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異世界に飛ばされて  作者: Katty
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ローラン王国

ヨシノブが逃走した後、ユリウスは窮地に立たされていた。

肺病を治す薬があると聞き、近隣諸国から多くの貴族、果ては王族までもが求めて来ていた。

断る訳にもいかず、既にヨシノブに薬を貰った貴族に提出を求めるが、ヨシノブから薬を最後まで飲みきらないと治らなくなると説明を受けているので、なかなか手放そうとはしなかった。

多額の報酬により、手放した者もいたが求めてくる人の数が多すぎて対応できていなかった。


「まだ、薬は出来んのか!」

ユリウスはポーション研究所所長ダワーを呼び出していた。

「それが全くどのようにして作ったかも未だに掴めておりません。」


この世界では細菌の存在はまだ確認されておらず、ましてそれに効く特効薬など考えてもいなかった。


「お前達は平民の者より、愚かなのか、一から作れと言っているのではない、目の前の現物と同じ物を作れと言っているんだ。

早く何とかするのだ!」

「はい、全力で取り組みます・・・」

ダワーは絶望にうちひしがれていた、

同じ物を作れと言われても白い粉を固めただけの物に見えるこれをどうすれば良いのか、全くわからなかった・・・


「陛下、あの者の消息が多少ですが掴めました。」

軍務大臣アルメが報告にやってくる。

「おお、して何処におるのだ?」


「まだ、正確には掴めておりませぬが、マルドラド王国の方に見慣れぬ物が飛んで行くのを見たと報告がありました。

どうか、マルドラド王国に引渡し要求か、我等の部隊の侵入許可をいただきたい。」


「そういえば、モス子爵の妻の親がラードで商会をやっていたな・・・

部隊の派遣は待て、マルドラド王国に親書を送る、平民の男一人だ、引渡してくれるだろう。」

ユリウスは使者を送ることにした。

これで解決出来ると希望を胸に・・・


一方、アレクの元には王に薬を渡し、再び薬を求める者が来ていたが・・・

「あれはヨシノブにしか作れぬ薬だ、

此処に来られてもどうしようもない。

それより、お前達もヨシノブから最後まで薬を飲みきるように言われて居たのだろう、何故渡したのだ?」


渡した多くの者が症状が治まっていた為に、もう大丈夫だろうと思い、王に恩を売るためにも薬を献上、または売り渡していた。


「それでも、娘が苦しんでいるんです、何とかして貰えないでしょうか?」


「ヨシノブに言われていたであろう、最後まで飲まないと治らなくなると。

もし薬があっても治るかどうかわからぬぞ?」


「しかし!」


「くどい!薬を渡したのはお前達がヨシノブとの約束を軽んじた結果であろう。

娘の苦しみはお前達が与えたのも同然だ!

私が何か出来ることはない!」

アレクは訪れる者を追い返した。


そして、薬を求める他国の者達に、

薬は適正量を最後まで飲まないと治らない事、

薬を調合、診察出来る者はカクタス侯爵家の蛮行により、既に国から出ていってしまった事、

当人以外が渡した薬の量が適正かどうかがわからない事を広く公表した。


これにより、ユリウス王に更なる問い合わせがくることとなる。


「ユリウス王、私が受け取った薬の量はあっているのですか!」

ユリウスに問いかけているのはマインズ王国第二王子のルクス・マインズであった。

彼は病にかかった父の為に薬を求めて来ていたが、本国に送った薬が正しいか問い合わせに来ていた。


「それは・・・」

言葉を濁すユリウスにルクスはアレクが出した話が本当なのだと確信をもつ、そして、それは父の薬が正しいかどうかもわからないという事でもあった。

「医師を追い出しという話は本当なのですか?」

「お、追い出した訳ではないのだが・・・」

「既にいないという事でしょう!何処に行ったかわからないのか!」

ルクスのあまりの剣幕にユリウスはマルドラド王国にいる可能性を伝える。


「マルドラド王国か、すぐに向かわねば。」

ルクスは振り返る事なく城を後にし、マルドラド王国に向かう。


この動きを見た多くの貴族が、「医師がマルドラド王国にいる」と判断する。

各国の者達がマルドラド王国、王都ディートラストに向かうのであった。





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