいか、いつも人気がないので、わたしたちはいつも遠慮なくここで演奏したりしている。

 草むらの上にそのまま腰を降ろし、さっき受け取った分厚い資料を膝の上に広げた。

 ずっしり重量があって、その分量におののくばかりだけど、読み進めると、まとめ方が丁寧でわかりやすい。

 まずはスケジュールが表になっており、その後に、日毎の実習内容が記されている。

 初日は隊長室へ集合。これからの訓示を受け、小隊の仕事内容の見学などが予定に組まれている。

 本番は二日目かららしく、まずは聖火の受取に同行するらしい。 

 聖火は街の中心にある、きらびやかな教会本部の管轄で、どこにあるのかは極秘事項だそうで、この資料にも載っていない。

 建国時から、一度も消えたことがないという聖火を、記念祭の聖火台まで運ぶ、これがわたしたちの最初のミッションだ。

 前回の建国記念祭は十年前。わたしはまだ九つで、村から出たことがなかったので、どんなものなのか全く想像できない。段取りやルートはしっかり頭に入れておかなければ。

 わたしはかなり難しい顔をしていたのかもしれない。タムの「大丈夫?」との声に顔を上げたとき、自分の眉間にシワが寄っているのを感じて、慌ててごしごしこすった。

「大丈夫。何したらいいかわかんなくて、緊張してるだけ」

 わたしが勢いよく答えると、タムはゆっくりと笑った。

「俺も。王都に来たの、入学の時が初めてだったからな〜」

「同じく! この地図だと、中央広場のど真ん中に聖火台建てるんだね。消したらいけないから緊張するね」

「どこにあるかわからないから、ルートは当日までわからないけど、聖火台の周りの様子だけあとで見に行こうか」

 ジャンが資料から視線を上げて呟いたので、タムとわたしは大きく頷いた。

「頑張ろうね!」

 わたしが意気込んで前のめりになると、ジャンは余裕の笑みで「おう」と返した。

 あと少しで卒業なんて、何だか実感がない。こうやって月日が過ぎていって、何となく卒業を迎えるのは嫌だ。

 少しでもわたしがここにいた証を残せるように。

がんばろう、と、もう一度心で拳を握った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ