店の準備
「マルコスさん、此処で店を経営してください。」
俺はマインズ王国からもらった店舗を預ける。
店舗は広く、綺麗なものだった。
「ヨシノブさん、これは・・・」
凄すぎてマルコスは固まる。
「此処で俺が預けた物を売って貰える?
もちろん自分で仕入れた物を売ってもいいよ。」
「わ、私は罰で来たのでは?」
「罰を与えても俺に何の得にもならないからね。
俺が預けた物の利益の8割を納めてもらいます。
残り2割がマルコスさんの利益としてください。
あっ、この店の2階が住宅になってるみたいだから、家族と一緒に住んでくださいね。」
「何から何までありがとうございます。」
マルコスは深く頭を下げる。
殺されても文句のいえないことをしているのに此処までの優遇を受けることに感動していた。
感動しているマルコスを置いて、ジェナやスィン、フィリアと協力して、店の商品を搬入しだす。
大きめの倉庫にウイスキーを積み上げ、フィリアから希望のあった美容液を多少用意した。
「さて、マルコスさん、これを適正価格で売ってくださいね。」
俺は丸投げする事にした。
「適正価格とは?」
「俺、値段わからないから商人のマルコスさんに任せた。
原価は気にしなくていいから。適正と思う価格にマルドラド王国から輸送費を加算して売ってもらえる?」
「えっ?マルドラド王国からの輸送?」
「俺は暫くしたらマルドラド王国に帰るから、商品の入荷には時間がかかると思ってね。」
「はぁ、わかりました。何本か試してみても構いませんか?」
「いいよ、商品がわからないと値段も決めれないからね。
あと開店は一週間後で、店の事は全部任せます。
人を雇うのも自由にしていいからね。
ただし、不誠実な商売をしていたらたとえ国が許しても俺が許さないから、どんな事があってもお客に誠実に対応する事!
それがマルコスさんに対する罰と思ってください。」
俺は店を丸投げして船に帰った、
ちなみにフィリアはマインズ王国を離れるまでは親元で暮らす事にしている。
翌朝、開店予定も無いのにドワーフが店頭に集まっている、
「あの?どうなさいましたか?」
マルコスは少し怯えながら聞いてみると・・・
「酒をよこせ!ウイスキーだ、ほら剣は用意した、此処で手に入るのだろう!」
物凄く血走った眼でマルコスに迫ってくる。
「ヒィィ!ま、まだ開店じゃないのです一週間後、いや6日後の開店ですのでその時にお越しください!」
マルコスは泣きそうな顔をしながら、開店日を伝える。
「・・・なんと、まだ6日も待たねばならぬのか・・・」
この世の終わりのような表情を浮かべてドワーフ達は帰って行った。
その表情に物凄い罪悪感がうまれる、それから毎朝、何故かドワーフが集まり同じやり取りを繰り返すのだった。
しかし、開店まであと3日というところで変化がうまれた。
ドワーフだけじゃなくて、貴族の使者も現れるようになる。
「美容液を購入したい!」
「ヨシノブ殿がお持ちになられた美容液は此処で買えるのだろう?
持って帰らねば、お嬢様の折檻が待っておるのだ!」
「い、いえ、開店は3日後とヨシノブさんが決めた事です。」
「それは聞いているが何とかならんのか?
1日でも早く手に入れたい。」
使者も必死に訴えるが雇われ店長のマルコスに権限は無かった。
その日は何とか帰ってもらったが明日また来るとの事だったので・・・
「フィリア、ヨシノブさんに早く開けてもいいかと聞いて来てくれないか?」
「わかったわ、待ってて。」
父の泣きそうな顔にフィリアは船まで急いだ。
しかし、船にヨシノブはいなかった。
船にいたのは留守番を任されていた、不機嫌なサリナであった。