ラード侵攻
俺はまだ城で世話になっていた。
ディーンやルイスが滞在を願った為に暫く王都にいるのだが、今日はやけに城が騒がしい。
騒々しくなった城に俺が何かあったのかたずねると、ローラン王国の兵が国境を越えたと聞いた。そして、向かう先はラードの可能性が高いと。
「ディーンさん、俺は今すぐにラードに向かいます。」
「ヨシノブさん、一人だと危ないです。
今、騎士団を派遣しますから、落ち着いてください。」
「いえ、俺だけでも向かえば力になることが出来るんです。
行かしてください!あの町にはサリナさんもいるんです。」
慌てている俺にディーンは聞いてくる。
「ヨシノブさんには軍と戦う力があるのですね?」
「ああ、多少の軍なら倒せる筈だ。」
「仕方ありません、向かってください。」
「お兄様!」
ルイスは兄を非難するが・・・
「ルイス、男にはやらなければならない事があるんだ。
ヨシノブさんは覚悟を決めた目をしている。
それを送り出すのも貴族の嫁の役目だよ。」
「・・・ヨシノブさん、本当に大丈夫なのですか?」
「ああ、大丈夫だ、いざとなれば空を飛んで逃げてくるよ。」
「ならば、私も行きます。ヨシノブさんの立場を保証するのは私の役目です。」
「ちょ、ちょっと、ルイスさん、流石に危ないよ。」
「ヨシノブさん、大丈夫なのでしょ?なら私を守ってください。
代わりに何が起きても責任は私が取ります。
お兄様、いいですか?」
「言っても聞かないだろう。
ヨシノブさん、どうか妹をお願いします。」
「しかし・・・」
「ヨシノブさん時間がないのでしょ?早く行きましょう。」
ルイスが言うように早く着いた方がいい。
「わかった、ただし、危ないから俺の言うことを聞いてくれよ。」
「わかってます。」
俺はルイスを連れてラードの町に向かい飛び立った。
今回呼び出したのは戦闘用ヘリAH-64Dを呼び出した。
俺がラードに向かっている頃、ラード領主チースの元にローラン王国から使者が来ていた。
「いきなり部隊で来るとは失礼ではないか!」
「これは失礼、貴国に敵意はございません。
我等が求めるのは、我が国の犯罪者、ヨシノブの引渡しを求めます。」
「犯罪者?」
「はい、その者は王都の門を破壊し逃走する、危険人物なのです。
その者を押さえる為の兵にございます。」
「断ればどうなるのだ?」
「私達は捕縛することを命じられております。
・・・たとえどんな事になろうともです。」
「それは攻め込むと言いたいのか?」
「いえいえ、チース伯爵が賢明な判断をなさると思っておりますよ。
明日の朝まで待ちましょう、朝日が昇るまでに回答がなければ・・・」
そう告げると使者は立ち去っていく。
残されたチースは部下に聞く。
「防衛は出来るのか?」
「・・・厳しいかと、この町は防衛に向いておりません、しかも、相手は三千はいるでしょう。
我等の五百の兵ではとても・・・」
「ならば、引き渡せと言うのか?」
「それもやも得ぬかと、そもそも犯罪者なら匿う理由もありません。」
「ふむ、致し方ないのか?その者は何処にいるかわかるか?」
チースはヨシノブの事を覚えていなかった、
ホルンの件は覚えていたのだがヨシノブの名前を記憶していなかった。
「その者はホルンを倒した者ではございませんか?」
「あの者か、あれ以来アンナは床に伏してしまった・・・
よし、ルーカスに使者を出せ、ヨシノブを引き渡すように伝えよ。」
「お待ちを!ルーカス殿の客人を捕まえるなど、今後の町の運営に影響がありすぎます。
それに他国の脅しに屈したなど、末代までの恥となります、どうか御再考を!」
「何をいう!お前は民が犠牲になってもいいというのか!」
「チース様、どうかヨシノブを引き渡しましょう。」
「チース様、どうかおやめください!」
家臣の意見も二つに割れ結論が出ないまま、朝を迎えるのであった。




