残りの携帯
俺はルクスに日本人の持ち物の捜索を依頼する。壊れてしまっていたショウの携帯はともかくカエデとミキの携帯は見つかる可能性があったからである。
ルクスは喜んで引き受けてくれた。
しかし、それを苦々しく見ているものが・・・
ルイスは焦っていた。
マインズ王国に来てから、ヨシノブとマインズ王国の距離が縮んでいる。
同郷の者達の事もあり、色々頼み事もしている。
マルドラド王国は護衛こそしているが、特に頼まれたりすることはない。
唯一の強みはヨシノブに一番近いサリナの祖父の母国というぐらいだが、それだけだと弱すぎる。
何とか振り向いて欲しい所だが、ルイスの事を恋愛対象として見ている風はない、
一番近いのはサリナだ、ルイスの中で焦りが出始めていた。
「ヨシノブさん、荷物とはこれですか?」
ルクスが二つの袋を持ってくる。
どうやら見つかったみたいだ。
ヨシノブはカエデとミキを呼ぶ。
「これです!」
「あっ、こっちはわたしのです。ありがとうございます。」
カエデは深々礼を言う。
「いえいえ、ヨシノブさんの頼みですからね。お礼はヨシノブさんに。」
「ヨシノブさん、ありがとうございます。」
ヨシノブは少し照れながら、
「携帯が壊れてないといいんだけど、動くようならそれぞれ連絡できるだろ?」
「はい!」
「まあ、ショウくんと俺にも少し貸してくれよ。」
「もちろんです。あの、充電してきてもいいですか?」
「ああ、行っておいで。」
カエデは落ち着かない様子で充電しに行った。
「ヨシノブさん、彼女達は側室候補なのですか?」
ルクスはヨシノブが気にかけている事に側室なのか聞いてきた。
「違います。望まないのに此処にきてしまった、同郷の子供達を保護しているだけですよ。」
「そうですか、邪推して申し訳ない。」
「いえ、まあ周りから見ればそうなるのですか?」
「ええ、多少はですね。」
「あの子達の為にも気をつけておくよ。」
ヨシノブは今後、この世界に残らなければならない時に結婚の邪魔にならないようにと思っていた。
「それでですね、ヨシノブさん。
先日のワイバーン討伐の表彰式と祝宴を城で開きたいのですが、お越しいただけませんか?」
「表彰式ですか?」
「はい、3頭のワイバーンを討伐なされたのです、表彰しなければ我が王家の面目が立たないのです。
どうか受けていただければ。」
ルクスは頭を下げて頼み込む、
「頭を上げてください、わかりました。参加致します。」
「ありがとうございます。当日私が迎えに来ますので、宜しくお願いします。」
こうして、マインズ王国で初めて公式な場に立つことになることをヨシノブは考えてもいなかった。