残りの二人は・・・
コウキを弔ったあと、カエデが俺に聞いてくる。
「あの、ヨシノブさん、ユカリは見つかって無いのですか?」
「ごめん、残念だけど情報が入って来てない。延々と探す事も出来ないから、もしかしたら見つからないかも知れない。」
「そんな・・・」
「ごめん・・・」
俺は力が足りない事を謝る。
「いえ、ヨシノブさんのせいではないですから、それに来ていないのかも知れませんし。」
「ああ、何かわかったら知らせるよ。」
「お願いしますね。」
それからは全く情報が入ってこなかった。
そして、俺は診察を行いつつ、日々を過ごしていた。
そんなある日、ルクスから情報がもたらされる。
「ヨシノブ殿が探しておられる方ですが、ツバサさんとユカリさんで間違いないですか?」
「ええ、合っています。何か情報がありましたか?」
「それが、今日、教会から、勇者と聖女が召喚されたと連絡があったのですが、その方の名前がツバサとユカリなのです。」
「ルクスさん、その勇者と聖女について教えて貰えませんか?」
「いいですよ、まず、勇者というのは、魔王が跋扈する世に人間の切り札として異世界から召喚される方です、
勇者の力は通常の人が持ち得ぬ力を振るい魔族を殲滅すると言われております。」
「ルクスさん、今は魔王が跋扈しているのですか?」
「いえ、魔族の王として魔王はいますが、特に戦争を引き起こしてはいませんね、当代の魔王は穏健派として有名ですので。」
「それなのに何故?」
「教会の一部の者は魔王は存在自体が悪という派閥も有りますから、たぶん其処が召喚をしたのではないかと。」
ルクスは首をかしげながら話している。
俺は一部の者が前提条件を覆して召喚出来るのか気になった。
「それは許される事なんですか?」
「いや、許されない。召喚の儀式は各国の認証がいる筈だが、少なくとも我が国には連絡がなかった。」
ルクスはハッキリ否定する。
そして、勇者召喚が異常事態だと感じる。
「それで、聖女召喚とは?」
「これも勇者召喚に近いのですが、此方は飢餓や、流行病などの時に教会が行う儀式です。
これにより飢餓や流行病がおさまると言われております。
しかし、これも各国の認証がいる筈なのですが・・・」
「教会の本部って何処に有るんですか?」
「ローラン王国に・・・」
「それって、ローラン王国が暴走しているのでは?」
「いや、まさか!ローラン王国に本部があるとはいえ、各国との取り決めを無視して行うとは・・・」
「でも、実際行われたのですよね?」
「・・・考えられますね、すいません。城に戻り対策を検討してきます!」
ルクスは教会のやることに間違いはないと教えられてきた。
この世界で教会は神の声を伝える施設だ。
教会のする事は必然な事であり、異議を唱える事すら禁忌とされている。
そうとはいえ、説明ぐらいはある筈なのだが、今回の召喚はいったい何のための召喚なのか説明がない。
ルクスも、ヨシノブに言われて違和感を覚える。
ルクスは確認の為に城に急ぐのであった。