ヨシノブ怒る
マルドラド王国に帰ってきた、ショウとミキの表情は暗かった。
「二人とも、頑張ったな。」
俺は二人を抱き締める。
「ヨシノブさん!俺、俺・・・」
「いいから、ショウは頑張ったんだ、たとえ誰が責めようと俺はショウの味方だ。」
「ヨシノブさん・・・ショウは私の為に・・・」
「ミキ、わかってる。二人のやったことは間違ってない。必要な事だったんだ。」
俺は二人を励ます。
俺と違い、初の殺しをしたことで二人とも震える程に罪悪感にさいなまれていた。
「二人とも、暫くはみんなとのんびりすごせ、他の事なんてどうでもいい。」
「で、でも、俺がやらないと・・・」
「ショウ、俺もいるんだ、今はゆっくり休め。」
俺はショウとミキの二人をゆっくり休ませる事にする。
「・・・サリナ、少し出掛けてくるよ。
基地の事は任せた。」
「ヨシノブさんどちらに?」
「ショウとミキを追い詰めた奴に痛い目に合わせてやる。」
「お気をつけて。」
サリナに見送られ、滑走路に向かう。
「ヨシノブさん!俺も連れて行ってください!」
子供の一人、エーリヒが俺に話しかけてくる。
エーリヒは航空シュミレータで優秀な成績を出しており、現在練習機を使用して操縦を覚えているところだった。
「遊びに行くんじゃない、留守番してなさい。」
「そんなのわかってます!でも、此処に来たということは戦闘機で戦うのでしょ!
僕も戦闘機に乗れるようになりたい!」
「君たちは乗れなくても構わないよ。」
「いやです!おかあ・・・サリナさんを守る為にはどんな力も身につけるって、みんなで誓っているんです。
お願いします!僕に空の戦闘を見せてください。」
俺は戦闘機F2Bを呼び出した。
F2Bは複座式だ、
「後ろに乗りなさい、ただし、今からやるのは戦闘だ、相手を殺す行為だと覚悟はあるか?」
「当然です!でも、ショウ兄や、ミキ姉を傷つけようとしたんでしょ?
なら、相手に情けをかけるつもりは無いです!」
やはり、この世界の子供達は死に対しての心構えが違うと感じる。
「わかった、覚悟があるならいい、さあ行くぞ。」
俺はエーリヒを連れて、出撃した。
その頃、皇太子アヴィドは・・・
「船が戻らんだと?何をしているのだ、たかが一隻さっさと拿捕してこぬか。
くそっ!偵察を出せ、封鎖した海域を調べるのだ。」
自らの船団の1部を使い、偵察にいかせるのだった。
その姿を見たササルは・・・
「殿下、いったい何をなさっているのですか?」
「おお、ササルか、たいした事ではない。」
「何がたいした事ではないですか!
拿捕とはどう言うことですか!
あの方達はこの島にとって恩人です、それを殿下は!」
「何をそんなに怒っておる、船が一隻いなくなるなど、良くあることだ。
それに船員には抵抗しない限り殺すなと伝えてある。
これもお主の気持ちを配慮したのだぞ。」
「殿下!」
「あーうるさい、教育係だったお主だからこそ、ここまで譲歩しておるのだ。
あの船を手に入れる事は決定事項である。
お主が言うからワザワザ島から見えぬ位置で片付けようとしたのだがな。」
「殿下は間違っておられます。
そのような態度をとっておられるといずれ取り返しのつかない事に・・・」
アヴィドとササルが口論している中、兵士が駆けつけてきた。
「申し上げます!」
「なんだ?」
「はっ!港を出た所で殿下の護衛船団が燃え上がっております。」
「何だと失火でもしたのか?さっさと消せばよかろう。」
「いえ、それが・・・」
「はっきり申せ!」
「空を飛ぶ得体の知れない物に襲われ、爆発、炎上しております。」
「何だそれは!
もういい、直接見る!」
アヴィドは兵士の言葉がわからず港に急ぎ出向いたのである。
しかし、そこにあったのは燃え上がる木片と化した船の残骸だけだった。




