第5話
「さて、異世界から来たあなたに一つ質問がありますが、よろしいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「この世界で目覚める前に女神様にお会いになられましたか?」
「…………は?」
ファルマーからこれまた予想だにしない事を言われた。
「えっと……その……この世界には女神様がいるのですか?」
「はい、おられますよ」
と、これまた衝撃の内容が告げられた。その内容に再び驚いていると
「その反応から察するに、あなたは女神様にお会いになっていないのですね?」
「そう…ですね。そのような方とは会っていませんね」
この世界には女神様がいて、その事が当然のように話しが進んでいる事に驚いた。そして何故そのような事を聞いてくるのか疑問に思っていたら
「ふむ、つまり彼女は……」
「ああ、迷い人で間違いないだろう」
という会話が聞こえてきた。
「あの、迷い人とは……?」
「ああ、迷い人ってのはこの世界に来た異世界人の通称さ。さっき何人も来てるって言っただろ?年齢や性別、出身地等てんでバラバラな異世界人なんだが、ある共通点がある事が分かっていてな……」
「共通点、ですか?」
「ああ。それが、呼ばれた者と迷い込んだ者の2つだ」
ランダが告げた共通点を聞いて、先程のフェルマーの質問に合点がいった。つまり私がそのどちらかを確認する為の質問だった訳だ。
「おそらくですが、呼ばれた者というのが、その名の通り女神様にこの世界に呼ばれた者で、迷い込んだ者というのが、それ以外の不慮の事故でこの世界に来てしまった者、という事でしょうか?」
「まさしくその通りさ」
どうやら合っていたらしい。
「呼ばれた者は、女神様直々にこの世界に呼んでいるって事から、この世界の者からは神の御使い様や天使様とかって呼ばれたりするな」
「呼ばれた者の呼称はその時によって違うみたいです。中には自ら勇者と名乗った者もいたそうですよ」
きっとそいつは地球、しかも日本人に違いないと思った。ライごにょごにょとか唱えて電撃魔法を使ったに違いない。逆手に剣を持ってアバほにゃららとかも使ってそうだ。というか私が学生時代なら間違いなくやっていた……。今は流石にやらないが…………多分。
「ちなみにだが……」
某国民的大人気RPGゲームや、それを題材にした漫画のネタを思い返して自分の世界に入り込んでいた意識がランダの声で戻る。
「迷い込んだ者はおおむね迷い人と呼ばれる。他の呼び方だと迷子とかがあるな」
「迷子……」
ある意味間違ってはいないんだろうけど、流石にアラフォーにもなって迷子呼びは少々精神的にきつい……。見た目も若くなってるし、設定では14歳だから問題は無さそうだけど、それでも中身はアラフォーなのだ。
と悶々としていてふと気になった。
「あの、少し気になった事があるのですが質問いいですか?」
「お?なんだ?分かる事なら答えるぜ」
「女神様が異世界の住人を呼ぶ理由って、何なのか分かっているのですか?」
女神様が他の世界からわざわざ人を呼び寄せる。ある程度予想はついてるけど、念のために聞いてみる。
「ああ、それか。まあ概ね世界を救う為って伝わってるな」
ランダから予想通りの答えが返ってきた。
「ある時は数日で何千何万と死に至らしめる疫病から救う為。またある時は世界中で大量発生した魔物から国々を守るため。一人の魔法使いが異界から呼び出した生物を討伐した事もあったらしいぜ。後は……」
内容もほぼ予想通りだったが
「迷い人を滅ぼす為、とかな」
「……………っ」
ドクンと心臓が跳ねる。確かに予想はしていたが、実際に口に出して告げられると不安になってしまう。もしかして迷い人である自分も
「勿論、迷い人全てがその対象って訳じゃ無いがな」
「……え?」
「対象になった迷い人は全て、この世界を滅ぼそうとしたり、支配しようとしたり、つまり悪事を働いた奴等みたいだぜ?嬢ちゃんが何か悪だくみしない限りきっと問題ねーよ」
嫌な想像をしていたらランダはそう言って、にかっと笑った。俺はそれをみて、さっきまでの不安な気持ちが無くなっていくのを感じ、
「ありがとう」
と少しはにかみながらそう答えた。