第2話
「酷い目にあった………」
集めて来た枝に魔法で火を付け、服を乾かしてから、村に向かって歩いてる最中に、俺は一人ごちる。どう考えても自業自得なのだが、言わずにわいられなかった。
(今まであんなドジ踏んだ事ないのに……。これじゃまるでドジっ娘…………ま、まさか!?)
ピタッと歩みを止め、俺は有り得ないと思いつつも何故か間違っていないと思われる可能性に気付いた。
(たまにドジっ娘っぽくプレイしていた事がまさかこの体に反映されてる!?いやいやいや、流石にそれはないだろう!見た目やステは確かに自分が作って育てたキャラっぽいけども!さすがにそんな事まで反映されてないだろう!………されてないよな?)
自分で有り得ないと思いつつ何故か分からないが、否定できない何かを感じる。
そして人々は口をそろえて言うだろう。
フラグが立ったと。
嫌な考えは頭の隅に追いやって当初の予定通り村へと向かう事にした。
とりあえずマップは常に表示させる事にした。地名だけでなくある程度の大きさの生き物も映すことが分かったからだ。ただ自分が踏み込んだ事のあるエリアで、自分から一定距離内に限るようだが。自分の位置は逆三角で示されており、それ以外は丸ピンで表示されてる。ゲームと一緒なら、敵は赤、パーティーメンバーは青、PCなら緑、NPCなら黄色というように丸ピンの色が変わるのだが、今の所、モブと同じ白色しかない。
(その内嫌でも分かるようになるだろう……っと新しいエリアに踏み込んだみたいだな)
未表示だったマップに新たな地形が表示され、村の場所も鮮明に分かるようになった。俺が最初にいた川から、北西方向に目標の村があるみたいだったので一直線に向かっていたのだが、そのまま進むと森を突っ切る形になりそうだ。
「男は黙って一直線っ!」
女の子じゃん、とツッコまれそうな事を言いつつ、そのまま森の中に入って行く。
人の手が入っていない森は、木々が青々と生い茂り、自分の背丈ほどもある茂みも見受けられたが、枝の隙間から日の光が所々で差し込んでおり、充分明るく、通り抜けるには問題ないようなのでこのまま進む事にした。
異世界の森という事で興味深げにあちこち視線を動かしていると、果物の様な物を見かけたが、届きそうになかったのでそのまま通り過ぎた。途中に見つけた獣道を見てふと
(昔行った、じいちゃんの家近くにあった森で同じように獣道を見付け、鹿を見かけた事があるな~)
と、懐かしんでいると、突然”ピンッ”という聞きなれた音がした。それはゲームで敵に発見され、自分がターゲットになった時に聞こえてくる音だった。やはりというべきかマップを見ると、自分とそれ程離れていていない所にあった右後方のピンが赤くなり、こちらに近づいて来ていた。俺は剣を具現化させ素早く抜きはなちつつ、敵が向かって来ている方へと向き直る。と同時に
「グルァァァッ!」
という雄叫びを上げ、獣が飛び掛かって来た。俺は突然の襲撃に驚きつつも、獣の攻撃を躱し、バックステップで距離を取る。獣はそのまま着地し、同じ様に距離を取り、こちらを威圧するように唸りを上げる。
(危なかった……。思ったりより近い所にいたのか?)
間一髪躱せた事に、ふーっ、と一つ息を吐き、襲いかかって来た獣を見る。耳の後ろ辺りから二本の角を生やし、黒ずんだ灰色の毛をした
(えっと………犬?いや狼か?)
つまりそんな感じの獣である。正直犬と狼の違いなど分からない。
などと思っていると、雄叫びを上げながら、信じられない速さでこちらに向かって駆け出した。予想外の速さに驚くも、何故か脅威には感じなかった。今度は飛び上がらずに、噛み砕くつもりなのか、口を大きく開けこちらへと向かって来る。俺はその攻撃を再び躱し、すれ違いざまに斬り上げた。何の抵抗も感じる事なく振り切り、胴を真っ二つにする。相手はそのまま地面に崩れ落ち、数度痙攣した後に絶命したようだった。
突発的に起こった初めての戦闘、驚きはしたものの、動揺や緊張もする事がなく冷静に対応出来た事に驚きつつ、無傷で終われた事に安堵した。
マップで他に近付いて来るピンが無い事を確認しつつ、剣を鞘に収め襲って来た獣を見る。近付いて来ている時は分からなかったが、どうやらホーン・ウルフという名前の魔物だったみたいだ。
斬られた所からは血が出る事は無く、黒い煙みたいなのが出ていた。すると突然、一瞬で全身が黒い煙の様になり霧散した。後には、頭の角二本、牙と爪が数個と黒紫色の水晶、魔石が落ちていた。俺はそれらを収納し、また突然襲われたらたまらないので剣をそのまま背中に背負い、急いでその場を離れて再び村へ向かって歩きだした。