ラード到着
翌朝、ラードに着く。
ルーカスは慌てた様子で、サリナは心配そうな顔で港に駆けつけてきた。
「ヨシノブ、やはり嵐は越えられなかったか。」
「ルーカスさん、ちゃんと行ってきましたよ。荷物を下ろすので人を呼んできてください。」
「なっ!まだ二日しかたっておらんぞ。」
「そういう力なんですよ。」
「ルーカス殿、この度は貴殿の商会に助けられた、礼を言うぞ。」
ディーンが出てきてルーカスに声をかける。
どうやらルーカスの知り合いらしいとノホホンと見ていたらルーカスやサリナが膝をつく。
「王太子殿下、この度は如何になさいました。」
「そうだな、マリンピアにいたのだが嵐で足止めを喰らっていた所、ヨシノブさんに連れて帰って来て貰ったよ。」
「そうですか、当家の者がお役にたてて何よりにございます。」
「しかし、空を飛ぶことが出来るとは思わなかった。
この後、王都に帰るのもヨシノブさんにお願いしたいのだが構わないだろうか?」
「勿論にございます。
ヨシノブ、頼めるか?」
「いいですよ。ディーンさんやルイスさんと約束もしましたし。」
「コラ!ディーン殿下に失礼だぞ。」
ルーカスが俺をたしなめようとするが、
「構わないよ、ヨシノブさんとは身分関係ない付き合いがしたい。
堅苦しい呼び方をされた方が困る。」
此処に来てやっと気付く、ディーンが王子様と言うことに。
「えーと、もしかして不味かったのか?」
「此処まで気付かない人に会ったのは初めてだよ。
その分楽しかったからな。
今後も今のままで頼むよ。
ルイスもいいよな。」
「はい、私も今の話し方の方が好きですから、遠慮なくお話ください。」
ルイスも嬉しそうにしている。
「ディーン殿下、ルイス王女、ひとまず我が屋敷にお越しくださいませ。
直ぐに領主マクドーナル伯爵に連絡致しますので。」
ディーンとルイスの共が一人しかいない事に気付き、警備の面からもひとまず屋敷に入って貰う必要があった。
「ルーカス殿、世話になります。」
ディーンを連れて屋敷に向かった。
なお、意識を失っていたマスは荷物と共に商会に運び込まれていた。
「ディーン様!」
マクドーナル伯爵、チース・マクドーナルは慌てた様子でルーカスの屋敷に駆け込んできた。
「チース伯、落ち着け。」
ディーンの制止にチースは息を整える。
「マリンピアの視察お疲れ様でございます。殿下が無事にお帰りになられた事を嬉しく思います。」
「うん、すべてルーカス商会のヨシノブさんのお陰だね。
チース伯も今後もルーカス商会を良くしてやってくれないか?」
「はっ、殿下の御言葉しかと承りました。」
ディーンとチースが話している中、俺はマクドーナル伯爵という肩書きに引っ掛かりを覚えていた。
何処かで聞いた事があるような・・・
俺が話を聞いていない中、話は今晩宴を伯爵邸で開かれる事になっていた。
その宴にルーカスさんを含め、俺とサリナも呼ばれる事となっていた。
どうやら知らない内に返事を返していたようだ、俺達は用意された馬車で伯爵邸へと移って行った。