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プロローグ
もう、どれくらいの時間がたったのだろう。
数えていたのは、最初の数年だけだった。新年の祝いのざわめき、桃色に染まる草原、新緑の中に響く虫の音、黄金に色づく木立、静かに降り積もる雪。何度も何度も繰り返される季節は、いつしか退屈な壁画と成り果てた。
この塔の中では、時間の流れという概念がない。わたしは息をし、食べ、眠り、生き物としての活動はしているのに、もうずっと前からわたしはこの姿のままだ。老いるどころか朽ち果てて余りある年月が経っているはずなのに、不思議なことだ。
手の届かない本棚の上には埃一つない。いったいどういう仕組みなのだろうと考えたこともあったが、今や疑問に感じることもなくなった。
ここは、特別な場所。この世で最も強い魔力を持つ伝説の妖魔が、自らのために建てた墓標。
いつか来る目覚めの時のために。
その時わたしはどうするのだろう……。