ユカリ降伏する
「ひ、人殺し!あんた日本人なんでしょ!
人を殺していいと思っているの!」
床に座り込んだユカリは叫ぶ。
ガチャ!
パウルはユカリに銃口を向ける。
「ヨシノブさんを侮辱するなら僕達が相手するけど?」
「ヒィィィィ!!」
ユカリは悲鳴を上げる。
「パウル、止めなさい、ユカリさんだったかな?
君は話し合いに応じてくれるかな?」
「は、はい、何でも話しますから、お願いします!命ばかりはお助けを・・・」
ユカリは必死に懇願してきていた。
「君はタケフミくんの処遇について知ってたのかな?」
「し、知らない!ツバサを訪ねて来た友人がいる事だけ!マイ、カエデ!本当よ!」
ユカリは友人のマイとカエデにすがるように言う。
「じゃあ、君はこれからどうする?
国王に対してかなり失礼な話ぶりだったけど、その様子なら他でも何かやらかしてないかな?」
「違うの!私は生きるために仕方なくやってたの!そりゃ、少し増長してたけど・・・」
「じゃあ、何をやったんだい?」
「け、権力争いで教会のトップになりました・・・」
「・・・君はある意味優秀だな。」
「そうでしょ!でも、それは生きるために仕方なかったの!
だって、聖女なんていわれても何をさせられるかわかったものじゃないでしょ!」
ユカリの話では確かに情状酌量の余地はありそうだった。
「ルーズ様、この者の罪はどうなりますか?」
「ふむ、不敬罪で死刑とも出来るが・・・」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
ユカリは必死に謝る。
「まあ、ヨシノブの知り合いということも考慮して、無期限の軟禁とする。
教会とのイザコザも厄介だからのう。」
「ありがとうございます。
ユカリさん、貴女は軟禁生活をおくって貰いますが、もし逃げたり、何か画策するようなら・・・」
パウルとオットーが銃口を向ける。
「しない!しないから!銃を下ろして!」
「その代わり、日本の家族と連絡をつけてあげる。」
「えっ、連絡出来るの?」
「ああ、一週間に一度ならそれなりの時間電話も出来る。」
「お母さん、お父さん・・・会いたいよぉ・・・」
ユカリは泣き出した。
「ルーズ様、それではこの者を預からせてもらっても?」
「構わん、して勇者の死体は・・・なに?」
ルーズの言葉にツバサの死体を見ると光に包まれ、消えていくようだった。
「なんだ、あれは!」
ルーズ王も困惑している。
パン!パン!
パウル、オットーは銃弾を撃ち込むが体に当たらず、すり抜ける。
そして、ツバサの体は消えうせるのだった。
「なんだったんだ、あれは?」
「もしかして、死んだら帰れるとか?」
マイは少し願望的予測をするが・・・
「なあ、もしかして教会とかに行くんじゃないかな?
昔のゲームで勇者はそんな感じなんだろ?」
ショウは何となく口にしたが、あり得そうな話ではあった。
「・・・ユカリさん、ツバサくんが最後にたちよった教会は何処かな?」
「ローラン王国、王都ローラの大聖堂よ、教会はそこ以外に行ってないもの。」
「しかし、あそこは地震で今ガレキの下じゃ?」
「居住区は結構無事で・・・あっ、でも、大聖堂自体はガレキで埋もれていたかも・・・」
「まあ、本当に其処かはわからないしな、それより今後の話をしよう!」
俺達は一度用意された部屋に入り、話し合いを続けるのだった。
王都ローラ、大聖堂内・・・
「ぎゃぁぁぁぁぁ!痛い痛い、誰かーガレキを除けてくれ!誰かー!」
ツバサは大聖堂の跡地、しかもガレキの下で復活を遂げ、そのせいでガレキに潰される、
しかも不幸な事に、潰されているのは右腕の一部で後はガレキの隙間に入り動かせなかった、その為、次に死ぬまで時間がかかり、死の恐怖を存分に味わった後、死してまた、同じ場所で復活を遂げる地獄を繰り返す。
そして、それは大聖堂が発掘されるまで続く事が明らかだった。
「誰かーたすけてくれよ、頼む、だれがー!聞こえないのかぁ!」
ガレキに埋もれる声は復興であわただしく建築が進む王都に聞こえる事はなかった・・・




