ドワーフ?
一週間後、また、おっさん達が現れた。しかし、数が増えており、見る限り百人はいた。
「ここか?剣とウイスキーの交換所は?」
「違うだろ、限定五百本の酒を剣で買える場所だ!」
「ふん、選ばれなければ意味があるまい、ワシが全ていただくに決まっておる!」
「何を言うか、全てはワシの物じゃ。」
各自、剣を持ちより集まっていた。
あまりの人だかりに、城からルクスが兵士を連れて現れ、おっさんの一人と話し合っている。
「ヒビキさん!これはどういう事ですか?こちらの方は我が父、ルーズ王の治療に来られた方なのです。
失礼をなさらぬように。」
「失礼などせぬ、ワシらはただ剣をウイスキーに換えて貰いに来たのだ。」
「はい?」
ルクスには事態が全くわからない。
「ええい、邪魔をするな、医者殿、剣を持ってきたぞ、確認してくれ!」
呼ぶ声になったので俺はヒビキと呼ばれた最初に来たおっさんの元に行く。
「ヒビキさんですか、この人の数はいったい?」
「どこで話を聞いたのか、ワシのウイスキーを狙う泥棒どもよ、まあ、ワシの剣に優る物はないであろうがな。」
「「ブーブー」」
周囲からブーイングが飛ぶ、
「時代は変わっているんだよ、いい歳したおっさんは下がってエールでも飲んでろ!」
「若造が!文句があるなら腕で語れ!」
更に言い合いがヒートアップする。
「ちょっと待ってください!剣を選ぶのは兵士の方です。
兵士の方に剣を見せますので少しお待ち下さい。」
俺は兵士を呼びに行く。
「えー兵士の皆さん、新しい剣をプレゼント致します。外にいるおっさん達から剣を貰ってください。
その時この券を渡してくださいね。」
俺は急遽パソコンとプリンターを使い、ウイスキー引換券を作った。
この券と引き換えにウイスキーを渡すつもりであった。
「いいんですか、剣を貰っても?」
「受け取らないと外で暴動が起きそうですから、でも、ちゃんと選ばないと怖いかもです。」
「えっ?」
兵士達は券を受け取り外に行くと・・・
「おお、来たか!俺の剣を見てくれよ!」
「いや、俺の剣の方が素晴らしいに決まっている。」
「ナマクラばかり見てたら目が腐ってしまう、俺の剣を見なよ!」
激しい勧誘の声が響く。
その激しさに兵士は二の足を踏む。
「あの~この中から剣を選ぶのですか?」
「頑張って、あっ、もちろん今の剣の方が良いなら券を渡さずに帰って来ても良いからね。」
兵士達はおっさん達を見るがそんな事が許される雰囲気ではなかった。
そして、ルクスは・・・
「あ、あり得ない・・・ヒビキだけでなくモルトにマッカラン、バランにジョニーだと!国内有数の鍛冶師達ではないか、国の命令にも従わない奴らが何故こんなに・・・」
混乱により固まっていた。
彼等はドワーフで独自のギルドを形成しており、彼等が作る剣は普通の鍛冶師が作る剣とは雲泥の差があった。
かつて、ドワーフを取り込もうとした国があったが、ドワーフ達は強要を嫌い、その国から去ってしまった。
その為、戦力が低下して国が滅びる手前まで行き、当時の王が頭を下げ、戻って貰ったという話があった。
以後、ドワーフに手出しすることが出来ず、彼等は自由に剣を打ち、彼等が気に入った者だけが剣を手に入れる事が出来た。
王家の倉庫には何本かドワーフ作の剣があるが、
有名な刀工の剣はルクス自身は持っていなかった。それほどまでに入手が困難な剣なのである。
「ルクスさんも選びますか?あの感じなら多分1本2本増えてもかまわないでしょう。」
「いいのですか!」
「ええ、好きな物を選んでください。剣とこの券を交換してください。」
ルクスはウキウキした感じで剣を選びに行く。
「何か凄いですね。」
サリナはドワーフの熱狂を見て引いていた、
「そうだよね、でも、今日は治療は出来そうに無いね。」
俺は船に続く道がドワーフで埋まっていることに苦笑いを浮かべていた。




